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30/35

File:30 伝染

前話から一月過ぎ、二月過ぎ、一年過ぎ、二年過ぎ。

新元号、令和と相成りましたが皆様はいかがお過ごしでしょうか。

私は相変わらず、と言ったところでしょうか。

季節の変わり目、元号の変わり目と言う事で、忘れ去られいる事でしょうが、もし、目に止めて頂けたのならば喜ばしい限りです。


『あぁ、待ちました?

 私は待ち望んでいましたよ。

 はてさて、現在の皆さまは何処にいらっしゃるのでしょう。

 野外、内。

 どちらでも良いですけど。

 これから皆さまをランダムで、適当な場所に飛ばしますので各自敵を見つけ、戦闘を開始して行ってくださいね。

 対象以外はカウントしませんので悪しからず。

 あぁ、建物内は進入禁止となっておりますので。

 それではお楽しみを』

 プツン、と音を立てて放送は終了した。


 支度を終えた清が社に寄る。

「社会様、お気を付けて」


「えぇ、清もお気を付けて」


「社会様以外に私は揺らぎません」

 社はその言葉を聞き届けると虚空だけを残し、消えた。


「私はそちら側の人間ではないので、転送されませんか。

 仕方ありませんね、すぐさま御迎えに上がりますね、社会様」

 社が転送された静かな部屋でそう呟いて、寝室へと歩を向ける。


「私も行って来ます。

 大人しく待って居て下さい」



 ◆◇◆◇◆



 広場。

 社は自身が思い描いていたよりも余程近場に飛ばされた事に驚いたが周囲を見回し息をつく。

 それは主催者の根の腐り様が予想道理過ぎたからにほかならない。

 こちらの方が外れて欲しかった、と言う念は届かなかったのだと落胆する。

 届く相手もいないと思い直し、思考を切り替える。

 周囲にいるのは20人程。

 互いに視線を目まぐるしく動かしている事を鑑みると、敗者側はPvPである事を予め知らされていたのだと思えた。

 勿論、自身の様に予測していた者がいないと考えないが、この場にはいないだろうと思考の片隅に置く。

 社は周囲の状況に不当な配分であると抗議したくなるのを抑える。

 それはそうだ、一人頭、2、3人が妥当な所なのだから。

 実力を考慮しなければ、と言う言葉が文頭に付くのは言うまでもない。




 社は周囲の様子を度外視に黙々と考察を続けるが、刺青が社に無いと気が付いた者が接近して来る。

 社に自身が近付いている事を気づかれているとは露とも知らず、ナイフを構え人の合間を縫う様にして1歩、又1歩。

 しかし、どうしたものかと社は頭を悩ませる。

 社自身には見えにくく、バレにくいと言えど周囲からは酷く不自然な行動をしている人物がいるように写っているのだろう。

 その為か周囲も社が相手、獲物である事に気が付き始め、競う様に寄ってくる。


「おっ、彼奴か。1人頂き!」

 騒ぎ立てる馬鹿もいるというのだから、目も当てられない状況になるまではそうかからなかった。

 その言葉を皮切りに他の者など目も暮れる事なく、一目散に社の元へ駆ける者が多発する始末。

 小さく溜息をつき、社は素知らぬ顔でその場に佇む。



「ぐぅ、いっ、ぃたひ、痛い痛い」

 接近してきた者の1人が声を上げて歩が止まる。

 その声と状態に接近していたもの達が戸惑い始める。

 身体中、至る所から血が滴る。

 戸惑い、狼狽え、後退り始める。

 声を上げた者の悲痛な声が強まってゆく。

 それを聞き更に人は離れていく。

 無抵抗な助けを求める声は意味を介さぬ叫びへと変貌してゆく。

 何かがその人物の身体に食い込む。

 食い込む。











