天獄と地獄
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うっ..... 眩しい
突然視界が光に染まると、光が収束しだした。
何処だここは。
森の様だが、臭う。
鉄のような、生臭い臭いだ。
俺は自分の身体を見ると、茶色の皮でできている様な装備をしていた。
そして、俺の腹には風穴が開いていた。
駄目押しに、目の前に巨大な見た事のない、猪の様な生物がいた。
俺の知っている猪は、あんな禍々しいオーラは纏えなかったと思う。
えっと、俺の装備品はなんだ?ポーチに剣になんか薬みたいなやつか。
これ飲めば、この痛いの治るかもな。
俺は赤く煌めく様な液体を喉に通した。
思った以上に苦い。
だが、これで傷口は塞がるか。
便利だなこれ。
もうポーションはない、か。
だが、あいつも逃してくんなそうだし....殺すか。
黒斗の精神状態は既に狂っている。
それだけではない。
痛覚耐性、精神耐性、毒耐性、気象耐性を得ると言う、普通の人間では不可能な事を成し遂げていた。
あいつ....突進して来るつもりか。
阿保が....俺には武器がある。
奴の移動速度がどれほどかは知らんが、避けて斬り殺すのみだ。
猪もどきは、時速120kmほどの速度で黒斗に突っ込んだ。
余りの速度に黒斗は目を見開いた。
黒斗はここが前いた世界ではないことに気づいた。
猪如きが、車の速度を超えるだと....
舐めんなよ!
お前は、俺に殺されるだけでいい。
いや、お前は俺に殺されるべきなんだ。
悦べ家畜!!
家畜の分際で俺にダメージを与えた罰を与えてやる!!
うは!!うはははははははは!!!!
黒斗は壊れた様に叫び出した。
狂気のレベルではない。
精神が不安定な彼はそう叫び、猪もどきに突っ込んだ。
防御も一切考えずの特攻である。
少し気圧される様な素振りを見せた猪もどきだが、即座に耐性を直し、黒斗の特攻にカウンターを狙う。
黒斗は狂っている狂人だ。だが、ただの狂人ではない。
姑息で、卑怯で、下衆であり、小賢しい狂人だ。
そんな、黒斗は猪のカウンターに対する術を考える。
黒斗は特攻をしながら、真正面からタイミングを見計らっていた猪もどきの攻撃をセミロングの剣で上手くいなし、猪の後ろに滑り込み斬りつける。
くそっ、あいつかてえなぁ....
あの赤いのが原因か?
あの赤いのをどうにかしないと、不利だ....
黒斗が赤いオーラの攻略方法を考えていると、刹那、猪もどきの赤いオーラが、黒斗目掛けて伸びた。赤いオーラは鋭い針の様な形になって、黒斗の足を貫く。
おいおい....痛えじゃねえかよ、くそがぁ!!
今すぐぶった切ってやるよ!!!
黒斗は雄叫びを上げ、再度突っ込んだ。
黒斗は、紫の猪もどきのよりも禍々しいオーラを纏い、猪もどき目掛けて走り出した。
危険だと思ったのか、猪もどきは黒斗を囲む様にオーラを広げ、潰す様に小さくしていった。
黒斗は猪もどきのオーラのうちに閉じ込められた。
このままでは圧死すると悟った黒斗は、小さくなっていく空間を広げる様に押した。
だが、抵抗も虚しく終わる。その空間は、普通の人ではどこかが折れるくらいの大きさになっていく。空間が、人の身体よりも小さくなっていった。そして、バキバキという音が辺りに鳴り響いた。
「おやおや、やってしまいましたか。私の試作品が。まあ、それなりの強さはあるので、当たり前ではありますが。おや?」
猪のような魔物が放ち、黒斗を押し潰さんとしていた赤いオーラがだんだんと膨張していき、ある一点で粉々になって割れた。
中からは腕と頭蓋骨が潰れた黒斗が這い出て来た。
「おお、これはこれは初めましてですなぁ〜。私はアザルス。貴方のお名前は?」
..........
「おお、これは申し訳ない。いまにも死んでしまいそうな状況でしたなぁ〜!貴方のその生命力、冥府の者の一族の能力に似ていますねぇ。
貴方、転生者ではありませんか?
その血に染まった銀髪に碧色の眼球、そしてその整った顔。間違いありませんねぇ〜!!僥倖です。手間が省けました。
呪われたヘロン一族の住居は見つけるのが容易ではありませんからねぇ。貴方、付いてきて貰いますよ。拒否権はありません。」
......ヘロン一族....?
..........呪いの一族.........?
....なんだこい..つ...は................
黒斗の意識は途絶えた。