File:19 予定時刻
会話を書くのが難しい年頃。
どなたか、私に話術を下さい。
あと取得出来ていないスキルが5つ。
[鍛冶] [石工] [木工] [彫刻] [革製作]
よしっと社は手を打つ。
[鍛冶] [石工] [木工] [彫刻]の4つは本日終らせましょう。
そう息巻いて、宿を出た。
[鍛冶]は暗器を。
[石工]は棍を。
[木工]は鞘や柄を。
[彫刻]はそれらに模様を。
そうやって1日の予定を立て工房へと保を進める。
道具を借り、2番目の席につく。
早速だが社はポーチから初期武器を取り出した。
それらの鉄の一部分砕きてこ棒に積み、炉へと入れ積み沸かしする。
そして、一塊になったものを形を整え長方形に伸ばし、切れ目を入れ折り返す。
再度、加熱する。
そして、切り目を入れ折り返す。
それを十回程繰り返し、社は汗を拭う。
そして社は素延べする為に荒い棒状に伸ばそうとする。
「もう一回や」
そう言われると共にてこ棒の尻を蹴られる。
「初めてにしては良い線いっとるで、さすが会兄やわ」
えぇ、そうですか?
あぁ、そうですか?
そう言う事ではない事が、この馬鹿はお分かりではないのか?
危ないというのが分からないのか。
思考が沸々と憤怒へと置き換わってゆく。
「きっとアドバイスなのでしょうが、仕方というものが御座いましょ?」
「早よ、手い引き!集中おし!」
いつになく茜夏は真剣な表情であった。
それは宛ら職人の顔だった。
いや、今は落ち着きを欠いた餓鬼ではなかった。
だから社は怒りを凪、言葉の通りに行動する。
「伸ばし!」
余計なちゃちゃ入れは次第に消えていき、きつい大阪弁だけ残った。
割愛しよう。
理由は説明するまでもない。
茜夏の言葉が口調がどんどん汚くなくなってゆくからだ。
しかし、良いものが出来た。
1人で製作していればきっと些末な物が出来てしまった事だろう。
いや、焼き入れ時に刃切れを起こし、それまでの作業を無に帰すところだった。
その事を加味して様々な事は許した。
銘には社と入れた。
刀身が七寸程の短刀に柄と鞘を木で製作する事にした。
ポーチから倒木を取り出し、据え置いた斧で鞘や柄の型に木を切り出す。
それをノミで刀を納める溝を浚っていく。
「どやどや、会兄かっこええやろ、刀、刀。
上手いこと出来て嬉しいやろ、嬉しいやろ。
しっかし、初めてやのにホンマ上手い事作りよるわ」
「いえ、感謝するのは不本意ですが、今回ばかりは感謝していますよ、茜夏」
「ええんや、ええんやで、もっと褒めてくれて。
そんでもってな、もっと、もっと鍛冶師の道にはまれ、はまれ」
しかし、これから先関わりがあろうとも二度と感謝を述べる事はない。
「いえ、鍛冶は当分しないですね。
イベントが始まりますから」
「え、会兄?
生産職やのに参加するん?
生産職魂だけやったら戦闘でけへんねんで、パトスだけではまかり通れへんねんで」
驚愕の顔を浮かべる。
それは自身が戦闘できない事からくるものだろうか。
「茜夏、私は別に生産職ではないですよ。
どちらが専門と言う訳でもないのですが。
そもそも、イベント内容が公開されていないので、何とも言えないでしょうに」
「せやな、せやな。
やったら私も参加するわ。
せや、私と組んで参加しよや、会兄」
「御遠慮します」
◆◇◆◇◆
社が鍛冶を終え、ゲーム内で生産活動を行い過ごし、日曜日朝に一度ログアウトし現実に戻った。
かなり久しぶりに現実に戻った気がする社は台所に立った。
朝食を用意する。
ダイニングに朝食を運び並べてゆく。
そこにはイベント開催を待ち切れない様子の結がそわそわして居た。
そこには珍しく貫徹でもした様な葉紅が居た。
「朝食が出来ましたよ、御二方」
元気な妹は意気揚々と社から朝食を受け取る。
瀕死の叔母はテーブルに突っ伏していた。
「それでは食べましょうか」
社は対照的な2人を促す。
「兄さん、兄さんイベントです。
イベントですよ、参加なさるのですか?」
「えぇ、参加しますよ」
「で、でしたら、私達と参加して下さいませんか」
「申し出は嬉しいですが、先約があります」
「そう、ですか。
でしたら、仕方ないですね」
淡々と受け答えしていかれる社の言葉に、結は目に見えて意気消沈してゆく。
「あぁ、会くんのせいで結ちゃん元気なくなちゃった」
先ほどまで瀕死していた葉紅は生き返っていた。
「それは脇において、兄さんはどのようなイベントだと思いますか?
