幕間
「お前、変わってんなぁ」
久しぶりに大学の同期生数人での集まりに行くと、話題は僕が教授の下で働いている話になった。
「家も間借りしてるんだろう?一日中あの教授と一緒で気味が悪くないのか?」
たしかに教授は僕たちが在学中のときから、変わり者で有名だったので、そう言われても仕方がない。
「お前、まさかその噂の若い奥さん目当てなんじゃないのか?」
ひとりが笑いながら下品な発言をした。学生時代から酒に弱い奴だった。
「……そんなんじゃないよ」
繭さんに会ったことがないからそんなことが言えるのだと思った。
「でもおかしな話だよな。大学の他の教授たちですらその奥さんに会ったことがないらしいぞ?」
「若い奥さんがさ、他の男の目に触れるのが嫌なんじゃないか?きっと教授の焼きもちさ」
皆が口々に話すのを聞いていると、納得出来る面もあった。
(まあ……溺愛しているみたいだしなぁ……)
少女のような繭さんと、その繭さんに寄り添う教授の顔を思い出し、焼きもち以上の、狂気にも似た執着があるように思えた。
「なあ、どうなんだよ?」
絡んでくる友人をかわして僕は便所に立った。
鏡を覗くと赤い顔をしていた。
席に帰りグラスの中の温くなったビールを飲み干して会話に戻ると、すでに友人たちの話題は他のものに移っていた。