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1、トルスタード魔法国

私はラディージャ、何も知らない頃は凄く幸せだった。

大好きな幼馴染と友達と楽しい毎日が永遠に続くと思っていた。

大好きな幼馴染との未来が無いと知った時の絶望は、正に世界の終わりだった。

だから、幼馴染を忘れて1人で生きていくために別の道を模索した。

やるしか無い! 頑張る…それしか無いんだから!!




トルスタード魔法国は魔法によって全てが決まる国だった。魔法を使える使えないで人生は大きく変わる。その魔法も幾つ使えるか、どんな魔法が使えるか、魔力量はどの位か。

爵位による序列もあるが、魔法能力によるものが大きく関与する。

そして結婚相手も番の魔法刻印によって決まる。


適齢期、大体12〜15歳くらいになると体に魔法刻印が浮かび上がり、同じ紋様が浮かび上がった者同士で婚姻を結ぶ。

男性は大抵手の甲に現れる、これは魔法を行使する時に使い易いからでは無いかと言われている。一方女性は手の甲、だけではなく、胸や腕にも現れる。これは育児の際使い易いからでは無いかなどと言われているが実際は分からない。ハッキリ言えば、昔から大体そうだったから、と言ったところだ。


魔法刻印は番が分かる他に魔法適性が分かる。色で大体識別できるのだ。


火魔法 → 赤色

水魔法 → 青色

風魔法 → 緑色

土魔法 → 黄色

光魔法 → 白色

闇魔法 → 紫色

空魔法 → 橙色

竜魔法 → 虹色


例えば、火魔法と水魔法に適性が有れば、紋様が赤色と青色で現れるので分かりやすい。

4つ以上になると2パターンある。

光魔法を含む場合   → 金色

光魔法を含まない場合 → 銀色

この2色の場合明確に何に適性があるか分からないために、別に検査する必要がある。

また、竜魔法と言うのは特殊で、このトルスタード魔法国は竜の加護を受けて存在している為、この国が信仰する『天竜様』『天竜樹』に関わる仕事をすると言われている。

それから滅多にないが、全魔法に適性がある場合黒色になると言われている。


番になると匂いとか魔力の相性とかが分かるらしい。

波長の合わない魔力同士が混ざり合うと魔力酔いを起こすとか…。

魔法刻印は天竜様のご加護で絶対。例えば魔法刻印が現れる前まで好きだと思っていた相手も紋様が違った場合、正しい組み合わせのつまり番に会うと今まで感じていた『好き』とは違うと感じるらしい。今まで好きだと抱いていた感情は友愛で愛情では無いとハッキリ分かると言う。


この国の貴族は全員 魔法が使える魔力持ちだ。魔力は殆ど遺伝で決まる。平民の中に稀に魔力持ちが生まれる事がある。(遡ると魔法使いの血が混ざっていたなど)その場合も魔法刻印が現れるのでその場合は国が保護し、適正の合う家に養子として入れる。平民と忌み嫌う事もなく、天竜様の御心に従う。


稀に番が生まれる年代が違いすぐに見つからない場合がある。その為に、出逢いを持つ場として王家が主催するお茶会が催される。そこで話をし友人を作る場を持つわけだ。番が見つからない者、既に失ってしまった者は、孤独から寿命を縮める傾向にある。同じ境遇にある者たち同士 交流を持たせている。

基本的に魔法刻印が現れると紋様は隠すので、魔法刻印の確認の際、魔法省が紋様を確認し描き留めていく。そして番が見つかっていないリストと照らし合わせ、そっと伝え出逢わせる。

波長が合う近しい者同士で友人になることが多い。大切な交流の場だ。

番が見つかり婚約が決まれば魔法刻印を公に見せる者もいるが、魔法刻印は大切なものなので普段は隠している方が多い。他人の魔法刻印は基本的には他言無用がルール。



この国の貴族の子供は12歳になると全寮制の魔法学院に入学する。

魔法刻印は大抵15歳くらいまでに現れるので、12〜15歳くらいまでが一般教養などを身につける。16〜18歳までで学科に分かれて魔法を本格的に学ぶ。

大きく分けて、魔法学部、薬学部、就労部。

高位貴族、魔法刻印が出た者、魔力の多い者、魔法適性が複数の者は魔法学科へ進む。


その魔法学部から溢れた者たちが薬学部や就労部へと進む。

薬学部は魔法陣の研究や、ポーションの生成や薬草の栽培などを研究する、まあ表の魔法学部、裏方の薬学部と言ったところだ。

就労部とは規定の魔力が足りない者たちが進む。つまり魔法刻印が出ない者たち。

下級貴族や魔力量が少ない者たちは、魔法学部の騎士や淑女コースと同じ様な事を学びながら、執事や女官として働く為のスキルを学ぶ場になっている。ここで学んだ者たちは王宮や高位貴族に就職し易い。



