表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隻腕の召喚術師  作者: 天地優
序章
18/18

第18話

ここは王国南方の森林の中。この森林には王国が所有するダンジョンがあり、多くの冒険者達が今日もダンジョンに挑むため森の中を進んでいた。


「よっしゃー!!今日こそ10階層を突破してやる。」


「おいおい、浮かれるのはいいが油断だけはするなよ?」


「そうよ!前回だってもっと慎重にやってれば先に行けたのよ!!」


「・・・・・・」


今現在森の中を進んでいる4人の男女もそんな冒険者達の中の一部だ。


「任せとけって!!今回は大丈夫だよ!!」


「・・・・・・」


「・・・・なぁリョナ?さっきからずっと黙ってるけどどうしたんだ?」


「そうだよ、あんたらしくない。なんかあったのかい?」


仲間たちの問いかけにリョナと呼ばれた少女は黙って首を縦に振った。


「・・・今日の森、おかしい。」


「「「???」」」


リョナの言ったことが理解できない3人は互いに顔を見合わせて首を傾げた。


「おかしいって何がおかしいんだ?」


「そうだよ!いつも通りの森じゃないか。」


「おかしいところはないぞ?」


それを聞いたリョナは今度は無表情になりながら言った。


「私達、今日一度も森の中で魔物とあってない。いつもなら、ダンジョンに行く前に必ず魔物と戦う。でも、今日は魔物どころか森の動物も見かけない。森が静かすぎる。」


「「「!?」」」


さっきまでリョナの言いたいことがわからなかった3人だが説明を聞いてその表情はハッとしたものへと変わった。


「確かに!!今日は魔物にあって無い!」


「いつもは少し森に入っただけでウルフ系の魔物なんかと遭遇するものなんだが・・・」


「今が早朝だってことを考えても気味が悪いね・・・・」


ダンジョンはダンジョン内に魔物を産み落とすが外には生み出す事はない。また、ダンジョン内で魔物が増えすぎることが無い限りはダンジョンの外に魔物が出ていくことはない。それに加え、ダンジョンで生まれていない魔物がダンジョンの中に入っていくこともない。理由は分からないが昔からそのように考えられているし、反例も見つかったことは無いのだ。だからもちろん、森の中にはダンジョンとは関係のない魔物も存在し、ダンジョンに行く冒険者にとってはダンジョンの中だけでなく、外の森でいかにして物資や体力を温存するかも戦術の一つとして求められるのだ。しかし、今日は森の中で魔物が見つからないという。これは十分に異常事態だった。


「どうする?引き返すか?」


リーダー風の男が3人に尋ねる。その声に先ほどの陽気さはかけらも存在しない。緊張しているのがわかる。


「確かに気味が悪いが・・・俺は取り合えずダンジョンまで行ってみるべきだと思う。」


「そうね。ダンジョンにも異変が起きてたらギルドに報告しなきゃいけないし。」


「リョナもそれでいい。」


「よし。ならダンジョンまで行くことにしよう。ただし、少しでおかしなことがあったらすぐに街へ帰る事。いいな?」


リーダーの男の言う事に他のメンバーが頷いた。


そして彼らはダンジョンがすぐ見える場所までやってきたところで信じられない光景を目にした。


なんとダンジョンに魔物が出入りしているのだ。しかも真に驚くべきはそこだけではない。


「あれは・・・・まさか、森の魔物を運んでいるのか?」


そう、出入りしている魔物たちはみな動物や魔物の死体をダンジョンの中に運び込んでいるのだ。通常、ダンジョンの中で生まれた魔物は食事を必要としないとされており、ダンジョンないの魔素を取り込むことによって生きている。森の魔物はその逆である。その事実からでも目の前の光景は異常であるとわかるのだ。


「これはやばいよ!!すぐにギルドに報告しなきゃ!!」


「そうだな!!すぐ戻るぞ!!」


そう言って4人はすぐにその場を離脱した。急いで街に戻っていく4人の背中を見つめながら笑みを浮かべている者の存在に気づくことなく。



この森の異変がのちに大陸全土を揺るがす大事件の幕開けであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

森の異変発見から少しあと、俺は自分の国でそんな異変が起きているとはつゆ知らず、いつものように家族で朝食をとっていた。うちはご飯を食べる時は家族そろって、がモットーであるらしい。


