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File:35 現実

予定している連日投稿は一先ずこの話で終了となりますが、おいおい続けて行ければと考えていますので、投稿された事に気付かれました方は、目を通して頂けますと幸いです。

 足を1つ前へ出し、デスクへと向かう。

 電信の鈍さを加味し、一歩一歩踏み締めるように前進する。

 差程広い部屋でもない、モノの数歩でデスクに付随した椅子に手が届くだろう。

 けれども、その数歩、モノの数歩が途方もなく遠く感じられる。

 距離的な話ではなく、時間的な問題だ。

 緩慢で、怠惰に流れる時がそう感じさせるのだ、鈍く低い音を響かせ、時計の秒針が時が進む事を如実に伝える。


 時間的に言うならばまもなく、感覚的に言うなれば果てしない距離を跨ぎ、デスクに備え付けられた椅子に手を掛け、腰を落とす。

 ベットから起き上がり、デスクに着くまでの単純な、普段ならば意にも止めない様な所作だ。

 気怠い身体がそれだけの事を、これだけの事に感じさせる。


 椅子に着いた社はこれからの予定を組み上げてゆく。

 時計に視線をやる。

 夕飯の支度をするにはまだ三十分から一時間程早いだろうかと考え、PCを起動しさせる。

 起動するまでの些細な時間。

 目蓋を落とし、報告するに値するものの凡そを頭の中に羅列してゆく。



 ゲーム内での時間。

 〈Unfinished Future Online〉では現実時間での一時間をゲーム内での一日としている。

 これは玩具として有用であるか否か。

 明確に言い切ることは出来ないが現実での一日=ゲーム内での二十四日はどう考えても過剰であるという事は確かである。

 仮にある社会人Aが一日=一日のもので遊ぶ場合に一日置きに昼夜逆転等のギミックが存在しないものである場合は偏りが出来てしまい不平不満が出るだろう。

 そうであるにしてもだ、一日=三、四日程度が適正であると言える。飽くまでも主観を私に置いた場合には、と付け加える必要があるが。そう呈した場合においても一日=二十四日は〈Unfinished Future Online〉と言うゲームの寿命を縮めるだけの行為に他ならない。それがどれだけ良く出来たモノであろうと、多くの者が心血を注ごうとも飽く時がくる。ことの摂理である。

 ただこれは事ゲーム、遊戯においた場合の話であると言うのは相違ないだろう。何せ、現代社会における活動の拠点をここで言う所の現実の24倍で進む電子的仮想空間に置き換える事が出来たならば、その有用性を語るまでもないだろう。明確に現在の社会形態が崩壊、崩落し、圧倒的なまでに確変する事は予想に難くない。会社、人々が会う社のその多くは必要性を失い、実体的、肉体的、技術的な職場ばかりが形を残し、衰退する。いや、この様に言えば悪しき事に聞こえるが、実質的な効率で言えば格段に向上する事は間違いない、土地的な面でも、会社を必要としなくなった企業団体が電子的仮想空間に拠点のその多くを移す事により自然を増やす事も、空いた土地に有用な建造物を建てる事も可能だ。当然、良き事ばかりであるとは言い難いと言う事もまた当然の有り様だ。困惑を招く事は間違いない、倒錯をする事も相違ない。であるとしても、世界の移り変わりとはそういうものである。割り切っているのではない、諦観などではない。ただ、事実として変化とは鎮座しているのだ。否、事実として存在した事柄に我々が気付き、知る事で人間が移りゆく事を人が変化した、と捉えているに過ぎない。過去の偉人等により何度人は無知を知ったか。月同様に地球は球状であり、地球と言う天体には重力が存在し、全ての天体は地球を中心に廻っているのではなく地球もまた廻っている内の一つに過ぎない。神であった所の雷は人に扱えるモノに過ぎず、地震は神の怒りにあらず地層の軋轢によるものである。それらのモノが変わったのではなく、それを観測認知する者が知り、認識を改め、皆が知ったのである。であるならば、変化したのは事実や現象でなく、変化したのは人に他ならない。



 逸れた思考を切り離す様に社は目蓋をゆるりと持ち上げる。

 けれども、PCのモニターは眼を閉じる前と変わらず、暗いままであった。

 起動出来ていなかったのだろうか、と考えるも開いた目に映る光景は間違いなく社がPCを起動した事を証明している。

 困惑に任せ迷々と思考を右往左往させているとゆるりゆるりとモニターが白み始める。

 ゆったりとスロー再生されているかの様にのそのそと、時間が流れているのだと社に認識させる。

 その現象が確信させる。

 尾を引いていた睡魔を振り切り、怠けていた脳細胞が目覚め思考を明瞭なものとする。


 迷々と思考を低迷させる感情を振り払う様に一つ永く息を吐く。

 そのたった一つの行動が、社を今までに溜めた〈Unfinished Future Online〉と言うゲームに対しての知識、行動、要素、疑問、矛盾と言った様々なモノに漬ける、浸ける。

