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File:03 キャラメイク

やっとゲームらしい描写にありつけました。

今回の話は説明過多なので苦手な方は読み飛ばしてもらっても、いいのかな?





 社が同僚達に申し訳ないと思いながら帰宅すると、見計らって来たかのように宅配業者が自宅前に到着していた。


 名前を書いて荷を受け取る。


 自室に受け取った荷を置き、早めに帰宅出来たのだから夕飯は少しばかり凝ったものにしようかと思い、下準備等だけ行って自室に戻った。

 その後、自室で配線等の準備に四苦八苦しながら15時を少し回った頃に諸々を終えた。

 やっと、キャラクターメイキングが出来る、一体どのようなものにしようか。

 そのような事を逡巡しながらベッド型装置の上に横たわる。

 ベッド型装置の縁からカバーがスライドして来る。

 その一挙動を確認していた社はそれが閉まり切るとゆっくりと微睡んでいった。



 ◆◇◆◇◆


 

 ───────。


 ノイズ音が奔る。


『あぁ、コホン。

 ようこそ〈Unfinished Future Online〉の世界へ』


「えぇ、御丁寧にありがとうございます」

 これはNPCなのだろうか。

 とてもそうは思えないな、等と社は思考を回す。


『いえ、仕事ですので。

 それはそうと、社様はキャラメイクについての説明をお受けになられますか?』


 思考を切り替えこれは社長との取り決めに抵触しないかを考える。

 ゆっくりと数秒掛けて社は説明を受ける旨を伝えた。


『はい、では、まず初めにプレイヤー名を付けましょう。

 既に仮想世界が始まっているにも関わらず、社様と呼ぶのは少しばかりおかしく思えますから』


「プレイヤー名、ですか」

 社は目の前に展開されたディスプレイ、ウィンドウに漢字で社会しゃかいと打ち込んだ。

 少し考えるが、この字面で(やしろ かい)と読む者は居ないだろうと思えた。


『リアルネームと酷似していますが、宜しいですか?』


 社は短く肯定する。


『では、ここから少しばかり長ったらしい説明が続きます。

 説明の通りの順にしか行動が出来ない訳では御座いませんので御留意を。


 一つ、本来のゲーム内時間は、現実での1時間が1日に当たるのですが、この場所ではお客様が伸び伸びと、キャラメイク出来ます様に、こちらの世界の1日が現実での1秒となっております。

 尚、この設定はこの場所のみとなっておりますので、正式サービスをプレイする際には御留意下さい。


 二つ、このゲームは一応キャラメイクに常識的な範囲でしか制限が掛かっていません。

 では、どのような制限が掛かっているのかと言えば。

 性別の変更は出来ません、お客様本来の性別で遊んで下さい。

 身長の上限が250cm、下限が100cmとさせて頂いております。

 大体はこの二点で御座います。

 しかし、身長は余り弄ることをお勧めはしていません。

 どう設定しましても、操作するプレイヤーの方々が違和感を抱いてしまいます、なので玄人向けの設定になります。


 三つ、このゲームにはいくつもの種族が御座います。

 大雑把に例を上げるのであれば、人、エルフ、ドワーフと言った定番な種族から半魚人、獣人等と言った人外と呼ばれるもの迄数多くあります。

 どれを選んで頂いても構いませんが、どれを選ぶかによってステータスの補正値が違ったり、固有の特性を所持していたり、しますので、よく吟味してお選び下さい。

 しかし、現実世界で本来持ちえないパーツを持った生物をモーフとしているものは、操作が難しいです。

 例を上げるのであれば、鳥人や蟲人等といったものですね。


 四つ、服装、詰まりは初期装備に関しましては、ある程度プレイヤーの思う通りの形にする事ができます。

 ただし、性能自体は変わりませんのであくまでも見た目が変えられると言うだけの機能に御座います。

 それと、武器の見た目に関しましては此処では変えられません。

 あくまでも初期防具の見た目を任意の形に変更する事が、可能というだけですので御了承を。


 五つ、最後には成りましたがレベル、職業、ステータス、スキル、プレイヤースキルについてお話させて頂きます。

 レベルというものはゲームによってまちまちではありますが、プレイヤーレベルとスキルレベルが御座いますが、このゲームにはプレイヤーレベルが御座いません。

 尚、プレイヤーレベルと同様に職業というものも御座いません。

 ですので、初期装備の内のアイテムポーチ内には十数種類の武器を用意させて頂いております。

 尚、ポーチの収納枠は30×99となっておりますので、使用しない武器は早めに売るなりする事をお勧めします。

 次いで、ステータスというパラメーターについてですが、簡素に言えば九つ。


 STR(Strength)

 物理攻撃力や装備品の総重量に関係のある値となります。


 VIT(Vitality)

 物理防御力や持久力に関係のある値となります。


 DEX(Dexterity)

 器用さや命中力に関係のある値となります。


 AGI(Agility)

 俊敏性に関係のある値となります。


 INT(Intelligence)

 魔法等の攻撃に関係のある値となります。


 MND(Mind)

