File:13 職務怠慢
キーボードを見ないで文字を打つやつ。
そう、ブラインドタッチの練習を最近し始めたのですが、中々上手くいかないものですね。
あぁ、暇なのなぁ。
何か面白いプレイヤーいないかなぁ。
そう思い薄暗い部屋でPCの前に座り、適当にプレイヤー情報を閲覧してゆく女性が一人。
その部屋唯一の明かりが女性顔を照らす。
女性はプレイヤーの情報を上から順に流し見していく。
情報が繰り終わるのにそう時間は掛からなかった。
いや、この女性だからというのを付け忘れてはいけないのだが。
差異無き事だろう。
何せこの情報を全て閲覧出来る人物はこの女性ただ一人しかいないのだから。
その上、この女性以外の誰がβテスターを合わせた第一陣組、総勢3万のプレイヤー情報を、シークバーを下まで繰るだけで全て把握できると言うのか。
【人族】系:17829人
【獣人族】系:11177人
【鳥人族】系:35人
【爬虫人族】系:475人
【両生人族】系:124人
【魚人族】系:201人
【蟲人族】系:158人
ふぅん、何これ面白さの欠片もない分布。
皆使いやすい人種ばかり選んで何が楽しいのかしら。
【鳥人族】【爬虫人族】【両生人族】【魚人族】【蟲人族】を選んでいる人はまだ少し見所があるわね。
まぁそれでも、行動実績を見る限り大した人物でない事は明白ね。
けれど、その手の種族を選んでいる人はいずれ化ける可能性はまだ高いわね。
【人族】や【獣人族】では出来ない事が多くあるもの。
折角現実では出来ない事が出来ると言うのだから、もっと、もっと楽しくなればいいのに。
これだから常識を払拭出来ない人は楽しくない、楽しくない。
折角暇潰しの為に作ったのだから、私の暇を潰せる様なプレイヤーがいないのならサービス停止しようかな。
あぁ、でもまたそんなことしようものなら糞ジジイ共の無益な説教が飛んでくしなぁ。
何でいつもあの糞ジジイ共は自分が関係ないのに出張って来るのか、そんなにお金が欲しいのか。
全く、楽しい時間をくれると言うのであれば、お金何ていくらでもあげるのに。
私に楽しいと思わせる事が出来るのであればだけど。
5年程前から本格的に手に入れた楽しみに勝る事を、糞ジジイ共が用意出来るとは一分一厘も思わないので期待しなことにしておく。
そうして思考を女性は一度凪、繰り終えた情報を今一度見る。
【Defect】:1人
ありゃ、面白いのが1人居るじゃない。
あはは、確かに理屈的には可能だけどまさかキャラメイク時に説明用NPCに。
いや、これ中に息抜きで人が入ってるなぁ、記録を見る限り。
良いなぁ、私もこの時にキャラメイクの説明入りたかったなぁ。
しかし、この時キャラメイク時説明用アバターに入ってた人は大丈夫かなぁ。
あ、メールだ。
どうせ糞ジジイ共からの────────あれ?
違う、これは職員からのメールだ。
件名:転属願、か。
メールの主を見た事がある気がする。
そうさっき見た事がある様な事が気が────────そう、記録にあった名前。
フルネームは狗飼 秋納ですかぁ。
これは少し面白そうな事が、ふふ。
件名:転属願
どうも、先日の転属願の時ぶりですかね。
本日はまた転属願を、と思いまして連絡致しました。
で、恐らく最後になるであろう私が転属したい先はプレイヤー組です。
何故かと言うと先日、初心者プレイヤーにキャラメイク時説明をしたのですが、思った以上にそのプレイヤーが面白かったので、是非お近づきに成りたいなと思いましてですね。
きっと、暇を持て余している貴女も気に入る事だと思いますよ。
確実だと断言してもいいですよ。
まぁ、何をされたかは詳しくは言わないけど。
いや、言わなくても貴女が見れば分かるのだろうけれど。
しかして、私は現在の部署よりゲーム内視察組に転属したい訳に御座います。
堅苦し、疲れたわ。
そんじゃまぁ、手続きお願い。
あ、そうだ。
ちゃんと手続きしてくれれば、昼食でも奢るよ。
しかし、また転属かぁ。
手続きって面倒臭いんだからもう少し自重して欲しいなぁ。
まぁいいか、秋納が言うように面白い事に成りそうだし。
了承、了承。
楽しくないから消そうと思っていたけど、これは少しずつ面白くなっていきそう、かな。
カシャカシャっと、はぁい終了。
送信っと。
◆◇◆◇◆
そういえば、唯一私が携わった種族を使ってくれているプレイヤーはどんな実績を積んでいるのかなぁ。
ありゃ、見た名前だ、こりゃ。
あれ、今戦闘してる。
スキルスロットに装備せずに戦ってるし、何の縛りプレイなのか。
あや、スキルをスロットにセットしないといけない事を今知ったのかな、あの雰囲気だと。
