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File:29 [嫌われモノ]






「─────!?

 どうした、社会」

 唐突な社の言葉にイテラは心底驚いた様子だ。

 それは、そうだろう。

 黙々と思い耽っていた人が、唐突に声を荒げてそう言ったのだ。

 それも、到底、声を荒らげる様な事をするとは思えない人物がだ。

 声を荒げ、狼狽しているのだ。


「す、すみません。

 取り乱しました」


「いや、それはいい。

 社会がそうなるだけの理由があるのだろ?」


「はい、早急に対処して頂かなければならない事があります」

 社は佇まいを直し言う。


「それは?」

 イテラも社に倣い座り直す。


「町民を家から出させないで下さい。

 それと前回は兵を配備する様に言いましたが、それも同様に引いて下さい」

 切実さ、切迫を感じられる声音。


「どういう事?」

 戸惑い、イテラとしてはモンスターが消失したから安心だ、と言いたかったのだ。

 けれど、どうだ、社はイテラの思惑とは裏腹に、危機感を感じているのだ。

 イテラにはそれがどうしてか理解出来ないでいた。


「そうですね。

 言葉足らずでした。

 まず、断っておきますが、可能性ですので」


「口にすると言う事は確信めいた事があるのでしょ」

 それは一種の信頼。

 社がこれか口にする事は、現実として起きるという盲信に似た、確信。


「私としましては。

 と言わざるを得ませんね。

 しかし、無駄口を叩く時間はありません。

 なので、早速本題に移らせて頂きます。

 説明が難しいのですが、今朝放送があり、イベントが第二段階に移る事が知らされました。

 開始時刻は今から2時間後程でしょう。

 形式は戦闘系。

 私はその戦闘と言うのが、私たちゲームをしている人間同士で、というものであると考えています。

 郊外に発生していたモンスターはカモフラージュであったのではないでしょうか。

 真意は分かり得ませんが。

 つまり、その郊外にいたモノらが、この街に返されたが故の現在の騒がしさではないかと。

 私たちの戦場はこの街でという事になるでしょう。

 お分かり頂けましたか?」


「いや、同じ境遇の仲間同士で戦闘など馬鹿らし事誰か!」


「いえ、確実に起こります。

 断言できますよ。

 私たちはこの世界で死のうとも、死にませんから。

 その上、私たちの感覚としてはあくまでゲームなのですから、その域を出なければ何も言われないでしょう。

 それに、多くの方々が鬱憤を溜め込んでいる事でしょうから、今回のイベントの理不尽さに」

 社の言葉にイテラは絶句する。

 殊更嘘を付いている様には見ない態度。

 いや、付いてなどいないのだ。

 しかし、とイテラは自己が処理出来る事の枠組みを、完全に超えているその事柄の対処をどうすれば良いのだと頭を悩ませる。

 社と同類の人間、いやこの人物は別格なのだろうが、どうしたものだろうか。

 彼、彼女らが不死であると言う事実。

 これはそう容易く洩らして良い情報ではない。


「どうしましたか?

 あぁ、そうですね。

 貴女方としては街の方が気掛かりでなりませんよね。

 それに関しては安心して頂いて問題ないですよ。

 何せ私たち外の住民は破壊不可能オブジェクトというものが、この体に設定されていますから」

 この人物は本当に気が付いていないのだろうか。

 普段、あれほどキレる人が?

 であるならば、外の世界は嘸平和なのだろう、とイテラは苦笑するほかなかった。


「嘘を言っている様には、思えない、か。

 外に出ない様に放送するのは構わないが。

 私から一つ忠告だ。

 何れ、知れ渡る事だろうが、自身らが不死である事は言わない方がいい。

 戦乱の渦中に巻き込まれる事になる」


「そうですか、以後気を付けます。

 それでは放送頼みましたよ。

 まぁ、それが無駄足となる事を、平和主義者である私としては願いたいですが、ね」

 社は笑を浮かべてそう言った。

 だけ、である筈なのにも関わらず、イテラ内臓を弄られた様な酷い不快感を覚える。

 それは社の言葉によるものであろうか。

 何も起きやしないそう自身に言い聞かせ。


「そう、ね。

 忙しい中申し訳なかったわ」

 イテラは謝罪する。


「いえ、結果的に助かりましたから。

 申し訳ない事など何もありませんよ。

 寧ろ、感謝こそすれど、謝罪される事など」


「そう。

 では、私は個人的に面識のある貴方を応援して密かに楽しませてもらう事にするわ」


「良いのですか?

