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花は嵐の中で咲く

作者: 佐村 蒼


 恋は、見えない糸だ。

 気が付かないうちに絡んで、そのうち身動きがとれなくなる。もがけばもがくほど、さらにひどく絡んで、自由が奪われる。

 何故。どうして。あの人なんて、好きになっちゃったの。

 古今東西、数多あまたの老若男女が嘆いた問い。それをただ繰り返すなんて、芸がないけど。

 だけど、私も言いたい。

 なんで、あんな奴を好きになっちゃったの。


***


 あの日は、季節外れの台風が来ていた。秋の終わり、十月の下旬頃。

窓を叩く雨風はひどく、この中を学校まで行くのは心底嫌だったけど、顧問からの必死の声を思い出して、私は仕方なく重い腰をあげた。

 流れるままにしていたテレビニュースは、これから私の住む地域に台風が接近していることを告げ、外出は控えるようコメントしていた。

 ごめんね、私はそれでも行かないといけないんだ。学校が、私の家から徒歩10分の距離にあるせいでね。

 授業もない、土曜日なのに。

今日は、本来であれば、私がマネージャーをしている野球部の練習試合が組まれていて、相手となる学校がうちの学校まで来てくれることになっていた。

 昨日までは、台風の直撃は日曜日になる見込みだったから、早めに切り上げれば大丈夫ではないかと、うちの顧問は楽観視していたらしい。

 そのせいで、今日の朝になって急遽試合を中止にしたのはいいけど、双方の学校でその連絡が間に合わなかったんだって。

 こんな天気で試合をやるなんて、誰も思わないと思うけど。

 それでも、うちの生徒だけなら、まだ問題は小さかった。

しかし相手校も、うちの学校を直接の集合場所に指定していたらしく、このまま連絡がつかないと、相手校の生徒がこの嵐の中を来てしまう可能性がある。

 自分の判断ミスで、他校にまで迷惑をかけては何かあるんだろう、切羽詰まった声で、顧問は、私の携帯に電話をかけてきたのだ。

 

「俺は、台風ですでに電車がほぼ止まっていて、学校に行くのが難しい。たしか大野は徒歩で通学していたよな?

