第1話 お姫様になったけど
どうやら私はお姫様になったらしい。
今までは、旅の者として、あちこちふらふらしながら生活したのだが、偶然立ち寄った国で、王様に見初められてしまったのだ。
始めは少しだけワクワクした。
今の状態は自分で選んだ生き方といっても、豪華な生活に対するあこがれはあったし、綺麗なドレスを着たり、素敵なお城で暮らしたいという欲求はあったから。
普段は、隊商にまざって砂地を歩いたり、三日風呂に入らなくても気にならない生活をしているが、たまには他の女性みたいに乙女っぽいものに憧れる瞬間があるのだ。
でも、実際になってみるとそれほど良いものとは思えなくなってしまった。
確かに、ドレスはきらきらして綺麗で、お城はぴかぴかで輝かんばかりで、食事も美味しくてベッドもふかふかだった。
けれど、お姫様になるための教育は厳しかった。
今まで自由に生きてきた私にとって、何かに縛られる生活はかなり苦痛だった。
それに常にお淑やかにしていなければならないというのも疲れる。
国のトップに近しい位置に立つのだから、分かるけれど。
一般的な生活しか経験していなかったのに、いきなり態度を変えろと言われても戸惑ってしまう。
だが、それだけならまだ頑張って乗り越えてみようと考えたかもしれない。
私はこれでも、様々な地域を渡って来た経験から、けっこう我慢強い性格になったと自負しているから。
けれど、王様の性格が問題だった。