File:15 涙目多勢
しっかり投稿出来てますか?
社は初心者用の工房へと向かう。
理由としては幾つかあるが、簡潔に言えばスキル取得の効率と、人の有無による効率の二つだろう。
社は以前確認しておいた街の全体図を思い浮かべ移動する。
特に迷う事もなく予定調和に工房に到着した。
着いてから気が付いたのだが、社は製作に必要な物を持っていなかった。
けれど、聞いた所一通り必要な物は貸出してくれるようなので、時間的に全ての物は出来ないと判断し、[調合]と[糸製作]用の道具を貸出金を払い借りた。
それを持ち社は一番奥にある場所に陣取った。
アイテムウィンドウを見る。
偏っているが、多くの物が入っている。
そこから何が作れるか思考する。
恐らく取得する事の出来るスキルとしては、[鍛冶] [石工] [木工] [調合] [彫刻] [糸製作] [布製作] [革製作]の8つだろうか。
しかし、その前にはスキルの構成を組み替える事に社はする。
構成基準は使用する可能性があるもの。
・スキル
[集中Lv.26] [精密Lv.16] [魔法才能Lv.1] [魔力操作Lv.1] [魔力放出Lv.1 ] [裁縫Lv.1] [細工Lv.1] [紙製作Lv.1] [本製作Lv.1] [鑑定Lv.1]
・控え
[一閃Lv.1] [鉄鞭術Lv.1] [弓術Lv.1] [棍術Lv.1] [棒術Lv.1] [火術Lv.1] [放火Lv.1] [罠師Lv.1] [跳躍Lv.1] [ステップLv.1] [生存本能Lv.1] [弱点補足Lv.1] [方向感覚Lv.1] [主導地図生成Lv.1] [察知Lv.1] [探知Lv.1] [剣術Lv.12] [槍術Lv.11] [銃術Lv.9] [斧術Lv.13] [暗器Lv.19] [採取Lv.15] [看破Lv.17] [隠密Lv.18] [考察Lv.1] [魔装Lv.1]
に、変更した。
まずは鍋に水をはりそこに魔力を溶かし込んでからその水を沸かし、アイテムポーチから取り出した薬草を片手盤で刻み、半量程度になるまで煮る。
社は記憶を手繰り寄せながら作業を進めてゆく。
ものによるが30 ~40分程は火に掛けていないとならなかったはずであると、思い出し鍋を見つつ他の作業に移る。
ポーチから残っている薬草の幾らかを取り出し、薬研で粉末にしてゆく。
粉末にした薬草をこね鉢に移し、水や南の森で見つけた蜂の巣から手に入れた蜂蜜を入れ、混ぜ合わせる。
その作業が終わる頃には鍋の中は半分程までに煮詰まっていたので火を止め、いつの間にやら現れた容器に濾して煎じ滓を取り除き移す。
混ぜ合わせたものを手から魔力を注ぎ共に練あげ、扇形丸製器に隙間無く押し込み、荒く丸薬状にする。
そして、成丸器で丸くならし乾燥するまで置いておく。
そこまで一気に終え、社は集中を解き顔を上げる。
同じ体勢のまま長い事いたせいか、体が凝っていたので伸ばす。
その途中、首を回していた時だ。
目が合った。
誰だ?
知らない人物だ。
見詰めてくる。
睨まれていると言っても過言ではない程に。
「どちら様でしょうか?
もしくは、どの様なご要件でしょうか?」
すると少女ははっとした様に頭を振るい。
「お前、そこはβの時から私の特等席なんやぞ、やから返せ」
くすんだ赤髪の猫人族の少女に難癖つけられた社であった。
「私は社会と申します。
貴女は?」
「へぇ、私か?
私は茜姫夏?」
社は耳を覆う仕草をする。
「─────?!
ちょっ、ちょいたん待っ。
今の聞かんかった事にして、お願いや」
あかn───赤髪の少女は何やらそう頼んできます。
社は何も聞いていないと言うのにです。
「何を言っているのですか?
私はまだ貴女のプレイヤーネームを聞いていないのですから、聞かな事にする事は出来ませんよ」
仕草ではなく言葉で聞かなかった事にすると伝える。
「ぇへ、そいか。
ありがと、社会の姉貴」
「私は男性プレイヤーですよ」
長髪にする事によってそんな勘違いが生まれるとは思わなかった。
「ぅん?
男装しているだけやろ?