 頼む。学校まで行って、連絡が行ってない生徒がいないか確認してきてくれないか。

 試合開始は、午前10時だから、その時間までに来ている生徒がいなければ、それでいいんだ。

 あぁ、大野も雨と風には気をつけろよ!」


 まったくもって、不躾ぶしつけな電話だった。

 ただ、マネージャーなんて言葉の響きからは想像できないような地味さと大人しさを兼ね備える私は、その顧問の頼みに「No」を突き付けることが出来なかった。

 仕方なく、私はひどい嵐の中を踏み出すことになったのだ。

「想像以上だなぁ……」

 私の小さなつぶやきは、世界中に発信されるどころか、誰にも聞かれないままに風の中に消えた。

 暴風雨にまみれ、傘をダメにしながら歩くこと15分。

 ようやくついた校門には、人影はまったくなかった。まぁ、そうだよね。この嵐の中で、誰が来ようと思うんだろう。

 それでも、現在時刻は9時38分。一応10時までは待つことにして、裏門にまわって通用口から敷地に入り、部室に入る。

 私に白羽の矢が立ったのは、部室の鍵を持っていることも一因なんだろうな。

一応、部長と副部長、それからマネージャーである私しか持っていないことになっているから。

 明かりをつけて、用意してきたタオルとお茶でひとごこちついて。

 顧問に、連絡をいれておこうかな、と思った。

ちょうど、そのときだった。

「おぉ、キミこそ俺の救世主だ!!ありがとう、救いの女神!」

 部室のドアが開き、頭がわいたような発言が飛び込んできたのは。


***


 結論からいれば、それは同じクラスの男子で、野球部員ですらなかった。

その彼、(いわ)く。

 昨夜、学校近くの友人の家に泊まったはいいものの、その友人は、今日は家族で用事があって家から追い出されたこと。

自宅に向かう電車はほぼ運行しておらず、雨でぬれたまま駅で待つのは嫌だったこと。

今日は土曜日だし、どこかの部活はやってるだろうから、雨が弱まるまで学校にいればいいと思ったこと。

予想に反して、学校は閉まっており、雨宿りが出来る場所を探していたら、部室棟の野球部の部室だけ明かりがついているのを発見したこと。

あちこちに飛ぶ彼の話をまとめると、そういうことらしい。

「だから、お願いだ。雨が止むまで、俺をここに置いてくれ」

「いや、もう用事済んだし、私も帰りたいんだけど」

 時計はすでに、10時半を回っており、彼の話を途中で遮って確認しに行った校門には誰の姿もなかったし、顧問にも連絡を入れたから、私のミッションは終わりだ。

 これからさらに台風が接近して、暴風雨が強くなることからすれば、もう一刻も早く帰りたい。

「台風が通り過ぎるのって、いつ?」

「明日の朝、の予報だけど」

「えっと、月曜に鍵返すから、この場所借りてちゃダメ?」

「ダメ、だね」

 私個人としてはどうでもいいけど、部室に私物を置いてる部員も結構いるし。これで盗難騒ぎとか起こったら、本当にめんどくさいから。

 いや、彼がそういうことをしそうな人、とまでは、言わないけど。

 明るい茶色の髪。今は雨でひどいことになっているけど、普段はワックスか何かで丁寧に整えられていて。耳元で光るピアスに、チャリチャリと金属質な音をたてているブレスレット。制服は当然に着崩されている。

 何が言いたいかというと、彼は生徒指導の常習犯なのだ。

 こうなると、生徒指導部でもある顧問がうるさいことは必須。

そして、真面目堅物を地でいく部長にも、こんなやつに神聖な部室を貸すなんて、と睨まれることも確定だ。

結論は、断る以外ない。

「一応、決まりだし。ごめんね、どこか駅前のカフェとかにいてよ」

「今、金欠」

 彼は、にこにこと答える。いや、そんな顔をしてもね。

 いつも、キミの周りにいる華やかで艶やかな女の子たちとは違うから、私はどうしてあげる気も起らないよ。

「それはご愁傷様。じゃあ、外に出てくれる?私も帰るから」

「えぇー!今、学校の他に居場所ない、って言ったじゃん!」

「いや、知らないし。他の友達は?電話とかしたら、家にいれてくれるんじゃない」

「さっきの雨で、俺のスマホ、たぶんダメになった……」

 今度は、しょぼくれた顔をして、いかにも弱ってます、みたいなアピールをされる。

 ううん、あのね。

 彼がとてもモテることは知ってる。今までも、困ったことがあっても、その整った顔ひとつで周りがどうにかしてくれたんだろうな、ということも予想はつく。

 だけどさ。

 この地味代表みたいな私には、通用しないんだよね。

 むしろ、そういう人間のせいで、結構なとばっちりを受けている私としては、どんどん助けたくなくなってくる。

「えーと、それなら事情を話して、泊めてもらった友達のところに行くといいよ。

 とにかく部室から出てくれないかな。これからさらに暴風雨がひどくなるから、早く帰りたいの」

「なんかさー。大野さんて、意外と冷たいんだね」

「久坂くんは、予想通りに甘えてるね」

 不機嫌そうな顔で口をとがらせているので、私も冷たく返す。

 そういう反応は予想してなかったのか。

 彼――久坂くんは、ようやく椅子から立ち上がった。

「じゃあいいよ、部室からは出る。でも、代わりに大野さんの家に行きたい」

「はぁ?」

「これから帰る、ってことは、学校の近くなんでしょ?俺も行かせて。

大丈夫、ご家族にもきちんと挨拶するよ!