 ()が舞う。


 ()が舞う。


 ()が舞う。




 (粒子)が舞、掻き消える。







 硬直。

 静寂。



「ぁあ?え?ふぇ?」

 理解が及ばないとばかりに1人が声を上げ、腰が砕けた様に地に落ちた。

 しかし、次第にその者は息を荒げ、次第に整理されてゆく情報に恐怖を抱き始める。

 今はもう粒子となり消えた、撒き散らされた血肉は人の恐怖心を煽るには十分であった。

 否、過剰であった。

 同様の状態に陥る者が多数出始める。


「あぁ、ぁひあ、たすけ、助けて」

 腰が抜け立てないのか這いずり、焦点の合わぬ双眸を右往左往させ、誰にとも無く懇願する。

 その姿は余りにも憐れで、滑稽であった。

 理解が及ばないばかりに思考を放棄し、これまでに幾度となく確認、目撃してきたはずのアバターの死に、これ程までの恐怖を何故覚えなければならないのか。

 確かに社にもこれが如何に凄惨であるかは、容易に理解出来るけれど、それだけ。

 しかして、社にとってはそれだけの事であろうとも、ただ一言で容易に恐怖は伝染する。

 誰もがそう考えている中で叫ばれた言葉。

 誰かがそうしてくれると信じている言葉。

 誰もが望んでいる事柄。

 自己では無く他者に頼る、望む、恐れ、臆病さ。

 誰もが理解する。

 自身を助ける者はいない、と。

 けれど、とは言えど、自身がそれになりうる事は出来ない。

 自己を守る為に思考を回し、他者の恐怖につられ、逃げ出そうにも足は立たず、醜く、浅ましく這いずる。

 その中で1人佇む社は息を付いて、踵を返す。

 周囲からは安堵の息が漏れる。

 それは全貌は理解出来ずとも社が、事の次第に関わっている事は言われずとも、理解出来ていた者達からのものであった。

 その様子に社は隠す事無く溜息をつく他なかった。


 1歩、2歩。

 社の視界に入る事すらなくなった者達が慌ただしく、騒ぎ立てる、叫ぶ、裂ける、去る。

 次々と敗退してゆく者達を確認する事もなく、社は歩を重ねる。

 が、社は不意に歩を止める。

 規律等のいうものが、成り立ちはしないその場所で、一律の澄んだ鈴の音が喧騒鳴り止まぬ中、鳴り響いたからだ。


「何や、えらぃ悪趣味やなぁ。お兄はん」

 咋に作られた口調。

 あえて、煽る様にと選ばれた口調。

 歩を止めてしまった事に嫌悪を覚え、又、歩を重ねる。


「お兄はん、お兄はん、そこのスーツのお兄はん、自分やぁ。

 それとも何や、悪趣味言われたんがそないに不愉快やったんやろか?

 うち、自分が思うてしもた事はすぐ口に出るんやわぁ。

 せやから謝るさかい、堪忍してぇやぁ。

 なぁ、よろしおす?」

 社は振り返る。

 これ以上絡まれては適わないと判断を下したからだ。

 鈴の音の鳴る方へと視線を向ける。

 思いの外遠い事に驚いたが、取り繕い見分する。

 遠目でも分かる程に美しく、流麗であった。

 まだ、年端もいかない位の背丈には似つかわしくない様に思える雰囲気が、より一層そう思わせる。

 装いは和装。

 紅く華やかな鼻緒の下駄。

 藤をあしらった小紫の浴衣。

 帯は白から京紫へと上から徐々にグラデーションしてゆく、模様は同様に藤をあしらい、金色の帯留めが締まりよく魅せる。


「お兄はん、そないうちの事熱心に見張って。

 何や、うちに見惚れてもうたんか?

 冗談や、そないに睨まんでもよろしいやろ。

 せやけど、見るんやたらもっと近こう寄ったらよろしおす。ほらぁ。」

 そう言って十代中頃の少女の様相をした人物が1歩踏みだs────すと、少女は社の眼前に立っていた。


「何や、そないに驚きはった顔して。

 うちが美人やよって腰抜けはったん?