 精神力は魔法防御力や状態異常への抵抗力、MP等の数値の自然回復速度等にも関係のある値となります。


 LUK(Luck)

 運。運極振りとかロマン溢れるでしょ。


 HPの初期値は500+VIT値×10

 MPの初期値はMND値×5


 尚、このゲーム内ではステータスはお客様の通常運動能力を値0としてそこから種族補正等の補正値が加算されてゆきます。

 しかし、当ゲームにおきまして、これを上昇させる手段はスキル〈STR上昇〉等のパラメーター上昇系統のスキルを得る、もしくは装備品による上昇しかありません。

 何せこのゲームには先程言いました様に、プレイヤーレベルと呼ばれるものがありません。

 なので、このゲームにおいてレベルと言うものは、スキルレベルとプレイヤースキルとなる、と思って頂いて結構かと。

 では、スキルについてですが、それはこちら側で用意させて頂いた機能や補助であると認識して頂いて良いです。

 まず、スキルは大雑把に言えば、ESエンハンススキルASアクティブスキルPSパッシブスキルの三種類です。



 ES:取得する事で常時効果を得る事の出来るスキルの事を指します。


 AS:取得する事で能動的な意思により、武技や魔法等の機能を、MPを消費する事により行使するスキルの事を指します。


 PS:取得する事で特定条件下の元で自動的に発動されるスキルの事を指します。



 では、どの様にスキルを取得するのかですが、スキルにはそれぞれ取得条件が設定されていますので、それを満たしてた頂ければ各種スキルを得る事が可能となっております。

 詰まりは、お客様自身の行動に伴い取得する事が可能です。

 そして、スキルレベルに関しましては使用回数等で上がります。

 上がりますとより高度な事が出来る様になるなどと言ったことがあります。

 尚、スキル取得個数制限等は御座いませんが、スキルをセット出来るスロットは十個しか御座いません。

 勿論、取得して頂いたスキルはスロットにセットして頂かないと効力を発揮しません。

 それは、EP、AP、SP全てのスキルに共通する事なのでお忘れなき様に。

 最後にプレイヤースキルに付いてですがこのゲームはお客様ご自身が現実世界で可能な行動は殆ど可能で御座います。

 こちらはEP、AP、SP等と違いスロットを消費しませんので、御自由にご利用下さい。

 と、言うことで以上で御座います。


 長々と説明失礼しました。

 それでは、キャラメイクの方をお楽しみ下さい』


 丁寧な仕事振りである、と社は感心する。

「いえ、こちら側が説明を求めたのですから、感謝をすれど失礼など御座いません」

 職場の人員もこれぐらい真剣に取り組んで貰えれば、どれだけ良い事か。



 ◆◇◆◇◆



 ふむ、雑踏に種族とそれらの保有する種族特性を見ていった。

 種族。

 人族に関しては極振り用の補正構成だった。補正値〈10〉が自由に割り振れた。

 エルフはINTとMNDに〈5〉ずつ補正値が入っていた。

 動物をモチーフにした人外系統はモチーフになった動物をによって補正値違うようであった。

 しかし、共通して言える事がINTに小さいながら、マイナス補正があった。

 その代わりにVIT等の他のステータスにマイナス分の値もプラスされていた。


 しかし、社の目を引いたのは種族名【Defect(未完成)】。

 未完成と銘打たれた種族。

 完成させなければ、完成させなければいけない。

 社はそう思った。


 確かにそう思ったのもその種族を選んだ要因ではあったが、調査と言う目的の完遂に適した種族特性を持っていた事が、それを選んだ大きな要因である、と言える。


 しかし、未完成と銘打たれているだけあってステータス的不遇具合が一目で分かる。


 HP:400

 MP:100

 STR -10

 VIT -10

 DEX -5

 AGI -5

 INT -5

 MND 20

 LUK -5


 種族特性[自己解読者(グラトニー)]

 メリット:捕食能力の取得。捕食した生物の生態系の把握。擬態可能。一部箇所再現可能。一部の特性を取得。

 デメリット:満腹度の減少率十倍。一部ステータスを除きマイナス補正所持(選択者の最も値の高いステータス以外)。


 きっと種族はこの不定形な生き物?にするだろう。

 けれど、少しばかりキャラメイクをしてから選択する事としよう。

 先に選んでしまっては色々と不便な事が出てくる事が目に見えている。


 なので、無難に【人族】を選択し、EDXに補正値〈10〉を全て振った。

 順に見た目を変更していく。

 流石に現在のリアルの自身をスキャンした情報で出来ているアバターでは色々と不都合が出てくるかも知れない、と考えて要所要所に変更を加えていく。


 身長は変えないでおこう。

 髪は色は黒で背中中頃程迄の長髪にし、後ろで三つ編みにし、髪を止める物が無い事に気が付き手を止める。

 すると、銀の長さ3cm程の輪の髪留めが社の手の下で髪を止めていた。

 目の色を黄色にした。

 それ以上は弄らなかった。


 そして、初期防具、詰まりは今現在着ている衣服を自身の好きな様に変えられるとの事だったので変えることにした。

 社は自身にそれを教えてくれたNPCに聞いた。

「すみません、裁縫道具などはお借り出来ますか?」

『ぇ、ぁはい。

 お貸しすることは可能です。

 使用後は返して頂く事になりますが』

 NPCの顔が少し赤面している様に見えたが気のせいだろうか?


