File:20 白い部屋
20話到達。
途中で投げてしまうかと思ってましたが、何とか続いてますね。
細々と続いていきますので宜しければ読んでやって下さい。
社は目を覚ます。
そこは白だった。
違和感を感じ、自身の装いを確認する。
襤褸を1枚羽織っているだけの状態であった。
隣には同様の姿をした清が居た。
上半身を上げ立ち上がる。
そこは唯々白い部屋であった。
中心にはテーブルがあって、その上には幾らかの果物が皿の上に置いてあった。
「ぅん、社会様?」
「清、起きましたか」
「ぁはい、目覚めが遅かったようですみません」
「いえ、大丈夫です。
私も先程目覚めたばかりですので」
「そう、ですか。
それでここは?」
「此処がイベント会場なのでしょう」
「やはり、そうなのですか」
「えぇ、それはそうと清は脱出ゲームなどは得意ですか?」
「いえ、やった事が抑々ありませんので、何とも言えませんが恐らく不得意ですね」
「そうですか、では現状を少しばかり説明しましょうか。
まず、私達は白い部屋に居ます。
清、壁に手を着いて部屋を1周して下さい」
「はぃ、分かりました?」
清は社に言われた通りに壁を伝い歩く。
「あっ、ここ、此処に緩いですが角があります」
「えぇ、そうです。
この部屋には今、清が触っている所を含め5つの角があります。
詰まりはこの部屋が五角形である事が、分かって頂けると考えます。
そして、5辺一つ一つに扉がありますが、まだ開けないで下さい。
そして、気になっていたであろうテーブル。
これは見て分かる通り六角形ですね。
それぞれの辺に三脚ずつ椅子が置かれています、1箇所を除いて。
清、座ってはいけませんよ。
今はまだ。
調べなければならない事が幾らかありますから」
社は清の顔色を窺いながら言葉を重ねる。
「調べなければならない事、ですか?
此処から脱出すればイベントクリアなのですから、出口を探せば宜しいのではありませんか?」
「単に言ってしまえば、清が言う様にこれは脱出ゲームです。
けれど、不釣り合いだと思いませんか?
いえ、失言です。
忘れて下さい。」
意味を理解し得なかったのであろう清は首を傾げる。
「社会様、調べるのでしたら早くしましょう」
しかし、何かを察したのだろう清は社を促す。
「そう、ですか。
では、調べていきましょうか。
清、壁から手を離し戻って来て良いですよ」
社がそう言うと清は名残惜しさなど微塵も見せず、嬉しそうに近寄ってくる。
社は清が戻ってくると共に部屋の調査を再開する。
テーブルの上の大皿には林檎と無花果がみっつ、各辺に3セットずつ木製の食器、そして大皿で押さえられた紙が2枚あった。
2枚の紙を見る。
1枚は此処の見取り図の様であった。
そこには五角形が書いてあり、中央にはテーブルを表しているであろう六角形が書いてある。
社が現在立っている場所はその見取り図から読み取るに、五角形と六角形の辺を平行にしていった時に角と辺になる所であった。
各辺にある扉の先には、部屋が一ずつある事が記されていた。
見取り図の部屋には一ずつ番号が振られていた。
現在社が立っている場所の角を基準に、反時計回り一つ目の辺にある扉の部屋には1、二つ目の辺にある扉の部屋には3、対面になる辺、テーブルに椅子が1脚しか置かれていない辺の部屋には番号は振られていなかった。
それを過ぎ、四つ目の辺にある扉の部屋には4、五つ目の辺にある扉の部屋には2と書かれていた。
清も社がそれを確認していると覗き込んでくる。
「何の為の番号なのでしょうか?」
と、聞いてくる程である。
「特に理由は無いと思いますよ。
分かり易くする為のものでしょう」
短い会話を時折挟み、部屋の中を調べていく。
2人はもう1枚の紙に目を落とす。
その紙にはこのような事が書かれていた。
『今は椅子に座ってはならない。
その実にまだ、触れてはならない。』
《Belong to any of the five kingdoms theory?
If you know, put it in the right seat.
Then ,pick up the fruit of wisdom ,to put to the body.》
日本語はまだしてはならない事。
英語はどういう意味だろうか。
意訳過ぎて要領を得難い。
だが、適当に意味を汲めば、五界説、分かれば席に着け、知の実を体に置け?
