表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

異世界ファンタジーから寄生虫を撲滅するための方法

作者: くるくる

 例えば、異世界テンプレのこんな一場面。



 あらすじ:

 日本から異世界に召喚された勇者は、神様からもらったチートを駆使して魔王を倒した。

 冒険の間に勇者にべたぼれになった聖女。

 色々あって用意した風呂に、聖女と勇者は混浴することになった。

 視点は勇者。


 ●○●○●


「はあー……」


 思わず口からおっさんみたいな声が漏れる。

 だが、それもしょうがないだろう。

 こっちに来てからは冒険続きで、風呂なんて入れなかったからな。

 たまに濡れた布で体を拭うくらいだ。

 久しぶりの風呂は、骨身にしみわたるほど気持ちいい。


 目を開けると、こちらも気持ちよさそうに目を閉じる聖女がいた。

 美人だ。

 光を放っているかのような金髪に真っ白な肌。

 体全体が完璧なバランスを保っていて、もしかして神様自身がデザインしたんじゃないかと思うほど人間離れしている。

 こんな綺麗な人が、今では俺の奥さんなんだよな……。


 あっ、今気づいたけど風呂に入る時の作法を教え忘れてたな。


「なあ、聖女」


 俺の呼びかけに、聖女が長いまつ毛で縁どられた瞼を開く。


「どうされました? 勇者様」


「言い忘れてたけど、風呂に入る時には作法があるんだよ。

 例えばその髪」


 言って、聖女の周りをたゆたっている金色の髪を指差す。


「お湯に髪はつけちゃいけないから、結ばないと」


「まあ、そうだったのですか! お恥ずかしい」


 聖女が両手を口元に動かしたことで、胸が!

 絶妙に隠れてたのに、飛び跳ねる。

 このままだと……。

 咄嗟に顔を逸らす。

 いや、別に見てもいいのか?

 俺と聖女は夫婦なわけだし。


「勇者様」


「うわっ!?」


 気づいたら聖女が俺のすぐ近くまで四つん這いで近づいて来ていた。

 俺の顔を下から覗き込んできている。


「水で滑って、髪を結びづらいのです。

 ……勇者様が、結んでくださいませんか?」


 そう言って聖女が俺の足と足の間に体を滑り込ませてきた。

 柔らかい、感触が!

 ってやばい、当たってるって!

 慌てて下腹部に手を伸ばす。

 こんな、やましいことを考えてると思われたら聖女に嫌われるかもしれない。

 それだけは嫌だ。


 目的地に一直線に伸ばした俺の手を聖女が掴んだ。


「勇者様、いいんですよ。

 私は……嬉しいです」


 聖女の手によって、ゆっくりと俺の手が誘導される。

 滑らかな聖女の太ももから、お尻へ。

 俺がたまに聖女の後ろからお尻を見てたことがばれてたのか、なんてことが頭をよぎる。


 ついに、俺の手が聖女のお尻を包み込んだ。

 すっぽりと手に納まるのに柔らかい。

 俺の理想がそこにはあった。


 こんなものを目の前にして、我慢できない。

 俺は遠慮なく聖女のお尻を堪能しようとして――――


「……ん?」


 何かが指に当たった。

 摘まめる。

 ゴミか何かか?

 思いっきり引っ張ってみると、少しの抵抗の後プチンと千切れた。

 湯の中から取り出して、眼の近くに持って行ってみる。


 なんだ、これ?

 白っぽい、平べったいものが摘ままれていた。


 ●○●○●


 ちなみに登場したのはいわゆるサナダムシってやつです。

 聞いたこととかないですか?

 他に有名な寄生虫といったら蟯虫とか。

 幼稚園とかでやらされるお尻ぺったん試験。あれで診断されるやつです。


 いずれにせよあんまり馴染みはないですよね。

 

 実際今の日本で蟯虫やらなんやらに寄生されてる人は少数です。

 でも日本でも戦後なんかはかなりの人が飼ってたんですよ。

 これは戦後だからとかじゃなくて古来から。

 平安時代の書物にも寄生虫の記載はありますし、もっと昔だとエジプトのミイラから寄生虫の痕跡が見つかったりしてます。


 つまりは、人類ははるか昔から寄生虫と仲良く生きてたって訳です。


 これ、異世界だったらどうよ?

