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この大学に通うほとんどの学生は、敷地内の学生寮や、実家が近い者は実家から通っていた。
中にはその実家通いの友人の家や、近くに親類がいれば頼み込んで間借りしていた。
それ以外だと、数駅分離れたアパートから車や単車で通学していた。
入学当初、最寄駅まで電車に乗り、そこから大学まで徒歩で通おうとしていた学生たちは、早々に己の考えの甘さに打ちのめされるのだった。
駅から大学までは驚くほどの距離と高低差があり、歩いて通うにはあまりにも遠く険しいのだ。
かくいう自分も学生としてこの学校の生徒だった頃は、大学の最寄駅から一つ隣の駅、そこから徒歩17分の格安アパートに住み、入学してすぐに打ちのめされ単車で通うようになったが、正直なところ毎日単車で通うのは結構辛かった。
雨の日や風の日、真夏や真冬はとくに。
学生だった頃の、そんな僕の辛そうな様子を知っていた教授は、
「建物は古いけれど、部屋はたくさんあるから」
と言って、大学からほど近い教授の家に住み込みで働くことを提案してくれたので、渡りに船とばかりに僕は教授の好意に甘えることにした。
居候となり教授の下で働くようになってからは、通勤は楽だったが、文字通り一日中教授と過ごすようになった。