File:09 レポート
すみません、昨日の内に投稿する予定だったのですが、睡魔に負けてしまいました。
カーテンを潜る様にして入ってきた光が、ログアウトしてきた社の目覚めを手助けするかの様に、部屋に温かく照らす。
社はベッド型装置の縁に手を掛け、委ねていた身をもたげる。
軋む事も無い事からこの装置の頑丈性が伺える。
時刻を確認した。
─────14時21分19秒。
社は足早に一先ずダイニングへと向かった。
ダイニングでは結と葉紅が楽しそうに話していた。
少し申し訳ない気持ちに苛まれたが。
「すみません、遅くなりましたが昼食としましょう。
遅くなったお詫びと言っては何ですが、昼食のリクエストを受けたいと思います。
家にある物で作れる物と言う言葉が付きますが」
両者は社が話に水を指した事を何とも思っていない様子であった。
「はい!はぃ、はぁい!!」
リクエストがある人は挙手する様に、等と言ったつもりは無かったのですが、と社は思いいつもの事か、と思惑を凪ぎ社は葉紅に手を向ける。
「たまごふわふわが良いと思います」
実年齢にそぐわぬ程若々しい、いや幼い人である。
まったく、と息をつき脳内に眠る情報を引き出す為に少し、瞑目する。
静かに、死す様に深く、深く。
「静岡県の袋井市の郷土料理でしたか。
いつもながら、何処でこの様な食べ物の知識を得てくるのやら。
結は何かありますか?」
淡々と引き出してきた情報を開示する。
「私は特にないので葉紅さんの言っていたものを作ってあげて下さい」
「そうですか。
では、早速取り掛かりますので少々お待ちください」
そう言って社はキッチンへと向かった。
◆◇◆◇◆
社はまず鍋に水を張り、鰹と昆布で出汁を取る。その間だに卵を数個容器に割入れる、卵黄と卵白を別の容器を取り出し、卵一つ分を残し分ける。出汁が取れる迄に鶏のササミ、しめじ、プチトマトを取り出し、プチトマトを半分に、しめじは石づきをとり、汚れを落とした後にほぐす。次に土鍋を出し、取った出汁の半分を移し塩と醤油で味を整えすまし汁を作り火に掛けておく、そこからおたまで適当にすまし汁を卵黄だけを分け入れた容器に移し合わせる。鍋に残った出汁も火に掛け、ほぐしたしめじを入れ 、ササミは筋を取りそぎ切りにし、胡椒で下味をつけ片栗粉を薄くまぶし、沸騰した鍋に入れ、半分に切ったプチトマトも鍋に入れる。
塩、鶏ガラスープ等で味を整え、一つ分取っていた卵をとき入れ、程良いタイミングで鶏が固くならない様に火を止める。別容器に分けて置いた卵白を泡立て器で泡立て、卵黄とすまし汁を合わせておいたものに少しだけ入れ、それが混ざったらそれを泡立てた卵白の入った容器に全て加えていく。火に掛けておいたすまし汁が沸騰したら火を止め、それを土鍋へ全て流し込み、10秒程蓋を閉める。
鍋敷きと土鍋、人数分のスープをお盆に乗せダイニングに運ぶ。
◆◇◆◇◆
「昼食が出来ました。
もし宜しければ、扉を開けて頂けませんか?」
「はーい、只今」
バタバタと音をたて、待ってました!
と、言わん勢いて扉を開く。
ありがとう御座いますと一礼し、テーブルにお盆を置き、鍋敷きをテーブルの中央に置きその上に土鍋をのせた。
スープを各人の前に並べ、社は一度お盆をキッチンに置きに戻るが、直ぐにダイニングに帰ってくる。
「それでは頂きましょうか」
各人それぞれ、食事を進めてゆく。
幾らか食べ進めると葉紅が問うた。
「そう言えば、会くん。
今日はどうしてお昼ご飯遅くなったの?」
それは当然の疑問であったのかもしれない。
社は特別な理由でもない限り時間はきっちりと守る人間である。
と言うのが周知であったからだ。
「いえ、情けないお話なのですが、仕事として頼まれた事とは言えど、良い具合いに年齢を重ねているにも関わらず、ゲーム内での戦闘に熱中してしまいまして、この様な時刻に成ってしまいました。」
「戦闘、で御座いますか?
