君の好きな本と僕の好きな本
あの会話から数日後僕は本好きが講じ、図書委員となった。彼女も偶然ながら一緒の委員になった。僕は思わず、
「君も、本が好きなの?」
彼女は花のような笑顔で
「私は君とは違うわ。電子書籍なんかじゃ、満足出来ないの。紙じゃないと」
と皮肉を言う
「僕だって好きで電子書籍読んでるわけじゃないよ。できるなら紙の本がいいさ。効率考えると電子書籍になるけど」
そう。紙の本が好きじゃなければ、こんなめんどくさい手入れをしたり、丁寧に扱わなければならない、図書委員になんてなりたいと思わない。その気持ちが彼女に伝わったのか、
「それもそうね、好きじゃなければ、この委員会なんか入らないか」
納得したように頷く。そして僕に問いかける。
「君はどんな本を読むの?」
悩む。僕は雑食だからだ。
「強いて言うなら、村上春樹とか司馬遼太郎かな。そういう君は?」
彼女も悩んでいるのか、形の良い唇をすぼませ、宙を見る。んーと小声で言った後、
「横書きは好きじゃない。紙の本ならなんでも。資本論からラノベまで」
思わず僕は、笑みを浮かべた。
「それは、ジャンルじゃないよ」
そう言ってしまった。しまったと思い彼女の方を見ると、笑顔で
「ジャンルは関係ないわよ。横書きは読みにくいから嫌いなだけ」
「僕も横書き嫌いなのは同意だな」
そういうと彼女は笑顔になった。
「あなたの事は好きにならないと思うけど、その考え方は好きだわ」