 地球の人間が転移とかして、何の問題もない環境だったら、他の生物も同じような進化の過程をたどってるんじゃない?


 なので私は断言しましょう。

 中世風異世界にも寄生虫は存在していると。


 そこで暮らしている美少女たちも、半分以上が確実に汚染されてるわけです。


 ついこの間、私はこの事実に気づいて、

 で、今この文章を書いています。


 だから何だよ、そんな細かいことどうでもいいだろ。

 ○○ちゃんは奇跡的に綺麗だから。

 とか思う人が大多数かと思うんですが、なぜか気になって、

 色々考えました。

 なので、この場を借りて私の考察を発表させてください。




 さて、ではどうやれば冒頭の聖女が寄生虫に侵されないで済むか。

 それを考えるにはまず、どういった経路で感染するかを考える必要があるでしょう。


 実在する寄生虫だと、経皮感染、マラリアなんかの吸血生物による感染、色々ありますが、一番多いのは経口感染です。

 虫卵を食べたり、幼体を食べたり。

 口から侵入したそいつらは体内や消化管に寄生します。


 じゃあ、さらに踏み込んで、虫卵がどうやって口に入るのか。

 ここが、近年日本なんかの先進国での寄生虫が激減した理由となります。


 人の腸管に寄生した生体は中で卵を産みます。

 その卵は便に包まれて体外へ。

 今なら便は水でジャーです。

 その後下水処理場で壊されます。


 これに対して、昔は便を農作物を育てる肥料にしていました。

 当然便中の虫卵も野菜に付着。

 めでたく新しい宿主に到着するというわけです。


 現代日本は科学肥料でこの経路を断ちました。


 だけど、中世風ファンタジーの世界の畑の上を、ラジコンヘリが動き回って農薬を散布するのは変なので、困ったときの魔法。

 農作物成長促進の魔法とか。

 あと、よくあるのが魔法はごく一部の人しか使えない設定なので、こういう世界では特殊な植物を作ればいいかもしれないですね。

 肥料代わりになって、勝手に育ってくれる草とか。


 そんな便利なものがあるなら、異世界の人たちもわざわざ汚いウンコなんか撒こうとは思わないでしょう。


 問題はあと一つあります。

 便の処理です。

 野原でウンコをしてあとは放置だったら、川に流れ込んで汚染されますからね。

 燃やせばいいですかね?

 小さい村とかならそれで解決しそうです。

 けど、でかい都市となるとかなり難しい気もします。

 数千人の都市くらいならファンタジーで許されると思いますが、毎日トンの便を燃やして処理してたら火事になりますもんね。

 一カ所に集めるシステムもいります。

 代わりにここでも魔法を使いましょう。

 でかい都市なら魔術師も結構いるはず。


 宮廷魔導士汚物処理班とかあってもいいでしょう。


 日夜匂いも出ず、安全に汚物を処理するための研究をしていて、他の魔導士からは馬鹿にされてるんです。

 このウンコ野郎、とかいって。

 そんな風に侮られてるから、隣国との戦争の時も一人しんがりを命じられます。

 無双フラグですね。

 ウンコ野郎は日々の研究によって、卓越した技術を獲得していたんですよ。

 匂いを拡散させないための空気操作魔法! とか

 一瞬でウンコを乾燥させる超火力魔法! とか

 ウンコ野郎を置いて逃げ出した他の魔導士たちが、遅いな、おかしいな、とか思って様子を見に帰ってくると、幾万の敵国の屍の中、たった一人立っている男がいる。


 とかカッコ良くないですかね?

 もしあったら読んでみたいです。

 僕じゃこれ以上話を広げられそうにないから無理ですけど。



 これだけ設定を盛れば聖女も綺麗なままでいられますかね?

 いちいち物語の中では描かれないけど、こういう設定がある、と思えば私も心置きなくファンタジーの世界を楽しめそうです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 世の創作において、食や医に関する話にはみんな飛びつき、 下の話は避けられますが、そんな話題に果敢に挑戦され、 非常に興味深く拝読いたしました。 勇者様が現代人ならさぞや驚かれたでしょうね…
[良い点] 拝読しました。 ありがとうございました。 寄生虫に付いては、自分も以前から作品で触れたかったのですが、なかなかその機会が無く。 こうした視点のものはとても嬉しいです。 後、微妙に逸れ…
2019/01/03 19:56 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