あっらら、しかし、スキルなしマイナス補正種族であそこの森のモンスターを乱獲してたのかぁ。
つくづく私を楽しましてくれる。
どっちがモンスターなのか分かったものじゃないなぁ、あそこまで無茶苦茶だと。
まぁ、そのまま可笑しくなっていってくれるのは私的には嬉しい事なんだけど。
来てくれるのは確実だけど、はぁやくこっち側に来てくれないかなぁ、来てくれないかなぁ。
うわ、なにあれ、あんな事になるんだ。
適当に興味本位で組んだ種族だったから知らなかったや。
まぁ、内部データ的には知っていたけど、試運転した事すら私は無かったし、職員の数名は使えるか試したみたいだけど。
皆断念していたからなぁ。
動けないだとか、ステータスにマイナス補正付ける何て頭可笑しいとか、種族特性強過ぎとか、種族特性を使う前にデメリットで餓死しただとか、etc、etc。
大体の物事は扱いきれない側に問題があると言うのに、全く文句の多い事。
私なら使えるのに、でも3万人ものプレイヤーがいて1人しか種族【Defect】の秘密に気付かないとは。
皆、馬鹿しかいないのかしら。
【Defect】の裏特性、[破壊不可オブジェクト捕食可能]、[物理攻撃半減]、[捕食時β-エンドルフィン分泌促進]、[魔法ダメージ1.5倍増加]、[回復系統魔法受贈時半減]
まぁ、この種族を使用できているプレイヤーでもどのくらい気が付いているのか。
二つ目くらいまでか。
これ以上は現在の状態では気付きようがないしね。
それは良いとしても何か悶え始めたなぁ。
あ、何か凄い事が起きてる。
うわ、上着脱いだ、ウホッ、良い体。
いや、そうじゃなくて、なんだかきもい腕が生えてる。
あれ、いや待って再構成されゆく。
ありゃまぁ、人族型の腕が6本生えてる。
これは[Origin Skills]を入手したかな、もしや。
んんんんん、ちょ、ちょっと楽しくなりそうなモンスターが近付いてる。
あはは、流石にあれは死ぬでしょう。
クレイブスネークって。
あれって一応エリアボスだったけかな。
何あの挙動、幾ら腕が6本あろうともあんな動き一般的人間には出来ないのだけど。
まぁ、一般的な人間は種族【Defect】を使いこなせないみたいだから、それに当てはめると一般的な人間とは言い難いプレイヤーである。
それを出来そうだなと思う私はやはり一般的や通常とは言い難いかぁ。
はぁ、少し悲しいなぁ。
私も能天気に生きて、逝きたかった。
あ、あ、何あれ蜘蛛男、蜘蛛男じゃん。
びしゅーん、びしゅーんって、あやー良い、良いよあのプレイヤー。
しっかしどうして逃げてばかりしているのだろう。
何かを拾っては捨ててるし、何をしているのか。
あぁ、ついにはセーフティーエリアを一周してしまってるけどなにをしているのか。
はへ、セーフティーエリアに向かっていた。
あ、火、放ちよった、森の中に居ると言うのに、自殺志願者か?
へぇ、何が起きてるの?
巻き戻し、巻き戻しっと。
あぁ、そういうことか。
逃げ回っていたのも、糸を木々に絡めながら移動していたのも、何かを拾い、捨ててをしていたのも、全てこの為か。
はははっはははっは、あはは、エリアボスを殴殺って。
木で殴殺って想定外過ぎでしょ。
はぁはぁ、笑いつかれた。
良いものが見れた、満足、満足大満足。
下の階に下りよ。
お腹減っちゃったし。
◆◇◆◇◆
社は清と別れた後に直ぐに目覚め、前回目覚めた時に下拵えしていた夕食の用意を始めるのであった。
しかしどうしたものか。
家の女性陣はどうしてこうも家事技能が貧困なのだろうか。
と、社は少し悩ましく思いながら、夕食の準備を進めてゆく。
恙無く調理を終える。
結も葉紅ももう少し、もう少しと息をつくしかなかった。
家に居れる時間が長くなったのだから、家事をする事は吝かではないのだが、そうではないのだ。
はぁ、ダイニングに配膳してゆく。
結は入浴中、葉紅は匂いに釣られて来たかな。
人生比重的にゲームに時間を割き過ぎるのは、良くない事なのは明確である。
けれど、けれども今はあのゲームをする事が仕事である。
あぁ、ジレンマ。
ダイニングに人が集まってくる。
それは身なりを整えれば美しい筈の女性。
それは入浴を終えて頬を薄く染めた女性。
皆が椅子に着く。
「それでは食べましょうか」
結と葉紅は何を感じたのか。
「兄さん、いつもいつもありがとう御座います」
「会くん、いつも御飯ありがとね」
物の作り方とか分からないの多くて製作話とか非情に困りそうな予感がひしひしと。
ここまで御付き合い下さりありがとう御座います。