[性別識別]のスキルで───いや色々事情があるんやな。
まぁ、細かい事はええわ。
改めて、私は茜夏や」
頬を掻き少しばかり恥ずかしかったのか、少年の様に笑い、名乗った。
社としては、聞き捨てならない事を言っていたが、直ぐに問題が出てくる類のものではないとその思考は一度凪いだ。
「茜夏さんですか。
綺麗なネームですね」
「会兄、綺麗な名前やなんてその、ありがと。
けどな、さん付けは止めてくれ。
こう、むず痒くなるから」
茜夏としては社の褒め言葉がリアルネームを褒めている様に聞こえたのだろう、頬を髪の色に近づける。
お腹や背中に手を回しながらではあるのだが。
「そうですか、では茜夏。
私は社会であると名乗った筈なのですが、会兄とは一体どういう事でしょうか?」
「しゃ、社会はダメだ。
いや、会兄の名前がダメだという訳やなくて、社会と聞くと会社の上司を思い出してしもうてな。
凄く良い人ではあるんやけどな、紳士的で、仕事は出来て、顔も頭も良い、面倒見も良い。
けれどなぁ、仕事についてはシビア過ぎてこっちが見てるだけでノイローゼになりそうになんねん。
休日も家で仕事してるって聞くし、大丈夫か心配で心配で今も気が気じゃないんや─────」
「会兄、愚痴ってしもうて悪いな、堪忍な。
こんな事言うつもりは全く無かったんやけどな、余りにも話しやすくて。
と言う理由で会兄と呼ぶ事にした」
「そうですか。
それはそれは、大変ですね。
ゲーム内ですのでそう呼んで頂いても構いません。
けれど、週明けからはお仕事頑張って下さいね、茜さん」
茜夏は背筋に冷たい感覚を覚えるのであった。
「はぃ、頑張らせて頂きます」
何故か反射的にそう答えてしまった茜夏なのだった。
「それはそうと、茜夏。
此処が貴女の場所と言うのは?
私の記憶が正しいのであれば、此処は初心者用の貸し工房であった筈なのですが、齟齬や語弊は御座いますか?」
「ぁ、いえ、そのそれは言葉の綾と言うか、何と言うか。
私は鍛冶師やってんねんけどな、βの時から作業に集中出来るこの場所を使っていたんや、けどな何と今日は人が居ると思ってついな」
「そうですか。
ならば、少し待っていて下さい。
隣に移りますので」
そう言って広げていた道具を一旦片ずける。
「いやいや、そんなん悪いからええよ。
私が隣でやるから」
「しかし、物事は極力慣れた環境でする方が、制度が高まりますから」
「いえ、そんなん、私もそのうち自分の工房を持つ事になるんやから慣れんと、環境が変わる事に」
茜夏は手を突き出して社を止める。
「そう、ですか。
では私は次の作業に移ります」
そう言って片した道具を広げ直す。
「作業に移る前に一つええかな、会兄?」
「ええ、構いませんよ」
「さっき、何作ってたん?」
「何も、見ていて分かりませんでしたか?」
「いや、分かっし、理解も出来た。
けどな、態々な工房まで出向いて全部手作業でやってるんじゃ、ここまで来る必要無いんとちゃうか、なって」
「ん、何を言っているのですか?
私はまだ[調合]などのスキルを持っていないのでこうして、スキルを取得する為に行動していたのですが、何か可笑しいですか?」
「はい、会兄は可笑しな行動をしています。
まず、初心者用工房では薬草さえ持っとれば、スキルを持っていなくても最低ランクの回復薬が項目に載っとるのを作れる。
それを行えばスキル[調合]を取得出来て、そのスキルのレベルを上げていけば作れる物が項目に増えていくって形式の筈なのだか、それを会兄はすっ飛ばして、手作業で勝手に作り上げてしまっとるわけや。
どうや?
可笑しな事をしたって実感湧いたか?」
丸薬状の物を見る。
まだ完全には乾燥していないが、思いながら箔付けに入れ転がし完成させる。
「確かに少しばかり時間を無駄にしてしまった様ですね。
ですが、出来たものが悪くないので良しとしましょう」
そう言って社は作った物に命名して下さい、と書かれたウィンドウが出て来たので容器の方に回復薬、固形の方に丸薬とつけた。
「へぇ、システムアシスト受けてないのに自信ありげやねぇ、会兄。
どれどれ、私がいっちょ見てあげようやないの」
回復薬
製造者:社会
効能:HP、MPを40%回復させる。
使用期限:1日
丸薬
製作者:社会
説明:まだ完成しておらず未完成。
乾燥の進捗具合4/10
効率:HP、MPを10%回復させる。
使用期限:2週間
「会兄、失礼な事を言います。
────ちっ、ち、チートはやっちゃいけないんやぞ!」
薬草のくだりは朧気な記憶を搾り書かれたものですので、当てにしないで下さい。
ここまでお付き合い頂きありがとう御座います。