 声も出んようやけど」

 少女は左右に振れ、社を見回す。


「いえ、すみません。

 私は貴女の事を存じ上げませんが、面識はありませんよね」


「何や、えらぃ警戒されてうち悲しいわぁ。

 せやけど、お兄はんが言いはる様に面識なんかあらへんよ。

 やけど、それがどないしはったん?」


「いえ、随分と気軽に話しかけられたものですから、知り合いなのかと。

 もし、そうであれば失礼でしょう?」


「そうでなくとも、失礼な物言いやと思いおす」

 少女は頬を膨らし、不機嫌そうに言う。


「それは失礼しました。

 それでは私は此処で失礼します」

 社はそう言って早々にその場を離れようとする。


「ぉ兄はん?

 うち、とは遊んでくれんへんの?

 あないな、悪趣味な遊び魅せられて、うちさっきから興奮しっぱなし何やけど。

 慰みてくれへんの?」

 少女は愁いを帯びた瞳を向けて訴え掛ける。


「何を仰いますか。

 私と貴女が殺り合っても何も利がありませんでしょ?」


「何言うてはるん?

 このイベント、PvPやろ?

 せやったら、目に映る人みぃんなぁ敵と違うん?」

 小首を傾げ少女は社を見上げる。


「────。

 いえ、敵とそうでない他者の違いがあるのですが」

 少女の考えなしの行動に少しばかり言葉を失う。

 が、そうも言ってられない。

 この様な明らかに、利益発生しない面倒事は回避しなければならない。

 刺青があるならば、まだしもそれすらない。

 あったとしても極力関わりを、持ちたい類の相手ではない。


「そない?

 ぁあ、墨のことやろか」

 少女は"ぽん"と一つ手を打ち、微笑む。


「せやけど、関係あらへんわぁ。

 うち、お兄はんと殺し合い(愛し合い)たいだけやよって、なぁ」

 容姿が整っていて真に美しいと思えるであろう少女の微笑み。

 然して、そこに感じるのは異常性。

 それは異常なまでの狂気。

 それは異常なまでの快楽への執着。

 故の無為への無頓着さ。

 それは唯の────。




 歪み(ひずみ)歪み(ゆがみ)



 であった。

 それは規律や利益、結果を重んじる社には到底、理解が及ばぬ領域。

 違いない、相違ない。

 それは明らかなまでの解離。


「無益な事は避けたいのですが、御理解頂けませんか?」

 それが届く願いでは無い事を承知で申し出る。


「何や、そないにけち臭い事言わんとってや。

 千年の恋も覚めてしまうよって、只、お兄はんを殺してしまいそうやわぁ。

 せやけど、そないに勿体無いこともあらへんよって、うちのこの昂揚()を、火照り()を、素直に受け取って殺されて(慰みて)はくれへんやろか?」

 少女は肢体を艶めかしくくねらせ、目元に滴を輝かせる。

 少女は紅潮し、言葉を紡ぐ。

 他者がその光景を見れば宛ら、告白の場面にも見えなくはないだろう。

 けれど、それは愛の告白などとは遠影を踏む事が及ばぬ様に、程遠い。

 死の宣告である。


「物騒な思考をお持ちの様で。

 しかし、申し訳ない事にそれに私を巻き込まないで頂きたい。

 私は穏便に、平穏に、平坦に過して居たいのですが、叶えては頂けませんか?」


「平和な日々なぁ?

 ほんまにそないな事、望んではいやせんやろ、お兄はん?

 この惨状をみれば、うちやのぉうてもよぉ分かる事やよって、今更否定せんでもよろしおす」

 この少女は何を言っているのか社は頭を悩ませる。

 この惨状は明らかに自業自得なのだ。

 仕掛け人が社である事は否定の仕様のない事実であるが、火に入る蟲の如く考えのない行動をとったのは間違いなく、彼、彼女らなのだから責められるのは門違いも良い所なのである。