と言う事はその敵はよっぽど強かったのですね。
何せ、兄さんに戦闘と言わせるに足る実力を見せたのですから」
結は少し身を乗り出し興味深々の御様子である。
「そうですね。
ゲーム内の私では少しばかり策を弄しなければならない程には」
社の言葉に違和感を感じたのだろう。
葉紅が食い気味に聞いていた。
「ゲーム内の私では、ね。
会くん、その言い方じゃあ、ゲーム内のアバターの方が現実の肉体よりも、弱い様に聞こえるよぉ」
社は身震いをする。
正直な事を言うと社は葉紅の事が得意ではない。
苦手意識の方が強い。
自身の一生を掛け研鑽したとしても、葉紅の1年に勝てる気がまるでしない。
それは謙遜などではなく。
実感であった。
社が最も尊敬している人物であり、恐怖している人物であり、到達出来ない地点に居る人物であった。
だからこそ、平静を保つ。
「えぇ、ゲーム内での私はマイナス補正を与えられていますから」
結も社のその言葉には食いついた。
何せその言葉はある一つの事実を示しているのだから。
「ぇ、どういう事ですか、兄さん。
ステータスにマイナス補正が掛かるなんて事ある筈か─────いえ【Defect】ですか。
いや、でもあの種族は動けない筈です。
私も試しましたから、間違いありません」
「その種族は動けなかっただけだよ、結ちゃん」
葉紅の言葉に結はむむっと顔を顰めた。
「そう、ですか。
教えては下さらなそうなので、兄さんが何処で、何と戦闘していたのかを、聞かせて欲しいです」
最後に結は、先程のリクエストです。
と、付け加えた。
「詳しくは言いませんが、南の森で大蛇と少し戦闘をしていました」
「やはりそうでしたか、兄さん。
実はβテスター時代のフレンドから、兄さんが帰宅する前に動画が届いたのですよ。
その動画には到底【人族】とは思えない動きをする人物が映っていたのです。
大蛇の攻撃を避け続ける長い黒髪を後ろで束ね、それを振り乱しながら動く男性とも、女性とも見分けの付かない人物。
装備は一式初期配布の物。
防具は何故か下しか着用していない様に見え、上は良く分からないもので覆っている。
けれど、この後フレンドは倒木に巻き込まれ、死に戻りしました。
なので、そこで動画は途切れてしまっているのですが、私はその人物の下半部の衣服に覚えがありました。
さて、誰で御座いましょう」
結の中で答えはもう既に決まっている様に思えて成らないが、言っても仕方の無い事である。
と、一蹴してしまう事が出来れば楽だったのだが、そうもいかないか、と嘆息する。
◆◇◆◇◆
その後、結に質問責めにされ、答えても差し支えの無さそうなことだけ、無難に答え、騒ぎが起こりそうな事は省き伝えた。
その後は食器を片し、夕食の為の下拵えをする。
清に告げた時刻に成るまでには少しばかり時間が早いがログインする事とした。
ログアウトした時に借りた宿の部屋にそのままログイン出来た。
宿自体にそう言った機能があるのかも知れない。
少し早くログイン出来たのであれば、と社は社長に提出する為の調査書の製作に移り始める。
調査書
このVRと言う世界は終始自由度が非常に高く、現実世界よりも時間の流れが早い。
この世界で出来る事は戦闘と言ったゲーム的遊び方だけでなく、生産、製作、趣味などと言った事も簡単に楽しめます。
その上この世界で1日趣味に没頭使用とも、現実世界では1時間しか過ぎないと言うのですから、これ程までに心満たされる充実がありましょうか。
そこで私が提案しますは、こちらにも会社の支部を作るという事です。
より効率的に業務が行えると確信致しております。
そこで大きく問題が二つ。
一つ、私はまだ支部と出来る場所を確保するに至っていない事。
二つ、こちらで打ち込んだテキスト等が閲覧されている可能性。
一つめに関してましては土地を購入しないとならない為、多大なお金が必要となってきます。
なので、どうしてもコツコツと貯めるしかありません。
二つめは私の見解としましては問題無いと考えています。
ですので、可能性と書いている次第です。
『ぴんぽぱぽ〜ん』
社は調査書の制作の手を止める。
『緊急告知、緊急告知。
現実時間で明日朝9時より1時間程のアップデートをする予定です。
それが終わり次第、直ぐにログインする事をあくまで私はお勧めします。
参加する、しないは勿論自由ですが。
第1回目のイベントを開催しますので、奮って御参加頂ければ嬉しいです。』
掲示板みたいな事もしてみたいのですが、書き方か分からない(無能)。
あと、適当過ぎる料理描写については、私が殆ど料理しない為の弊害ですので、御容赦下さい。
ここまで御付き合い下さりありがとう御座います。