これもダメっていうなら、俺は何が何でもここにいる。動かない」

 そう言って、久坂君は仁王立ちで私の前に立ちはだかる。

「え、嫌がらせ?」

「違うよ!最大限のジョウホ!」

 この人、譲歩の意味が解ってて、言っているんだろうか。

 どこが譲歩なの。むしろ私にとっては、嫌な選択肢になってるんだけど。

「大野さん、俺がここから出ていかないと困るんでしょ? ほら、どんどん雨と風ひどくなるよー。

 ね、俺と一緒にお家帰ろ?」

 だから。

 ニコッと笑って、小首をかしげても、私には通じない。

「ねー、ねー」とうるさい久坂くんを一瞥して、とりあえず帰る支度を整える。

 これは、あれか。

 とりあえず部室から出して、うちまで行くように見せかけて、うちには上げない。

 その作戦しかないのか。……この嵐の中に残すのは、ちょっと申し訳ないけど。

「……わかった。じゃあ、とりあえず部室から出てよ」

「ほんと!? やったー!」

 本当にこの人の頭の中、精神年齢いくつなんだろう。

私と同じ高校二年生のはずなのに、言動は小学生並みだ。

小学生がやれば可愛い挙動も、身長が180センチを優に超える久坂君がやれば、なんか怖い。

そうして、ようやく私たちは部室から出た。


***


 この日のアクシデントは、まだ終わらなかった。

 まぁ予想に反せず、うちまでついてきた久坂くんを、玄関を前にして締め出すことが、どうしても出来なくて。

 仕方なく、本当に仕方なく、他の場所が見つかるまでって条件で、うちに上げた。

 雨でずぶ濡れになっているので、シャワーも貸した。服は奇跡的に持っていた自分のジャージでどうにかしてもらった。

 昨日、体育があって良かったね。

 そうして、お茶をいれてひとごこちついて。

 スマホが壊れて使えない久坂くんと、仕方なく、台風情報をだらだらとテレビで見ていた。

そんな時に来た、母親からの電話。

 ちなみに、私の両親はどちらも市役所勤めで、そのせいで今日は早朝から役所に呼び出されて、二人とも留守中。

 ただ父親はともかく、母親はお昼過ぎには帰る予定だったから、その連絡だと思ったのだ。そしたら、車で久坂くんを送ってもらおうと思っていた。

 なのに。

「お母さん? これから帰る?」

これでようやく、この気まずい空気から逃れられるって思ったのに。

『ごめんね、さっき堤防が決壊したって連絡があって。お母さんも、まだまだ帰れそうにないの』

「えぇー…」

『ごめんねー。冷蔵庫にあるもので、何かご飯作って食べてね。危ないから、家から出ちゃだめよ』

「うん、家からは出ないけど」

『あっ、呼ばれてるから、もう行くわ。また連絡する!』

 誰かから呼ばれてる声が、電話口からも聞こえて、すぐにプツっと切られてしまった。

 市民の安全を守るため、ね。

 娘の安全は、守られないかもしれないんだけど。いや、冗談だけど。

「どうしたの? お母さん、今日はお出かけしてるの?」

「あぁ、仕事なの。本当はもう帰ってくる予定だったんだけど、まだかかるって」

「もしかして、娘が男の子連れ込んでたら、まずい感じ?」

『まずい感じ』なんて言うくせに、彼はニヤニヤ笑ってる。

「彼氏に間違われたら、どうしよー」なんて、本当にバカげている。

 これはただの救命活動だ。

「大丈夫だよ、この嵐の中でクラスメイトが困ってただけだって、間違いなくわかるから」

「えー、つまんないの。あ、そういえばさ、この近所にコンビニってある?」

「コンビニ? 自転車で5分のところに一件あるけど」

「そっかー。いや、お腹減ったなぁと思って。菓子パンくらいなら買えるからさ」

「本当に金欠なんだね」

「え、嘘だと思ってたの?いや、でも駅近のカフェ行くより、大野さんの家の方が、よっぽどいいけどね。

 暖かいし、お茶美味しいし」

 そう言って、彼はまたにこにこしてる。

 うん、これはやはり、彼の処世術なのかな。

「お昼ご飯くらい、出してあげるよ」

「え、マジで!いいの! 大野さん、マジ天使!」

「さっきから、私を何者にしたいの」

「あれ、でも、大野さんが作るの?」

「ねぇ、人の話聞いてる?

