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大塚駅まで葵を送っていった。改札辺りまで行く前に、「ここでいいよ」と葵に言われる。
「じゃあまた飯食べに行こう」
「うん。そのうち。私自分からじゃ誘えないかもしれないから、加賀美さんから誘ってね」
そう言って二人は互いに背中を向け合って各々の行くべき方向に歩いていった――。
徐に葵は背中に重みを感じた。
「何? どうしたの?」
群青は動けずにいた。女子高生に、後ろから抱きついたからだろうか。彼女の匂いが好きだったからだろうか。人肌が恋しくなったからだろうか。真っ当に学校に通って、恋愛をして、成人してと、そのすべてを順当に生きてこなかった群青にはわからなかった。ただ、少し背の低い葵の肩を抱きながら、「こっち向かないで」と口にしていた。
「これが最初で最後な気がするんだ」
そう言って、腕は解かれる。
葵は振り返った。見えたのは群青の背中。目で追っているうちに、入り乱れた駅構内のどこかへ消え、見失ってしまった。一寸、目を閉じる。
「するんだ、って自分の人生操られてるみたいじゃない」
葵は改札を抜けた。