 1人に肩入れするなど、町長として」


「何を、町長と言えど1人の人。

 危険が伴いそうな時こそ、楽しく安全にってね。

 では、一つ愉快に放送いれようか」

 朗らかにしていられる程の事で済む様にと願い、気丈に、ヤケとも言える様な態度で事を進めてゆく。


「───そう、ですね。

 飽く迄、イベントですものね。

 私も気兼ねなく楽しませて頂きましょうか、ね。

 と、私はこれで失礼します。

 他に御要件がある様には思えませんから」

 イテラの変貌ぶりに少し呆気に取られた社であったが、気休め程度にはなった様に思えた。

 言葉と共に社はその場から静かに立ち上がる。


「えぇ、要件はこれで終い。

 結果、楽しみにしてるよ。

 私の夢代理勇者」

 仕事をしている時からは考えられない砕けた言葉。

 今後信用の置けるかどうかは分からないが、少なからず今はしても問題ない。

 と、言うのがイテラの現在の既決であった。

 それが変わらぬ事を願い。

 それが変わらず、又相対出来る事を願い。

 扉のノブに手を掛けている社にそう言った。


「それでは、またお会い出来る事をお待ちしています。

 勿論、容疑者としてではなく、客人としてですよ」

 社はそう残して役所から出て言った。

 イテラは一つ大きく溜息をつく。

 自己が抱え込むには難しい事柄。

 それらに係るこれからの対処。

 イテラは二つ長い溜息をつく。


「町長、その様に溜息ばかりしていては、婚期(幸せ)を逃しますよ」

 社が役所を出て、少しばかり時間を置いて、サルザが扉越しに言った。


「失礼な。

 はぁ、仕事するかぁ」


 ポン。


 軽快な音と共に、イテラの手の上にソフトボール程の、光球が浮かび上がる。

 それに向かい何やら言葉を発している。

 自身しかいない部屋で、1人。

 それを終えたのか、それを窓から外へ送る。

 それは広間の中央まで移動すると止まり、高度を三階建ての建造物の屋根を超える程までの所まで上げた。



 ◆◇◆◇◆



 今回、社は役所を出て直ぐに宿に戻る事はしなかった。

 理由は明快である。

 街にいる人数が確かに、イベント第一段階中盤、つまりは昨日時点よりも増加しているかを調べる為である。

 とは言え、昨日時点の街の様子と大雑把に比較するだけの話である。

 そう、凝ったものではない。



 1通り見て周り、社は確信する。

 人数は明らかに増加している。

 そして、多くの人の見える場所に"北"と刺青らしきものがあった。

 流行、などと思ったりはしない。

 流れてきた話では、第一段階敗退者の印だそうだ。

 それを聞き社は敗北という言葉の語源を頭に思い浮かべた。

 背を向けたあった2人の人間。

 背を向けて逃げる、などの意味がありましたね。

 今回の場合ですと、背中を預けられた仲間を刺す事になるのですかね。

 とは言え多い訳だ、と社は1人納得する。

 開始時刻が迫って来ている事を確認し、社は一度宿に戻る事にした。

 受付でアリアーテに挨拶をし、上の階へと上がって行く。

 部屋に着き、戸を開くと。


「お帰りなさいませ、社会様」

 待ち構えて居たかの様に清が立っていたのだった。


「はい、ただ今帰りました」

 そう言って戸を潜り中に入る。


「社会様、イベント第二段階はどうなさるのですか?

 戦闘系という事ですので、私も幾らかお力になれる事かと思いますが」


「そうですね、人体での参加でお願いします。

 混乱を招きかねませんから」

 社は清の元の姿を思い出しそう念押した。


「も、もとよりそのつもりです!」

 しかし、その言葉はどうやら清の気に触れた様だ。


「わー、社会が清を怒らせた」

 イシャーラがそう言って横切って行った。


「あ、何を。

 わたっ、私は怒ってなどいませんよ。

 その、最近、少しばかり同じ場所への外出が多い事が気掛かりではありますが───。

 いえ、何でもありません。

 気にしないで下さい」

 言葉の半ばが声弱く、普通であれば聞き取りづらい筈なのだが、社に限ってはそれに当てはまらなかった。


「そうですか?