意地悪な運営さんは殆ど情報を零してくれませんでしたから。
予想を聞かして頂けませんか、兄さん」
「予想ですか、余り憶測で確実でない事を語るのは好きではありませんが、簡素に私の予測を伝えるのであれば、戦闘は少ないですね。
運営の性格を考えるに」
もっと言うのであれば生産でもないと社は考えている。
この運営の性格の曲がり具合と、ゲームの仕様を考え考慮した場合、今回のイベントは戦闘、生産職関係なく、良く言うのであれば誰でも参加できるものとなる。
と、そう社は考えていた。
いや、この手のゲームには適切ではないイベントなのではと社としては予想していた。
「そうですか、兄さんはそう考えますか」
社の予想は結の考えとはかけ離れていたのだろう。
「何何、ゲームの話?
そこの運営はそんなに捻くれてるの?
イベントに戦闘や生産が少ないイベントだなんて、変わっていて楽しいね」
「御馳走様でした」
「おいしかった」
「えぇ、お粗末さまです」
そう言って社は食器を片していく。
「兄さん、手伝います」
結がそう言い食器を手に取ろうとする。
「いえ!
大丈夫ですのでキッチンには入らないで下さい」
社はそのまま台所に消えていく。
「おぉぉ、よしよし結ちゃんよしよし。
料理なんて出来なくても良いんだよ。
私もやらない、結ちゃんもやらないだけなんだよ」
背後からそう聞こえてきた。
「そのぉ私、実は兄さんには内緒なのですが、大学で料理研究サークルに入ったのできっと兄さんに褒めて頂ける様な料理を作れるようになります」
「あ、なぬぅぅ、裏切るのか、裏切るのか家事出来ないっ娘同盟から勝手に脱退するつもりか」
「いつの間にその様な不名誉な同盟を作られたのですか」
聞き捨てならない言葉が聞こえたが仲がよろしい事で。
それをしり目に社は聞きながら自室に戻った。
はぁ、現実の比重が、減っていってますね。
戻る時に時差ボケしなければ良いのですが、と考えながら社はベッド型装置をギシリと鳴らす。
社はあろう事か、現実が遠のくというのに安心感を覚えてしまった。
それが何故かは分からない。
だが一つ言える事は自身がゲーム内に入る事に安心感!?