 無意識的に行われている筈の呼吸も忘れ、溺れる。

 溜められたモノが全てを理解し融解する事は敵わない。

 紐解くには足りな過ぎるが故に、けれど瓦解する様に意図的に破壊された様なパズルが、成り立つモノとして社の中で更正されてゆく。

 その目まぐるしい程の情報量に本来なら人は卒倒するだろう。

 脳、を駆け巡るそれらの量、速度に耐えきれず、回路を燃やす様に跳ね回る虚実の様な飽くなき真実に思考を放棄した事だろう。

 けれど、それは本来ならばと言うだけである。

 現在ならば、どうだ。

 常軌を逸する事を受け入れる事は死である。

 それ迄の自身の常識を殺し、新たなモノへと変貌せざる得なくさせる。

 一つの気付きはそれ迄と同じ空気を吸えなくする。

 唯一つ、たった一つ、1%違うだけだそこには住めなくなる。


 社が特別と言う訳ではない。

 誰しもがそうであるし、誰しもがそうあれる訳ではない。

 只、この場合で言うならば、社が気付き知っただけ。

 気付く様に配置された事実に逸早く気付いただけ。

 知る事を前提とされた、少し複雑な報せを知っただけ。


 何事にも仕掛ける側と仕掛けられる側ある。

 例え、その対象が見える見えない関わらず。


 いつもよりも幾分か熱を帯びた頭を休め社は目的があり起動したPCを操作する事を放棄し、再び目蓋を落とす。

 長考する為ではなく、冷やす。


 デスクの端に置かれた端末に時代に取り残された老人的速度で内容を打ち込み社は結と葉紅に連絡を飛ばす。

 今日は夕食を用意出来ない旨とそれに対する対応策を同封し、それがいつまで続くのかを綴る。

 何故は綴らない、期限は明日の朝までに肉体との齟齬を無くす。そう決したからだ。


 思考と動作を繰り返す。

 出した電令が神経を伝い、各部に届き動作する。

 明らかに、明瞭に以前に比べ加速した思考に徐々に身体を慣らしてゆく。

 引かれる皮膚が、伸縮する筋肉が、芯なる骨が引き裂け破壊され崩壊しない様に。

 思考速度のままに身体を動作させない様に、神経にゆっくりとした動きをさせる様に改めて電令を送り伝え、少し又少しと流速 を上げてゆく。

 加速する身体は鮮明に軋み上げ、喘鳴する。

 痛み、それは確かに社が、社の身体がその水準で行動動作し続けるのは不可能であると危笛を鳴らしているのだ。

 当然だ、その動く肉は明確に人類、人間、延いては人の領分を超えた速度あると断言しても良い。

 それにより未だ身体が散っていないのは一般的な人とは隔絶した鍛え上げられた肉体であるからだろう。

 が、社はそこで行動を徐々に減速してゆく。

 一般的な人らしき速度で動作を幾度か繰り返す。



 ◆◇◆◇◆



 どれ程の時間を有しただろうか。

 一瞬ではない、悠久と言える程でも、又ない。

 けれど、加減する思考的世界、肉体的世界が余りにも異質である事は言うまでもない。

 それが容易に時間的、空間的感覚を狂わせる事も又、言うまでもない。

 しかし、手に掛けたカーテンの先の光景が凡その時刻を推測させる。

 8月である事を加味して未だ上がりきらない太陽、午前4時から5時過ぎ辺りの時間であると考えられる。



 デスクに置かれた端末が連絡があった事を報せる様に明滅する。

 一般的な人的行動感覚で社は肉体を動作させ、妹である結からのだと思しき連絡を確認する。



『おはようございます。兄さん。

 御加減は如何でしょうか。

 大丈夫であると私は信じています。


 話は変わってしまうのですが、UFOのイベント集計及び、その他諸々による不具合についての運営からのお詫び含め、事情報告の連絡は御覧になられましたでしょうか。

 様々な考察がネット民には成されていますが、私としましては───考える事なく寝てしまいましたが。

 兄さんはどう考えられますか。

 面白そうな事であれば私にも教えて下さいまし。

 それは冗談にしましてもこれからのUFOの進展や展望を考える上では閲覧していて損はないと考えます。

 私一個人の考えであると言う事は拭えない事実であるのですが、兄さんにも幾許かは楽しんで頂けるのではないかと考える次第です』



 後回しにしていた事に関しての事柄が其処には記載されていた。運営からの連絡。

 当然あって然るべき事が起きたのである。届かないわけがない。

 社自身の現状は異例であるにしても、UFOというゲームから強制終了させられたのだ。それだけでもそう言った処置が施されている事が前提であり、不特定多数の人に提供する企画てあるならば、手を打たないという事は有り得ない事である。そう言った方策を取ったとしても絶対的に不平不満が盛れる事も間違いなく、それらに対する折り合いをどうして着けるのかが、今後の鍵である事も又間違いない。


