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File:02 懸念

主人公外視点なので読まなくても問題ありません。

かなりの見切り発射なので。





 私は怖かった。

 若かりし頃の私よりも勢があるあの社員が。

 あの仕事の鬼の様な人物が。

 いつか、私の所まで手を掛けてきそうな彼。


 挫折を知って欲しかった。


 立て直しが出来る今の内に。

 持ち直す事が出来る今の内に。


 だが、きっと彼は失敗しないのだろう。


 私と同じだ。


 しかし、彼は後悔する。


 私がそうであったように。


 自身が出来る事と、そうでない事を明確に理解している。

 けれど、それだけではまかり通らない事に出会った事がない。

 知っているだろう、理解はしているだろう。


 だから、尚の事、彼にはやり直す事が出来る今の内に経験して欲しいのだ。



 ──閑話休題。



 前回の話をしてから半日。

 詰まり、正式サービス前日の夕方頃に私が会社から帰宅した頃だ。

 彼から一通のメールが届いた。


『社長、お忙しいところ申し訳ないのですが、VRの世界の1日が現実の1時間である事から、私も通常業務が行える事を具申致します』


 あぁ、そう。

 えぇ、知っていましたとも。

 予想出来ましたとも、そうなりますよね。

 だけれど、私はこう返した。


『いえ、確かにその環境であれば社君は十分に、十二分に通常教務をこなす事でしょう。

 ですが、今現在私が社君にかしている仕事はVR世界の調査ですよ。

 だからそれだけに集中して下さい。』


 数度瞬きしている間に彼からの返信がきていた。


『申し訳御座いません。

 差出がましい事を致しました』


 ふむ、対応が迅速、仕事が出来る。

 誠に、真に良い人材ではあるけれど、けれども、自身の出来る事を基準値とする節がある。

 確かに社会が彼の様な意欲的な人材ばかりになれば、何も不備無く満に進められる事だろう形式上は。

 けれどそれは、それでは社会は、特に日本という国は直ぐに崩壊してしまうだろう。

 何故なら、日本が色に富んだ国だと言えるからである。

 それは、日本の娯楽文化を他の国と比べれば一目瞭然であろう。

 故に、彼が内に求めるものは社会形態としては正しくとも、日本の様な社会形態を取っている状態では一概にそれを全肯定する事は決して出来ない。



 ──────閑話休題。



 正式サービスが始まり、現実時間で2日が過ぎた。

 詰まりは向こうでは1ヶ月半程の時間が流れた事となる。

 彼から私の元へと調査記録が送られてきた。

 当然と言えば、当然の事であった。

 それは、私が彼にかした仕事なのだから、当たり前の事なのだ。


 その調査記録の内容が普通であれば、一般常識に則った物であれば、私はこうも悩む事は無かっただろう。


 私は彼に、社君バケモノに、社会人バケモノに、仕事人間バケモノに、役目(仕事)を、役割(仕事)を、社命(仕事)を、それらを叶えうる世界と共に与えてしまったのだ。


 私は、声を上げた、絶叫した、笑った、拳に力を込めた、不安に駆られた。


 私は彼の失敗を願いながら幻聴を聴いた。








『────社命とあらば』

御読みくださりありがとう御座います。

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