 以後気を付けますが、要望がありましたらハッキリと仰って下さいね」


「聞こえていらっしゃいましたか。

 恥ずかしい。

 しかし、いつまでもそうしてはいられませんね。

 徐々、お時間ですからね」

 時計を確認すると予定時刻30分前にまで差し掛かっていた。


「そうですね。

 では、早々と用意を済ませてしまいましょうか」


「私は除け者」

 イシャーラが不貞腐れた様に割言ってくる。

 2人としても忘れていた訳ではない。

 しかして、戦闘能力がある様には思えない。

 いや、確認すらしていないのだから、断言するのは悪なのだが。

 本人が自己申告してこないのだ。

 社としても覗き見る訳にはいかない。

 了承をとる機会も無かったが、そのへんについて確認するべきなのだろう。


「イシャーラ、今迄確認してきませんでしたが、貴女のステータスはどうなっているのですか?」


「どうやって見るの」


「そうですね、何と説明しましょうか。

 私が言いながら実践しますので、追随してイメージして下さい」

 社は手を前に出す。

「ここには空気がありますよね」

 突き出した手の平を天井に向ける。

「その空気が次第に色付き、見易い色に変化してゆき薄い、薄い板が浮かび上がり、そこに文字が透写されてゆきます。

 上から順に。


 名前。性別。種族。

 HP。MP。STR。VIT。DEX。AGI。INT。MND。LUK。

 満腹度。種族特性。称号。スキル。


 どうですか今述べたのものがステータス表記の大体のものです」

 ゆっくり、ゆっくり言葉を紡ぎ、想像を促す。

 勿論、実践した社の前には自身のステータスを表示するウィンドウが浮かんでいる。



 Name:社会

 Sex:

 Race:Defect


 HP:1130/1130

 MP:500/500

 STR:-10

 VIT:63

 DEX:5

 AGI:24

 INT:-5

 MND:100

 LUK:-5


 満腹度:72/100



 種族特性[自己解読者(グラトニー)]



 ・称号

[社畜への手解きブラック・コンサルタント] [清姫(ストーカー)に狙われし者] [放火魔] [戦略家] [司書さんからの親愛] [鋼の精神(立たないの、大丈夫?)]

 New[無自覚児童誘拐(触れぬロリに補導なし)]


 ・スキル

[集中Lv.43] [精密Lv.29] [魔法才能Lv.25] [魔力操作Lv.35] [魔力放出Lv32] [鑑定Lv.12] [看破Lv.17] [隠密Lv.18] [魔装Lv.10] [暗器Lv.19]


 ・Family Skills

[死が二人を分かつとしても]


 ・Origin Skills

[進化の系譜(ウィル・トレース)]



 ・控え

[一閃Lv.1] [鉄鞭術Lv.1] [弓術Lv.1] [棍術Lv.1] [棒術Lv.1] [火術Lv.1] [放火Lv.1] [罠師Lv.1] [跳躍Lv.1] [ステップLv.1] [生存本能Lv.1] [弱点補足Lv.1] [方向感覚Lv.1] [主導地図生成Lv.1] [察知Lv.1] [探知Lv.1] [剣術Lv.12] [槍術Lv.11] [銃術Lv.9] [斧術Lv.13] [採取Lv.15] [考察Lv.1] [調合Lv.21] [薬師Lv.10] [糸製作Lv.14] [布製作Lv.12] [鍛冶Lv.1] [木工Lv.1] [彫刻Lv.8] [砥師Lv.1] [石工Lv.9] [魔工Lv.1] [紙製作Lv.1] [本製作Lv.1] [裁縫Lv.18] [細工Lv.7] [革製作Lv.1]


 さて、改めて見ましたが。

 これは平均的な数なのでしょうか。

 いえ、それはさておきましょうか。

 不名誉な称号が多くはないですか。

 嫌われているのでしょうか。

 いえ、今更なので良くはないですが、流しましょう。

 ですが、意識して確認した事のなかった性別です。

 どうしてでしょうか?

 表示されていませんね。

 いえ、空白。

 と、言う表記なのでしょうか?