 心の臓が嫌な音を奏でる。


「ほな、うちがてぇ引いたるさかい、そない嫌悪せんでもよろしおすなぁ」

 諦念、これ以上は只無益に時間を消費すると言う、最も忌避すべき事に直結するであろう事は言うまでもない。

 であるならば、いっそ要件を聞き入れるべきかと思考する。

 思惑に乗せられている様で気後れするが。

 ままならない。


「はぁ、分かりました。

 ですが、極力無益な事は避けたいので時間制限を設けましょう。

 そうですね、3分でいかがでしょう」


「何や、お兄はんやっぱり優しいわぁ。

 うちと180秒も遊んでくれはるなんて。

 途中で足腰立たへんよぉなったら嫌どすぇ」

 少女は頬を伝う滴を手巾を取り出し拭う。

 背に奔る感覚に社は数歩後退する。



 一足。



 その場でステップを踏む様に少女は掻き消えた。

 否、舞うかの様に社が張っていた糸を潜り抜け、距離を縮める。

 社が目を奪われ、たった一足分動く間の出来事。

 圧倒的なまでの速度感の違い。

 これ程まで違いが生まれているのはどういう事なのか。

 社は思考する。

 思考速度を加速させる。

 自身と少女の違い。


 名前、性別、年齢、種族、性格、性質、思考、行動、成育、環境、住所、身長、体重、骨格、理念、動機、職業、学歴、歩幅、歩速、視力、聴覚、触覚、味覚、嗅覚、習慣、経験、家族、人称、主義、思想─────────。


 考え出せば幾らでも湧き出てくるそれを羅列するのは無駄としか言い様がない。

 一卵性双生児ですら違いが生まれるのだ。

 DNAによる情報に差異が差程ないと言うのにだ。

 であるならば、自身と少女には違いがあって然るべき事、生まれた当初から何万、何億の違いを抱えているのだ。

 今更思い悩むのも馬鹿らしい。

 とは言えど、埋め合わせは少なからず必要となる事は言うまでもない。

 ならば、何を隙間に詰める?

 何を詰める事が出来る?

 短所は無くすべきか?埋め合わせるべきか?

 長所は伸ばすべきか?埋め合わせるべきか?

 一長一短としか言い様もない。

 生きる為に長所を伸ばせば、粗が出る。

 幾ら絶対的強者となれるとも、絶対的短所が露呈する。

 人類が誕生する遥か昔から存在する海の王、鮫がその良い例と言えるだろう。

 海の中では絶対的強者であり、捕食者であれど、陸地を侵すことは叶わない。

 ならば、短所を無くそうとすれば、生存戦争に打破れる。

 それが、本能的に理解出来るが故に数多の生物は短所()を顧みず、長所()を磨く。



 加速された思考の中、少女の行動が流れる。

 空を裂く様な鋭い突き。

 武道に身を置く人物である事が分かる。


「ぐふっ」

 それが自身から漏れた呻き声だと気付くのに数秒を有し、悠長に構えていた社は思考を切り替え、身に入れる次の行動を模索する。

 が、不快感と共に口内へと駆け上がって来た血液を吐き出た。

 それと同時に自己に与えられたダメージを元に、対策を練るべく思考のリソースを振分け始める。


「はぁあん、うち嬉しいわぁ。

 一突きで死なはれへんかったんは、お兄はんが初めてやよって、うち興奮少しばかり濡れそうや」

 少女はそう言ってくの字に曲がった、社の頬を今にも折れてしまいそうな程、華奢腕から伸びた細い指でなぞる。

 輪郭を沿う様に下ってゆく指は次第に赤く、赤く染まってゆき、方向を変える。

 赤く、赤く鮮やかに染まった細い指は社のキツく結ばれた唇をなぞる。

 過剰な程の赤で彩られていた唇は程良い位にまで拭われ、艶やかで、煽情的なモノが感じられる。

 少女はその社の赤で染められた指で自身の唇も彩ってゆく。


「どない、お兄はん?

 うち、綺麗に見えるやろか?