親の帰りが遅い日は、私が夕飯作るから。

ちょっと待ってね、食材確認してくる。なにか食べられないものある?」

「いや、特にないけど。すげー、ご飯作れる女子高生っているんだね!

てか、あるものでご飯作れるとか、大野さん何者なの!」

「ただの地味な女子高生だよ」

 テンションの高い久坂くんをリビングに置いて、キッチンに向かう。

 お昼を話題に出したら、私もお腹が減ってきた。

日曜日にまとめ買いをする我が家の冷蔵庫は、基本的に土曜日には空だ。つまり、何もない。

 戸棚を見れば、トマト缶とツナ缶を見つけた。玉ねぎもあるし、ニンニクもある。そしてスパゲッティもある。

 よし、決まりだ。自己流トマトパスタだ。

 一応、久坂くんに何を作るかだけ伝えて、キッチンに入る。

 自己流なだけあって、ものすごく手抜きだ。玉ねぎ切って、材料炒めて、スパゲッティ茹でただけ。トッピングは、窓際栽培のバシル。ものの20分もあれば完成する。

 おまけにつけたレタスサラダは、洗ってちぎるだけだし、わかめスープに至っては、お湯を注いだだけだ。ひと手間、とかなくて申し訳ない。

 なのに。

 彼は、思いもよらぬ反応を示してくれた。

「え、すごい!これ、本当に今作ったの!?」

「どういう意味かな」

「近くのイタリアンとかから、取寄せたわけじゃなんだよね、ってこと」

「宅配やってるイタリアンとか、聞いたことないよ」

「うん、俺も知らない!」

 食べていいかと聞かれたので、食べようかとダイニングの椅子に私も座る。

 久坂くんが座っているのは、いつもはお父さんの席。

 なんか、うちのダイニングで久坂くんとご飯を食べているのは変な感じだ。

 そして、彼はさっきから、「うまい」「すごいプロ並み!」なんてばかり言っている。

 そんなにおだてても、デザートないよ。

 まぁ、お茶菓子くらいは出してあげてもいい。

 そうして、その日の午後は、ゆっくりと、思いもがけずにゆっくりと、過ぎていったのだ。


***


 嵐のあった日から、約一週間。

 台風の爪痕は、土砂崩れとか、堤防の決壊とかで、あちこちまだ残っているけど、私の日常は、何ら変わらない。

 あの日、結局夜になる前に帰ってきた母親に事情を説明して車を出してもらい、久坂くんは無事に帰宅した。

 母親からの追及は、救命活動として説明して、事なきを得た。

 まぁ、まさかあれが、私の友人や恋人だとは、お母さんも思わなかったらしい。

 そして。

 一応はクラスメイトなままなんだけど。

 あの日、あれだけ話した彼とは、一度だって目も合わない。

 私が避けているのでも、彼が避けているのでもない。

 ただ、私と彼では違いすぎて、どこも重ならないだけなのだ。


 なのに。

 