「あ、出た」

 そう小さく呟き、不思議そうに手で遊ぶ様にして空をかく。


「どうですか?」


「ん、こんな」

 イシャーラがそう言って社の目の前に送る様な仕草をすると、可視化出来る様になる。


 Name:'ft)0 9Cf /eT)w

 Sex:10j

 Race:n4


 HP:z/

 MP:z/

 STR:z/

 VIT:z/

 DEX:z/

 AGI:z/

 INT:z/

 MND:z/

 LUK:z/


 満腹度:z/



 ・称号

[e0/b(1af75] [d/@c5eVe]


 ・スキル

[] [] [] [] [] [] [] [] [] []



「はぁ、どうした事でしょうか。

 私は文字化けして見えるのですが」

 一切の情報が理解出来ない状態で開示されているのだ。


「社会にもそう見える。

 私にも伏せられてる」

 やはり異常な存在なのだ。

 今現在この様に居ることはおかしな事なのだと、社は再確認する。


「そうですか、仕方ありませんね。

 イレギュラーなのは最初から分かっている事でしたから、今更驚く事ではありませんが─────。」

 滅多な事がなければ、この世界では現実と同様以上の事が出来る様になっているのだと思い出し、社は言葉を続ける。

「いえ、翌々考えれば差程問題はありませんね。

 何せ、現実世界で自己が行える事は不自由無く出来ますから」


「え、いや、まさか。

 機材を自作?」


「そうなりますかね。

 この世界にイシャーラが普段使いしていた様な機材があるとは到底考えられませんから」


「やだ、無理、働かない」


「いえ、そう焦らずとも直ぐに働き始めるのを強要したりはしません。

 まず、資材が足りないでしょう」


「なら、いい?」

 心底安心した様にイシャーラは息をついた。


「そうですね、少し脱線しました。

 元の話に戻しましょうか」


「私、除け者」


「結果的には違いないですが、イシャーラは戦闘に参加したいわけではありませんでしょ?

 本当に参加したいと考えているならば、止めはしません」


「痛いのは嫌。

 けど、暇」


「それだけの理由で参加されては適いません。

 それに、自身の特殊な境遇を考慮して下さい。

 イシャーラはこちらの世界で亡くなると、どうなるか分かったものでは無いのですから。

 私の心労を考慮して下さいませんか」

 イシャーラとて理解しているであると社は溜息混じりに諭す。


「仕方ないか。

 今回は諦める」

 楽しそうにそう言ってイシャーラは話を打ち切った。

 社は再度息をついて、余程溜まっていたのだろうと思い、それ以上は追求は止めた。


「では、私たちはイベントに備える事にします。

 そうでした。

 イベント中は宿から出ないで下さい」

 イシャーラは社がそう言うと、コクリと素直を頷き、足早に寝室に消えた。

 それを見届け、社は清の方に振り返った。


「清、それでは準備を始めましょうか」

 社が言うと清は短く返事をすると、早速動き始めた。



 社1人残された静寂たるリビング。

 社はその場で目を伏せ、視覚情報を遮断した。

 適応する、させる。

進化の系譜(ウィル・トレース)

 それは口にする必要無き言葉。

『Origin Skills[進化の系譜(ウィル・トレース)]の発動を確認しました。

 ──────開始します』

 感じられるは、熱。

 それは普段の人体で感じられるものでない。

 自己の持つ熱量。

 他者が持つ熱量。

 壁の向こう側で作業する2人。

 他の階で準備をしている者、受付で仕事をしている者らが、今の社には感じられた。

 それだけではない。

 先程までは感じる事の出来なかった微細な匂い。

 細かな空気の振動。

 社はその人形に河蛇(クレイブスネーク)

 から得た機能を余す事なく、詰め込んでゆく。

 衣服で隠れる場所は鱗で覆い、熱と振動で相手を探知し、視覚、聴覚は人と変わらぬままに。

『最適化が完了しました』



 況や、それは人ではなく、人型の蛇である。

 社は軽く体を動かす。

 確認の為に。

 不自由なく、力を行使出来るかの。

 出来るか、否かでは雲泥の差である事は、言うまでもない。

 一通り動き、問題ない事を確認した社は、一先ず息を付いた。

 テーブルに備え付けてある椅子に腰掛けた。

 落ち着けたからであろうか。

 社は一つの感覚に苛まれる。



 空腹。



 それは異常な事であった。

 社はこの世界において1度も空腹を感じた事は無かったのだ。

 どれだけ、満腹度が減ろうともだ。

 社は思考を巡らせる。

 が、合間を縫う様に手早くステータスを表示させる。

 満腹度を確認するために。


 ────18/100


 これは異常としか言い様がない、か。

 幾ら私が選択した【Defect】が、満腹度が他の種族十倍の速度で消費される種族だとして、それを加味した上でも明瞭。

 であるならば、この現象には何か理由がある。

 それは何だ?