 お兄はんと同い紅で彩ったんやけど」

 自己の行為が何でも無かったかの様に、少女はその対象となった人物に語りかける。

 無邪気に、無邪気に、何者にも阻まれる事なく、勝手気ままに振舞い育ってきた子どもの様に、赴くままに行動する。


「あかぁて、あかぁて綺麗やわぁ」

 少女は赤く赤く染まった細い指を、愛おしいそうに眺め、自身の口元に運ぶと小さく開き、艶やかなピンク色の舌が顔を覗かせる。

 その舌は躊躇う事なく、細い指を彩る赤を舐め取り始める。

 赤を舐め取ってゆく度に、てらてらと細い指に唾液が絡まって、艶めかしく光を放つ。

 社はその行動を歯牙にも掛けず、淡々と、粛々と思考を回す。


「なぁ、お兄はん。

 無視せんとってなぁ、うち悲しいわぁ。

 こないに、色付いとるのに見向きもされんかったら、自信のぉなる一方や」

 少女は咋に作られた悲しげな面持ちで、社の周囲を回り、言葉をつらつらと並べる。

 3度程回ると飽きたのか社の背後で歩が止まる。

 社が飽きたのか、などと思っていられるのも束の間であった。

 背中に勢いよくのしかかられ、程良い重圧が社を襲う。


「殺されるならばともかくとして、背中にのしかかるなど、どう言った事でしょうか?」

 思考を1度止め、少女に問う。


「お兄はんが余りにも、うちの事無視するよって悲しゅうなったんどす。

 180秒も遊んでくれはる言うよって、楽しぃしとったのに全く相手しぃひん、お兄はんが悪いと違うん?」

 拗ねた様に、不貞腐れた様に、頬袋一杯に不満を溜め込み、浮いた足をバタバタと振り回す。

 それは宛ら、駄々を捏ねる子どもの様である。

 しかし、事の一端は社が思い耽り、少女を蔑ろにしたが為に起こった事である事から、甘んじて現在の状況を受け入れた。


「それは申し訳ありません。

 ですが、これほど長考しなければ、貴女には勝てない事が明らかですから」

 背にいる少女の方へ振り返り、社はキッパリと断言する。

 それは最悪の事態に陥らない為の方策。

 敗北、死ぬつもりは更々ないが、今回の場合は只勝利を据ぎ取るのではなく、遊び相手として絡まれる事がない様に、立ち回る必要がある。

 それも好奇心が非常に昂った、子どものそれを廃しながらと言う条件付き。

 どうにか他者に移せないものだろうか。


「そないにうちの事思てくれはったん。

 やっぱりお兄はんはぇえ人やわぁ」

 少女は振り向いた社の顔の方へ身を乗り出し、嬉しげに微笑んだ。


「せやけど、嘘はあきまへんなぁ。

 それとも、うちが気が付けへんとでも思われたんやろか?」

 眼前に見える少女は先程と変わらぬ微笑みを浮かべ、社の双眸を覗き込み確信を叩き付ける様に言う。


「嘘、ですか?

 それは一体何の事でしょう」

 何食わぬ顔で社は問い返す。


「そないに取り繕うたかて仕方のない事や。

 ほとほと、いとぉ無かったやろ、お兄はんの身体やったら。

 でも、おもろいわぁ」

 満足そうに少女はそう言って社の背から降りた。

 しかし、すぐさま少女は構える。

 社も熱源を感知し、身体を起こし体勢を整える。

 先程までの悠長な雰囲気は一瞬にして廃され、張り詰めた空気が漂い始める。


「誰か来はったわぁ。

 折角、うちとお兄はんが仲良う遊んでたゆうのに。

 無粋な人やなぁ」

 それは先程とは明らかに違う強ばった声音。

 それが明確な殺意を向けられているが為である事は、言うまでもない。

 既に足音が届く距離まで来ている。

 聞き慣れた歩速で鳴らされる足音。

 動く事も取り繕う事も許さぬ眼光。

 蛇に睨まれたかの様に動けぬ硬直。

 その人物はいう間に2つの動かぬ像の前に立った。
































「社会様、この女性は誰ですか?」

ここまで御付き合い下さり有難う存じ上げます。


何話かは投稿が続くと思われます。

しかし、すぐに止まる事になると考えられますので、その時は度々で申し訳御座いませんが、気長にお待ち頂ければ幸いで御座います。

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