「それではいただくとしよう。・・いただきます。」


「「「いただきます!!」」」


合掌をして食べ始める。ちなみにこれを広めたのは俺だ。食べる前に言わないと落ち着かないんだよね。


「タク。最近の訓練はどうだ?リンスルと互角以上に戦えているらしいが?」


食事中に会話を楽しむのも大切なことだ。俺は父様の方に目を向けて返事をしようとしたがそれよりも早く答えた子がいた。


「兄さまはすごいのです!!!この前もリンスル様に勝っていました!!」


「兄さまちゅごいのー」


妹のシャルが嬉しそうにそういった。つられて3歳の弟、ロアだ。まだ幼いので母様が横でご飯を食べさせてあげている。自分で言うのもなんだが、2人は俺によくなついてくれている。兄としてうれしい限りだ。


「確かにこの前はリンスルに勝てましたがまだまだ負け越しです。未熟という事ですね、俺は。」


俺はそう答えた。謙虚が一番だからな。え?謙虚な奴はそんなことは思わないって?うるさいほっとけ。

隣でシャルは「そんな事ありません!!」と言っているが父様は何か感心したように首を縦に振っている。


「タクよ、一番の敵は慢心だ。慢心したとたんにそのも者の進歩は止まる。貪欲に、謙虚に生きることが大切だぞ。」


そういってまた食事を再開した。いつも父様が言う言葉だ。それは俺にもよくわかる。俺もまた「はい!」と大きな返事をして食事を再開した。


それからは他愛ない会話をしながら食事をし、静かな朝食が終わろうとした時、その報告により事態は一変したのだ。


ードンドンッ


乱暴にドアをたたく音が食堂に鳴り響く。突然の事でロアがびっくりして泣きそうになっている。父様はそんなロアを気遣って落ち着いた声で言った。


「入れ。一体何事だ。」


そう言って入ってきた兵士が取り付く間もなく声を荒げて


「お食事中に申し訳ありません!!緊急事態です!!王都よりイースフェルト大公家に救援要請が届きました!!」


その報告に食堂にいた者達はみな驚きをあらわにする。俺も突然の事で驚いた。父様を見ると流石というべきか驚いたような様子はうかがえなかったが難しい表情をしていた。そんな父様は、その兵士を見つめて


「救援要請が出されたのは分かった。して、内容はどのようなものなんだ?」


当たり前だがしゃべる方が仕事中の物へと変わっている。

兵士は息を整え、一呼吸おいてからその口を開いた。


「は!!王国南方の森のダンジョンにて魔物の大反乱(スタンピート)が確認されました!!その数、5万です!!」


「馬鹿な!!5万だと!!その魔物たちの動向は!?」


「今だ動く気配はありません。明らかに何者かが統率しているものと考えられます。また、これは未確認の情報なのですが・・・」


「なんだ!!言ってみよ!!」


「魔物の数はいまだに増え続けている模様です。」


「!?」


父様は唖然とした表情になる。状況が状況だ。仕方がないだろう。俺の横ではシャルが不安げな表情をしているし、ロアは泣き出し母様に抱えられている。母様も心配そうに父様を見つめている。


「あなた・・・・」


唖然とした表情からすぐに元に戻り、父様は兵士に指示を出す。


「相分かった。その要請受け入れる。すぐに領軍を集めろ。事態は一刻を争う!!」


父様に指示された兵士は慌てて部屋を出ていく。確かにうちの領軍はかなり強いから援軍を送ればかなりの力になれるだろう。だが、


「あの、もしかして父様も行かれるのですか?」


俺が不安げに尋ねると父様はこちらをちらりと見て笑いながら言った。


「もちろんだ。将が居なければ話にならんからな。そんな顔をするな。これでも腕には自信がある。魔物ごときに遅れは取らん。」


そう言って父様は出立の準備をするために部屋を後にした。



その後は早かった。領軍の出立式も終わりまさにイースフェルト家の屋敷を出ていこうとした時、それは起きた。


ードガーーーーーン


盛大な爆発音と共に領の南門が爆発した。


序章もいよいよ終盤です。ここまでお付き合いいただきありがとうございます。

これからもこの作品をよろしくお願いします。

少しでも続きが気になる、と思われた方はぜひポイント評価とブックマークよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