 一瞬にして満腹度を50近く消費する出来事とは何だ?



 ・Origin Skills

[進化の系譜(ウィル・トレース)]



 それの完了報告の後に空腹に襲われたのだ。

 であるならば、それが関連している事は容易に理解出来る。

 消費されたのだ。

[進化の系譜(ウィル・トレース)]は満腹度と引換に事を行った。

 満腹度が大幅に消費されたのはそれで説明がつく。

 しかしだ、空腹を感じた。

 いや、空腹を感じている事はそれでは説明がつかない。

 この世界、引いてはこの(アバター)では満腹度という数値はあれど、空腹を感じる事が無いのが通常で常識。

 現実では差程まだ時間が経っていなくとも、この世界では既に1月以上の時間が経過しているのだ。

 それだけあれば、人間はその場所での常識を組み立てる。



 常識?



 その常識は私に当てはまっているのか?

 いや、自己が特別である等と自惚れた事を言うつもりも、思っているつもりもない。

 けれど、Origin Skills[進化の系譜(ウィル・トレース)]は破格なまでの異常性を有してはいないか?

 取得条件も分からぬまま得たこれは、常識に含まれるのか?

 止まれ。

 食事だ。

 満腹度を満たさなければ。


 社はポーチから多大な量の食料を取り出した。

 それは食される事もなく、取り込まれた。

 社の身体に飲まれる様に消えた。


 ────満腹度100/100


 さて、それでは時間も時間ですから、始めますか。

 社は満たされた事を確認し、開始時刻目前である事を理解し、事を進める手筈を整える。

 ポーチから一振りの短刀を取り出す。

 それも又、社が生み出した異常。


 体内を循環する魔力に社は意識を集中する。

 それは幾度と繰り返し手慣れ始めた行為。

 流動するそれを右手に集め、体外へと押し出す。

 それを取り出した短刀【訓】を左手に構えて、右手に沿わせて押し出した魔力を切り分ける。

 切り離された事により、それは霧散し始めたのだが、それは次第に固化してゆき、何ら乱れのない、なだらかで綺麗な3つ球体へと姿を変えた。

 それは落下していきやがて、床に辿り着くのが現実的に考えて当然の結果であるが、それは床から30cm程の空間で停滞した。


 流麗だった球体は、それぞれ思い思いに隆起し、形状を変えてゆく。


 2、3分でそれは止んだ。

 3つの球体はその面影を全く無くし、多少の大小があると言えど、凡そ1m25cm程の身長の少年、少女へとその出で立ちを変えた。


「キッキキ。

 殺し(遊び)かぁ?殺し(仕事)かぁ?

 キッキキ、どっちでもいいけどなぁ」

「ドルテは口が悪いと思うの。

 でも、ロロ的にはそれよりもドルテはオツムが残念だと思うの」

「…………」

 口々に言葉を垂れ流す。

 その様に社は溜息をつく。


「出勤早々、私語が多い(お元気)ですね。

 しかし、私語の前にする事を理解していますね」


「わぁてる」

「理解してるの」

「…………」

 三者三葉とはよく言ったものです。


「そうですか、ならば良いのです。

 では、始めましょうか」

 3人とも息を呑む。

 緊張していることが如実に分かる。


「規定と楔です。

 アナタ方に自由を与えるが為の。

 それを千切らなければ私は何も言いません。

 さて、それでは短刀【訓】、社訓を開示する。


 一つ、今回のターゲットは"北"と言う刺青を主催者が付けた者だけだとします。


 一つ、遊ぶ事なく迅速に事を運ぶこと。


 一つ、私の元に戻って来る事が嫌になったならば、イベント終了後に(直訴)しに来ても良いですよ。

 それがない場合は大人しく私の元に戻って頂きます。


 以上です。

 よろしいですか」

 3人は先程とは打って変わって静かに頷いた。


「よろしい。

 では、まもなく狩りの始まり(仕事の時間)です」

 その言葉を待っていたかと言わんばかりに、放送の前触れが聞こえ始める。





























「行きなさい。

[好かれぬモノ(ハウンズ)]」

ここまで御付き合い下さり有難う存じ上げます。


言い訳に聞こえるだけかも知れませんが、最近色々と忙しく、執筆時間が短くなってきている気がします。

それ以外にもやる気や他の物語を構成していたりと、遅れる理由が目白押しなのですけど。

とは言え、上手い具合に筆が進まないのもまた事実。

これが、スランプと言うやつでしょうか。

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