ラディージャは幼馴染のディーンシュトと魔法学院に入学する。


早く大人になりたかった。

魔法刻印が現れたらきっとディーンシュトとずっと一緒にいられると思っていたから。

本で学んだ魔法で出来ることや、魔法刻印 それに番…それらを自分で体験することが楽しみであった。


「ラディ、ボーッとしていると転ぶよ?」

「ディー! いよいよ入学ね!」

「ああ そうだね。ほら、言ったそばから転ぶ、そそっかしいんだから!」

「うわっと、いけない。うふふ 有難うディー」

「何がそんなに楽しみなの?」

「1番は魔法刻印ね、どんな感じかしら? 自分の魔法適性も知りたいし、運命の番がハッキリするのも楽しみ! ねえ、ディーと番になれるよね? だってすっごく居心地がいいししっくりくるわ、きっと番よね?」

「ふふ、そうだね。僕も他の誰にも感じる事がない魂の共鳴を感じる」

「そうよね! ディーと私の魔法刻印はどんなものかしら?」

「うーん、凝った紋様なのか簡単な紋様なのか…確かに楽しみだね」


ディーンシュトと私は領にいる時も約束をしていなくても、どこにいるかなんとなく分かるのだ。遠く離れていても相手が悲しい気持ちや楽しい気持ちを感じ取る事ができる。見えない糸で繋がっている、そんな感覚だ。



入学すると同じ歳の友人ができた。

セラフィナとリリアーナ、同性の友人というものも初めてできて楽しみが増えた。


「ふぁぁぁぁ」

「リリアーナちゃんてば大きなあくびね」

「あー、セラフィナちゃんにラディージャちゃん おはよう」

「「おはよう」」

「昨日ね、ニーナの新作を読んでて夜更かししちゃって」

「まあ! もう手に入れたの!?」

「勿論よ!」

リリアーナは恋愛小説に夢中で、お気に入りの恋愛小説を紹介してくれるのだ。


「もう、男装の麗人がその身分を明かしたあの時!」

「いやー! ネタバレは良くありませんわ!!」

「あっと、ごめんなさい。つい今回も新作も素晴らしかったものだから…、もう一度読んだらセラフィナちゃんたちにもお貸ししますね!」

「「有難うリリアーナちゃん!」」


「はふ、今日はムステル先生の授業がありますわね」

「ええ、ありますわね」

「「「はぁぁぁぁぁ」」」

ムステル先生の授業はとても難しい。

と言うのもムステル先生は歴史の先生なのだが、すぐ脱線する。歴史学の権威で、

「えーっとこれは余談ですが、バックドロイド王の時代に次々に山の木々が枯れたんですね、それは何故だったかと言えば、魔獣討伐に設置した巨大魔石の術式が一部欠けて術式が変わってしまったんですねぇー、それで影響が出たのが山の植物たち、それはそれは大規模な山枯れとなり、そこに住む動植物にも影響を与えた……」

などと延々と説明を続けていく。だが、これらは教科書には載っていない。だが、バックドロイド王の時代に大規模な山枯れが起きた原因は何か?などとテスト問題に出たりする。ただの雑談と無視することは出来ないのだ。

つらつらと言い連らねる言葉の数々は、大した抑揚もなく淡々と進んでいく。必死にノートに書き記していくが、ちょっとアレ?なんだっけ?なんて思っているとどんどん先に進んでしまう。それに、リリアーナのように寝不足の時に聞くムステル先生の声は催眠術のように体に響き渡る。船を漕ぐ生徒が数名出没、必死に耐えるものが数名 必ずでる。