 1時間30分程で衣服の製作を終えた。


 出来栄えは上々だろう。

 それは、スーツであった。

 それは、黒を基本に縦に薄く臙脂えんじのストライプが入ったスーツ。

 白いシャツにクリーム色に赤の刺繍を散らしたネクタイ。

 銀色のタイピン、右下に赤い花柄をあしらった白いハンカチ。

 黒色のハーフフレームの眼鏡。


 そんな出で立ちの人物が出来ていた。


 社はふとそう言えば、と衣服を脱いだ。


「───やはり、そうか。

 機器の設定の時に執拗に年齢についての事があったことから予想はしていたが、証明はしていないが、確証は持てるな」

 そう言って社は全裸で自身の下半部や体の至る所を触りながら確かめる。


 そして、全裸の状態でNPCに近づき肩に触れて種族を【人族】から【Defect】に変えた。


 そして、不定形な生き物となった社は先程自身が作ったアバターに形状を変えられるかを試す。


 が、出来ないようだ。

 ならば、試そうか。


[自己解読者]


 眼前のNPCを少しずつ、少しずつ取り込んでゆく。









 ─────どれほどの時間が過ぎたか。



 NPCの捕食を社は終えた。

 人族の生態系に対する情報を得た為か、自身の形状を人族に変えることが出来る様になった。

 そこで、先程メイキングしたキャラクターへと容姿を変えた。

 そして、社はある一つの事に気が付く。

 性別が女性にも出来る様になっていた。

 確かに先程捕食したNPCは女性であった。

 その為だろうか?

 社は思考を回し、やはり【Defect】は自身の調査に適した種族であると、再認識した。




 ───────。


 隣で音がなった。

『お客様、キャラメイクは終了しましたか?』


 社が隣を見やると先程とは違う人族NPCが立っていた。

 NPCを1人捕食した社は素知らぬ風に短く肯定する。


『それでは、明日の正式サービス開始時にまたお会いしましょう』


 NPCにそう言われ社の意識は現実世界に帰って来た。



 ◆◇◆◇◆



 社が自室のベッド型装置で目を覚ましてから、3時間程時刻が進んだ頃。

 今年で高校生から大学生へとジョブチェンジした妹、結が帰宅した。


 夕飯の匂いを嗅ぎつけ結は、社が立つキッチンへと顔を見せる。


「兄さん、ただいまです。

 今日の夕飯はなんですか?」


「おかえり、結。

 今日の夕飯はパエリアにオニオンスープ、アスパラと水菜とローストビーフのサラダ。

 以上となっております」

 結は社の言葉を聞くと笑みを浮かべ、風呂へと向かった。


 社は全く、と息を吐く。

 そうしていると、社家のもう1人の住人も夕飯の匂いを嗅ぎつけで2階の自室から出てきた様だ。

 その人物も社の前へとやって来る。

 ボサボサの髪を掻き乱しながら。


「はぁ、葉紅さん。

 まただらしない、格好をして」

 そう言って社は全裸に毛布を羽織っている叔母である葉紅に適当な服を見繕い着せる。


「あぁ、会くんに辱められた。

 もうお嫁にいけない。

 会くん責任取ってよ」

 はぁ、何を言っているのやら、と社は頭を抱えながら現実を突付ける。


「何を巫山戯ふざけた事を言っているのですか。

 態々(わざわざ)裸で此処まで来たのは葉紅さんですからね。

 抑々(そもそも)、私と葉紅さんは三親等以内なので結婚出来ません。

 それにですよ、葉紅さんなら私に言わずとも身形を整えてさえ居れば、十二分に綺麗なのですから、引く手数多でしょうに」

 溜息を吐き出して一息にそう告げる。

 はぁ、とても40歳前半とは体型、美貌をしているのだから、もう少し身形に気を使って欲しいと熟々(つくづく)思う社なのであった。


「ふへへ、そうかな」

 葉紅はコロコロと笑う。


 先程、結が風呂に向ってから30分程が過ぎた頃だろうか、結は風呂から上がってダイニングに着いた。


 後もう少しで19時を回ろうとしている頃、3人が全員席に着く。


「ぬっ、うまー」

 葉紅は歳相応とはとても思えない興奮具合いで夕飯を食していた。


「もぅ、葉紅姉さんはしかたないですねぇ」

 そう言って社の隣に座る結は正面に座っている葉紅の口元をティッシュで拭う。


「ぁ、そうだ、話がある。」


 そう言って社は今日あった事を妹である結と叔母である葉紅に話した。


 話し終えた後、食器を片し、就寝した。

 明日の9時より始まる正式サービス開始に備えて。

毎度、ここまでお付き合い下さりありがとう御座います。

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