それは本当に安心感などであったか。
それは──────────。
◆◇◆◇◆
社は前回のログアウト地点。
詰まりは寝泊りしていた宿に降り立った。
情報がたりないか、と社は現実での思考を凪いだ。
「社会様、お久しぶりです」
嬉しそうに清は社に近寄ってくる。
「何を言っているのですか。
1日しか離れていないといいますのに、全くですね清は」
「いえ、何を社会様は言いますか。
1日しか、ではなく1日もですからね」
清は地団駄を踏む。
「それはそうと本日にイベント報告があるそうなので持ち物などを確認しましょう」
Name:社会
Race:Defect
HP:1130/1130
MP:500/500
STR:-10
VIT:63
DEX:5
AGI:24
INT:-5
MND:100
LUK:-5
満腹度96/100
種族特性[自己解読者]
・称号
[社畜への手解き] [清姫に狙われし者] [放火魔] [戦略家] [司書さんからの親愛] [鋼の精神]
・スキル
[集中Lv.37] [精密Lv.25] [魔法才能Lv.19] [魔力操作Lv.16] [魔力放出Lv20] [鑑定Lv.12] [看破Lv.17] [隠密Lv.18] [魔装Lv.1] [暗器Lv.19]
・Family Skills
[死が二人を分かつとしても]
・Origin Skills
[進化の系譜]
・控え
[一閃Lv.1] [鉄鞭術Lv.1] [弓術Lv.1] [棍術Lv.1] [棒術Lv.1] [火術Lv.1] [放火Lv.1] [罠師Lv.1] [跳躍Lv.1] [ステップLv.1] [生存本能Lv.1] [弱点補足Lv.1] [方向感覚Lv.1] [主導地図生成Lv.1] [察知Lv.1] [探知Lv.1] [剣術Lv.12] [槍術Lv.11] [銃術Lv.9] [斧術Lv.13] [採取Lv.15] [考察Lv.1] [調合Lv.21] [薬師Lv.10] [糸製作Lv.14] [布製作Lv.12] [鍛冶Lv.1] [木工Lv.1] [彫刻Lv.8] [砥師Lv.1] [石工Lv.9] [魔工Lv.1] [紙製作Lv.1] [本製作Lv.1] [裁縫Lv.18] [細工Lv.7] [革製作Lv.1]
・アイテム
回復薬×24、丸薬×53、短刀【訓】
衣服は一式、鋼糸の布で織られた物となり靴も革靴へとなった。
そのおかげで、VITが上がりHPも増えた。
それと不名誉な称号で随分とMNDも上がっていますね。
ポーチに入れてあった多くのものは宿の部屋に預け、いる物だけ搾った。
そうして社と清が準備をし終えると、予定時刻まであともう少しであった。
窓から顔を覗かせる。
広場の空中にノイズがはしり大きなウィンドウが現れ音が鳴り、放送が始まる。
『あぁぁあぁぁあぁあぁぁぁぁぁ、コホン、コホン。
マイクテス、テス。
どうも、皆さま予定時刻と成りました。
私は大変待ちくたびれました。
正直に言って暇でした。
誰ですか、誰だ、ゲーム内時間を1時間で1日に設定したの!!!
「ちょっと、fhp@y:ypgiyd7公開放送でその様な事を言わないで下さい」
はいはい、はーい怒られましたので真面目にイベント開催報告を行います。
本日のこの説明終了後からイベントは開催されます。
まぁ、詳しく説明しませんけど。
なので、自身で経験して死んでわあぁぁぁああああってなれ!
では、説明していきます。
参加は自由です。
1人1回しか参加できません。
ですので、死んでしまいますとそれまでとなってしまいます。
最大同時参加人数は1パーティ(4人)まで。
ウィンドウにイベント、と追加しますのでそこから参加して下さい。
イベント終了は三日後ですので、参加するなら早めにどうぞ。
あ、時間の心配はいりませんよ。
キャラメイク時と同じで時間が延ばされていますから。
クリア条件は別エリアに飛ばされますので、そこから出てきてね。
尚、イベントの情報を公開する事は禁止します。
なので、存分にイベントクリア出来なかったぁぁぁって嘆け、
な げ け』
広場ではブーイングが吹き荒れていた。
その意思は社としても理解出来る。
が、社としては予想通りと言わざる得なかった。
放送は一方的には凪ぎ、ウィンドウも消えた。
あぁ、今ので終わりか、と社は一考する。
そう理解するとウィンドウを開く。
そこには確かにイベントとあった。
「ありましたか、社会様?」
清は社の顔つきを見て理解している事を聞いた。
「えぇ、それでは行きましょうか、清」
「はい、社会様」
そう言って社はイベントを押した。
宿の窓際に居た2つの影は虚空に消えた。
そして、消えた筈の広場の大きなウィンドウが現れ参加者人数1と映し出された。
生産回終了。
ここまでお付き合い頂きありがとう御座います。