ラディージャはムステル先生の授業が嫌いじゃない。

ムステル先生の話を聞きながらその時代に思いを馳せ想像するのが楽しい。

脳内で勝手に厳つい王様を想像したり、失敗談の時はお茶目な顔にしたり、勝手に作り上げてはニヤニヤしている。

難しい話も多いけど、魔獣の話や魔法の話は勉強だと思うと身構えてしまうが、知らないおじさんの武勇伝だと思うと面白おかしく聞く事ができた。


火魔法で薙ぎ払うつもりが火魔法を使う魔獣に返り討ちにあって逃げ帰ったとか、人間が術式を展開するより魔獣が魔法を使う方が早くて怪我を負ったとか、ここら辺は武勇伝と言うより失敗談という感じだが、こう言う経験を経て今がある。今後 魔法を使う時に役に立つと思うと興味深かった。


「ディーー! 時間ある?」

「少しならあるよ! なにー?」

「えっとね、ハロルド先生のお手伝いで薬草園に行けることになったの!」

「そうなんだ、ふーん なら僕も一緒に行けるか後で聞いてみる!」

「うん、有難う じゃあまたね!」

「うん、後で」


今年はディーンシュトとラディージャのクラスは分かれてしまったので、話をしたくても移動授業だとできない場合があるのだ。クラス替えは毎年あり、選択科目によってはまた分かれたりもする。それはなるべく多くの人間と関わり合うようにとの配慮だ。

結婚後は番を異性と会わせることを嫌い者も多いので、なるべく友人を作らせる為とか言っていた。確かに我が国は番によって婚姻を結ぶ為、一夫一婦制。番を一生愛し抜く、だから番以外を必要としないところもある。

ただ例外もある。

番で結ばれた夫婦は愛人などを作らないが、魔法刻印が現れない者や魔力がない平民などはその限りではない。また子供が生まれる前に不慮の事故や病気で番を亡った場合や番に出逢えなかった場合など、片割れ同士で子供を持つこともあるが、基本的に子供に対する愛情も深い為どちらかが手放すことが出来ずうまくいかない事が多いらしい。結局 生涯1人で生きていく事を選択する…。それに番を亡った片割れは狂死する事が大半、それを少しでも緩和する為に気の置けない友人を作らせる目的らしい。

因みにラディージャの家は…子供に対する愛情は薄い気がするが…。


まあ、そんなこんなでシャッフルされ多くの人と知り合う機会を設けられる。



隣のクラスのイクタル君のご両親が面会に来た。

丁度面会室の横を通った時に見かけたのだが、ご両親はイクタル君を抱きしめてオヨヨと泣いている。それに釣られてイクタル君も泣き出していた。

『えった!? ちょっ! 何事!! 大丈夫!?』

「ああ、イクタル…何か問題はない? 寂しくはない?」

「そうだ、イクタル うっく 困っていることはないか?」

「お父様、お母様……、お父様とお母様と乳母とハグできない事が寂しいです…うぅぅ」

「ああ、可哀想なイクタル!」

「ああ、なんて事だ、まだこんなに小さいのに一人ぼっちで頑張らなければならないなんて!」


『………ああ、吃驚した。そう言うことか!』

番夫婦は仲が良い、そして親子仲も凄く良い! 子供が全寮制に入ってしまって子供も寂しいが親も寂しくて会いに来たりするのだ。

ラディージャも郷愁に駆られる。

『離れたら寂しいと思ってくれるのかな? 寂しい…』


「ラディ!」

「グスン、ディー?」

「どうしたの?」

「なんだか、寂しくなっちゃって…」

「そっか、なんだか寂しがってる気がしたから…、大丈夫 僕が側にいるからね! ね?」

「うん、ディー大好き」


「あっ!そうだ、ハロルド先生のお手伝い、僕も参加できることになったよ!」

「本当? やったー! 一緒にいられて嬉しい、楽しみだね!」

「うん、ハロルド先生はポーション作りの権威だもんね。僕も楽しみ」

「ね! ね! ポーション作りって大人って感じだする!」

「あははは、うんうん大人だねぇ〜」

「そうだ、今日のランチはディーの好きなやつだったよね! 楽しみだねぇ〜」

「そう! 僕 肉団子好き。ラディも結構好きでしょう?」

「うん、ディーが好きなものって思って食べてたら好きになった」

「ふふ」

「えへへ」


「お友達出来た?」

「うん、今度紹介するね」

「うん、私もするね」


ラディージャとディーンシュトは会うとたわいも無い話をしながら多くの時間を刻んでいた。2人一緒にいれば何があっても楽しかった。

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