合コンはNGです
新作です、よろしくお願いします。
今日から6話、毎日0時に投稿、それ以降は日曜0時に投稿予定です。
「遠野ちゃん遠野ちゃん、彼氏いなかったよね、今晩空いてないっ? 合コンのメンバーが一人ドタキャンしちゃったの、ピンチヒッターお願いー!!」
お昼休み、コンビニにお弁当を買いに行っていた水野さんが戻って来るなり、私に泣きついてきたんだけど、
「すいません、着替え持ってきてないんです。 制服で水野さん主催の合コンじゃ浮いちゃいますから勘弁して下さい。 それに私、合コン苦手なんです」
実は嫉妬深い彼氏がいるので合コンNGなんです。 2歳年上の水野千恵さんは、面倒見がよくて優しい良い先輩なんだけど、ただいま婚活中で合コン三昧、他人の恋愛話が大好きなのが玉に瑕、ということでその事は秘密なんです。
それにアイツの事は、あんまり他の人間に知られるのはマズイというか……
「もうっ、遠野ちゃんも26歳なんだから合コン苦手なんて言ってないで、もっと積極的にいかないとダメだよ。 それに今日はお堅い公務員さん相手だから他の子も派手な格好はしてこないはず、ウチの制服って普通にスーツだから大丈夫。 なんなら私も制服で行くから」
だけど今日の水野さんはそう言っても諦めてくれない、どうしようと思ってたら隣の席でお弁当を食べてた青衣さんが助け船を出してくれました。
「千恵ちゃん、後輩に無理強いしちゃダメよ~。私今日空いてるから、代わりに行こうか?」
「えっ、良いんですか杏子さん。 ありがとうございます、助かります! でも遠野ちゃんも、今度は合コン一緒に行こうねっ」
青衣さんの言葉を聞いてぱっと嬉しそうな顔をした水野さんはそう言うと、ヤバイお昼食べる時間が無くなっちゃう~と慌てて自分の席に帰っていった。
「助かりました、ありがとうございます」
水野さんの様子をクスクス笑って見てた青衣さんに頭を下げてそう言うと、くるっと私の方を向いてこっそり爆弾を落としてくれました。
「千恵ちゃんも悪い子じゃないんだけど、ちょっとお節介な所あるからねえ。 遠野ちゃんも、彼氏の事内緒にしたいんだったらもっと上手く隠さなきゃ」
「ええっ、なんでそれを……あの、その……」
どこかで疾風と一緒にいるところ見られた? でも最近一緒にお出かけなんてしてないよね、なんてあたふたしてる私の頬を突きながら青衣さんがニヨニヨ笑ってる。
「あら、本当に彼氏いるんだぁ。 かまかけてみただけなんだけど、ふふふ大丈夫よ誰にも言わないわ。 青衣さんの口は堅いんだから」
って、まんまと引っかかった自分に愕然とするものの、青衣さんだから仕方ないかと諦める。
妙に勘が鋭くて、さり気ないフォローが得意な青衣さんは担当してる会社の社長さんから、お母ちゃんなんて呼ばれているんですよね……本人まだ29歳なのに、自分より年上の子供は要らないわよなんて言ってますが。
「お先に失礼しますっ! 遠野ちゃん、次は絶対参加してね!!」
終業のベルが鳴るなりバタバタと帰り支度を始めた水野さんは、そんな言葉と共に青衣さんの背中を押して急いで合コン会場に向かって行った。
「お疲れ様でした……」
はぁ……合コン苦手って言い訳じゃ次のお誘いは避けられないかぁ、今回の合コンで水野さんに彼氏が出来たら良いのに、なんて考えていたら苦笑した相川先生に声をかけられた。
「水野さんは今日も合コン? 頑張ってるわねー」
私の勤めるここ、相川税理士事務所は税理士の相川先生をはじめ、事務員3名全員が女性のアットホームな職場で、最年長で40代の先生は従業員皆のお姉さんの様な存在です。
「あ、先生お疲れ様です。 水野さん、今回のお相手は公務員らしいですよ」
「あら、それなら遠野さんも参加させてもらえば良かったのに。今の時代、やっぱり公務員は狙い目よー」
机の上を片付けながら先生に情報を流すと、やぶ蛇だったのかからかう様にそんな言葉をかけられたので慌てて誤魔化して職場をあとにする。
「す、すいません、今日はちょっと急ぐので……お先に失礼します」
「あらあら、ご苦労様。 良い週末をね~」
仕方ないわねえという顔で手を振る先生に頭を下げて職場を出て気分を入れ替える、今日は金曜日明日からのお休み何しようかなあ。
………あ~、でも天気が良かったら疾風が何処かに遊びに行きたいとか騒ぎそう。