いや、食べろという事か。
社は推察していく、少ない情報を現在時点で仮組みしてゆく。
「社会様、これは何と書いているのですか?」
「椅子に座ってはならない事と、果物に触れてはならないと言うことです」
社は清に日本語で書かれた文の意味を解く。
「社会様?
幾ら私と言えど日本語の文章は読めますよ。
酷く馬鹿にされた気分です。
慰謝料を請求します!
接吻でも手打にします」
「ほら、馬鹿な事を言っていないで、清も調べなさい」
「はぁい」
頬を膨らませた清はトタトタと社から離れ周囲を調べ始めた。
社はそれを確認し紙を裏返した。
裏側には赤黒い文字でこう書かれていた。
『この部屋の蝋燭には、触れてはならない。』
《Those who want knowledge will light the fire.》
火を灯せ、か。
炙り出しで文字でも出て来るのだろうか。
しかし、この部屋以外にも火を灯せる物がある事が分かった。
それを読み終え社が顔を上げると清が蝋燭の近くでウロウロしていた。
「清!」
「どうしました、社会様?」
「蝋燭には触らないで下さい」
「ぇあはい、分かりました。
あぁあ、社会様。
この蝋燭、36って彫られてます」
「36、ですか。
他の蝋燭はどうですか?」
社はそれを受け思考を廻す。
一体何を表す数字だろうか。
制限時間?
36分?
短過ぎる、それならば時間を伸ばす必要が無い。
であるならば、36時間?
長過ぎる、自身の様な特殊な種族で無くても餓死する可能性がある。
ならば、制限時間ではない?
「社会様、5本の内、数字が書かれていたのはその1番短い蝋燭だけです。
どうです、役に立てました?」
社に言われた事を完遂できたのが余程嬉しかったのだろう。
跳ねるように喜んでいた。
「えぇ、ありがとう御座います」
それに対して、社は淡白に返し、思考を加速度的に働かせる。
5本の蝋燭、最も短い物に36、次に短いのは右隣、右回転、時計回り、36分刻みの時計、一周で3時間。
やはり、制限時間ではありそうだ。
清には伝えないでおこうと社は開き掛けた口を噤む。
そうして、社は社はで調べ始める。
社は不自然にも1脚しか置かれていない椅子を詳しく観察する。
《It doesn't belong to the five kingdoms theory.》
と、背もたれに彫られていた。
五界説でないもの、か。
社は息をつく。
クリア条件は理解出来た。
けれど、と思考を凪ぐ。
「社会様、この扉だけ文字が書いてありますよ。
『覚悟が決まればいずれ開く』だ、そうです」
ならば、それは最終フェイズで起きる事なのだろう、と社は黙考し清に伝える。
「清、その扉は調べる候補から外して下さい」
そう言うと清が社の方に歩いてきた。
「社会様、何か分かったのですか?
今だ、私には何も分からないので少し不安です。
いえ、社会様を疑っている訳では御座いませんよ。
自身の無能さに嘆いているのです。
この手のものに関しては言われた通りに動く事しか出来ませんから」
社の隣で俯き悲しげにそう言った。
「清、その様な事で自身を卑下してはなりません。
人には適材適所というものがあるのですから、少しずつ不得手なものを克服していけば良いのです。
各言う私も戦闘は余り得意ではありませんから、清に頼る場面が多くなる事でしょうし、何事も持ちつ持たれつで成り立ってゆくのですよ」
社は清の頭を一撫でしてそう言った。
「はぃ」
清は貴方がそれを言うのですか、と思いながらも撫でられた事が余りにも嬉しくて、恥しくて言いたい事が沢山あったにも関わらず、結局は短くそう答える他無かった。
「それでは清、この部屋は荒方調べ終えたと思われますので、次の部屋に行きましょう」
そう言って社は見取り図に1と番号が振られた部屋へと視線を向ける。
「はい、社会様」
今度は迷いなくしっかりと答える。
1の部屋の扉を2人は押し開けた。
脳味噌が足りない。
蟹とか魚とかの脳を食べれば頭が良くなったりしませんかね?
ここまでお付き合い頂きありがとう御座います。