 ふとした瞬間に、野球部の部室や、うちの中で。

 彼の面影を思い出してしまう。

 彼の一言が蘇ってしまう。

 あの日に何度も見た、彼の「にこにこ」としか形容けいようできない笑顔が脳裏によぎっていく。

 あぁ、バカだな。

あんなに自衛したのに。

他の女の子とは違う。そんな笑顔に流されたりしない。

 そう決めていたのに、最終的には彼を思い切りもてなしていた自分を思い出す。

 あぁ、本当にバカ。

 だって、立ち位置が全然違うことは知っていたから。

 最初からかなうはずがないって知っていたから。

 彼を好きになんて、なりたくなかった。なりたくなかったんだよ。


彼は、いつもと変わらなかった。

少なくとも私の目には、ずっとそう見えていた。

あの日見た笑顔を周囲に振りまいて、楽しそうにしてた。

だから、私はそんな彼を横目で一瞥しながら、部活に向かうために教室を後にする。

今日の練習メニューはなんだっけ。

一年生に、ボール運びを手伝ってもらわないとな。

部長は、今日は委員会で遅いんだっけ。

そんなことをつらつら考えながら、階段を下りて。

だから、彼が私の後を追いかけてきていたことなんて、ちっとも気づかなかったのだ。

「なんで、無視すんの!」

「えっ、なに」

 突然後ろから叫ばれて、片腕をとられて、思わず転びそうになる。

 え、何ごとなの。

 振り返れば、見たことのないような切羽詰まったような久坂くんがいる。

 そんな顔、あの嵐の日にも見たことないんだけど。

「どうしたの、なに? 野球部に用事かな」

「違う、大野さんに用事あんの。なんで、ずっと俺のこと無視するの」

「無視してないよ」

「嘘だ、教室で挨拶しても返してくれないじゃん。話しかけようとしてると逃げるし!

 さっきだって目が合ったのに、無視してった」

「それはいつの話かなぁ……」

 正直、身に覚えがなさすぎる。

「今週始まってから毎日!今日、もう金曜日だよ」

 そんな毎日、だとは。どうしよう、微塵も覚えがない。

 嘘、目が合ったときとかあった?

 私が困っていると、久坂くんもしょんぼりし始める。

 うぅ、だから、その処世術やめようよ。私は、もう抵抗できないんだよ。

「俺のこと、迷惑だったのかな」

「え?」

「そりゃ、色々無理言った自覚はあるけど、でも仲良くなれたと思ってた。

昨日、ようやくスマホ直ったから、ID交換したくて、話しかけるきっかけずっと探してた」

「えっと、ごめん。私、まだガラケーだから交換はできないかな」

「そうじゃなくって! それはじゃあ、メールでもいいから!

そうじゃなくて、俺が、話しかけると迷惑なのか、って」

「えーと、迷惑じゃないけど」

「けど?」

「久坂くんは、迷惑じゃないの?」

 何度も言うようだけど、私はクラスでも目立たない地味な子で。

 久坂くんのような、派手は人達とは対極にいる存在だと思うんだけどな。

 私は大して困らないけど、私みたいなのが近くにいると困るのは久坂くんの方じゃないかな。

 そういったことを、言葉を尽くして説明してみる。

 だって、あまりにも彼が、理解できないって顔をしているから。

 でも、説明は功を奏さなかった。ちなみに、「功を奏する」って言葉の意味も伝わらなかった。

「え、俺、大野さんとあの日話して、めっちゃ楽しかったんだけど。

 スマホなくても、あんなに楽しいって、大野さんてやっぱすげーな、って思ってた」

「すごくないよ。むしろ、どれだけスマホ依存なのかな」

「なんか、ノリさえよければいい、って感じだからかな。だから、また大野さんと話したいな、って。

 てかさ、名前で呼んでいい?」

「知ってるの?」

「うん、月曜に調べた。咲花さくかちゃん、でしょ?」

「……さすがに、高校生になって「ちゃん」付けは恥ずかしいかな」

「じゃあ、咲花って呼ぶ」

「大野さん、でいいんだけど」

「やだー。俺も、創人そうとって呼んでー」

「それも遠慮します」

 私がそう答えると、やっぱ楽しいなー、なんて言って、彼は笑った。


 そうして、私と彼の日常は、少しずつ色を変えていくのだ。

 見えない糸で織りあげられる、布のように。




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― 新着の感想 ―
[一言]  軽い男の方がモテルかもしれません。
2018/01/10 08:44 退会済み
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