 結から届いた連絡へはもう体調は回復した旨と朝食の時刻を記載し返信する。

 それでも尚明滅する端末が、運営からの連絡を報せる。



『〈Unfinished Future Online〉運営部総括兼社長のfhp@y:ypgiyd7です。あっ、名乗ろうとしたら部下に規制掛けられた。しゃあないか、しゃあないのか。我々の活動拠点や人員、又私を探り当て用としている輩も少なくないし、しゃあないのだ。なので仮に赤幼(せきよう)と名乗る事としましょう。仮名の由来は最近部下に理性の抑制が効かない"赤子""幼児"だ等と罵倒されたからです。反省しています。


 自己紹介も程々に扠置き、今回のイベント時の強制終了案件についての謝罪及び、その他諸々の為に連絡を飛ばした次第です。

 では、誤るからメぇかっぽじって観ろよ!

 これが私の全力の謝罪だ!!』


 3枚の土下座画像が添付されている。

 それらは姿形は当然ながら、性別、読み取れる雰囲気までもが到底同一人物であるとは考えられない程までに別人の画像であった。

 社にはその画像は確かに全力であると思えた。

 それが謝罪と言った意味合いではなく、本人特定されない事へ対してであると言う事を追記する必要があるが。


『どう? 迫真だしょぉ。

 変装して別日に分けて時間かけて事前に撮って置いた奴。

 こういう事があるかも知れないと予知していた私は賢い。

 さて、謝罪はしましたので諸々の報告と行きましょう。

 今回の強制終了と言う処置についての詳しい事情を申し上げる事は敵いませんが、簡素ながらお伝えすると。

 致命的突発性不具合により、皆様が必死こいて齷齪積んだ努力が、水泡へと帰す所でしたのであの様な対応を取りました。


 あるぅぇ?謝罪等必要な買ったのでは?

 まぁ、良いとしましょうよぉ。

 さて、強制終了につきましては聡明な皆様ならば御理解頂ける事と存じ上げます。

 決して声を荒らげる事なく、又〈Unfinished Future Online〉と言う世界をお楽しみ下さい。


 続きまして、今イベントの報酬についてお話しましょう。

 聞きたいですよねぇ。大切な事ですよね。

 ふむふむ、聞こえてくるようです。分かりますとも、ええ。では、お伝えします。

 本来は開始と同様に広間にどどんと表示する予定だったのですが、個々人に運営より連絡が届きますので其処にランキングの自己順位と報酬の添付しますので詳しくは再開されたUFOで。


 こんなに長い連絡誰も読まないでしょうよ。

 少なくとも私は読まないね。


 まだもう少しお付き合い下さい。

 いえ、最後に一つ。

 〈Unfinished Future Online〉は一つの世界です。

 そこに生存する生物は個々に考え、思い行動します。

 アナタ方と変らず、生命として活動しています。

 いや、世界に取ってアナタ達こそが異物である事を履違えません様に。


 痛った! 何するのさぁ。

 ぇえ?喋り過ぎ?

 いや、だってさぁ。進行がトロ過ぎで見てても一部しか面白くないんだもの、よっと。

 ほら、これとかすっごく面白かったよ。

 てか、おまいらが散々言ってたの使いこなしてる奴だよ。はいぃ、おまいらのじゃこさが露見しましたぁ。

 けけ、ぐはぁ。ぼぉ、暴力はイケナインダあぁ。


 再起手伝えって?

 私ってば社長だよ。とってもエロい人なんだよ。

 痛いってば、全くもう。人使い荒いなチミ達は。


 あああああいあい、分かった分かる。

 参加させて頂きますから、ほら散った散った。髪がじゃないよ!

 ふぅ、あぁ、ココア冷めちゃった。


 あ、音声入力付けっぱだった。

 取り直しじゃ──────いっか。

 このまま送ったろ。

 それじゃ、皆様さようなら。











































 それでは良きUnfinished Future Lifeを』

ここまで御付き合い下さり有難う存じ上げます。


皆様に忘れられぬ様に精進したいと考えています。

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