File:12 愛憎
誰か、私に1日で5話ほど書ける想像力を下さい。
社は何事も無く借宿にへと辿り着いた。
帰宅した。
社は扉を開く。
とたとた、と聞こえてくる足音。
「お帰りなさいませ、社会様」
喜びと心配を織り交ぜた様な表情を浮かべた清が出迎えてくれた。
少し目元が赤い事を鑑みるに泣いていたのかもしれない。
私は何か清を悲しませる様な事をしてしまっただろうか、と社は考える。
しかし、何だろうか、今回ばかりは見当が付かない社であった。
「ただ今帰りました、清」
だから社はそう言って微笑むしか無かった。
部屋に上がり、腰を落ち着ける。
「社会様、約束通り今日は私が夕食を用意してみました」
そう言って清は部屋に設置された余り大きくないテーブルに料理を並べてゆく。
「これはまた豪勢な、大変でしたでしょう。
私が持っていた食材以外もある様ですし、1人で購入されに行ったのでしょうか」
「いえ、大変なことなど何もありませんでしたよ。
言わせていただきますが、今の現状で私に勝てるのは社会様と一部パーティー位のものですから、ね」
「ふむ、それでは然も私が可笑しな事をしてしまった様ではありませんか。
失礼というものですよ。
そもそも口は災いの元と言うのですから、清も口に気を付けましょう」
やれやれ誇張が過ぎると言うものですよ、と社は況や息をついた。
「社会様は自身が社会一般的な常識に────。
いえ、不毛な事の様になるのが分かり切っていますのでこれ以上はやめておきます」
「そう、ですか。それよりも、清。
清の折角作って下さった手料理ですから、冷める前に頂いても良いですか?」
社は釈然としないが流す事とした。
「────────っ!!
はい、それは勿論です。
今現在、テーブルに並んでいますのは社会様の為だけに作った手料理に御座いますから、勿論食べて頂いても構わないのですよ。いえ、食べて頂いて、何て上から言ってしまって申し訳ありません。寧ろ食べて下さい。食べて下さらなくても勿論良いのですが、それは社会様の自由意志ですから。ですが、やはり食べて下さらないと少し考えてしまうと悲しくなってしまいます。しかし、こんなにも沢山作ってしまったのは私ですから、仕方ないと言うものですね。ただ一つ分かって頂きたいのは、私が社会様を思ってやってしまった事だと言う事だと御理解頂ければ幸いなのですが迷惑ですよね、やっぱり。ですが、私はそれでも、一方的でも心狂おしい程に社会様をお慕いしています、愛しております。それこそ言葉には表せない程に。そうです何かそれを表せる行動は無いものでしょうか。そうです、何か命令でもして頂ければ、即実行して見せます。それこそ、死ねと命ぜられましたら私は死ねます。そうです、そうですよ。愛の証明の為の私は命を絶ちます。それでは、社会様さようなら、私は、私は死のうとも愛しています、愛し続けます」
清は何かを思い詰めた様に言葉を吐く。
感情を吐く。
心に負荷が溜まりやすい性根だったのかも知れない。
けれど、それにしても自身が何か清に負荷をかけてしまう事をしてしまっていたのではないか、という不安に煽られる。
しかし、けれど、思考するよりも、先にしなければならない事がある。
「清、落ち着いて下さい。
ほら、清も一緒に食べましょう」
そういって社は配膳された箸を手に取り、綺麗に盛り付けられた、料理を小皿に取る。
「社会様は私などが用意したものを食べて下さるので?
無理はなさらないで下さい」
悲壮感が酷く沁みでる声音。
社が帰宅した時には必死に気丈に振舞ってっいた事が伝わる。
それは強固なる想いであり。
声、聲、希、望、願い、思い、想い、懐い、謂い、憂い、愁い、悲し、哀し、疑い、迷い、損ね、患い、煩い、壊れ、怖れ、崇め、信じ、謡い、謳い、詠い、狂い、愛し、──────、
そしてそれは、圧倒的な迄の愛憎。
「ほら、清。
口を開けて下さい」
唐突な事に清は興を突かれたけれど、惚ける。
「ふぇ、社会様?
─────あ~ぅん」
清は社に言われた通りに口を開く。
「私は清を不満にする事や、不安にさせる事をしてしまいましたか?
話して下さい、物事を溜め込むのは精神衛生上良くない事ですから。
無神経かも知れませんが、内心は外面を見るだけでは理解し得ませんから。
言葉として言って頂けますと良いのですか」
「んぅ、あれぇ?
してくれないのですか?
いえ、何もありません。
取り乱してしまって申し訳ありませんでした、社会様。
しかし社会様にも非があるのですよ」
清は何かをボヤキ、頬を染めて膨らまさせる。
口を尖らせ、社が目線を合わせ様とするとそっぽを向く。
「はぁ、私にも非があるのですか。
そうですよね」
「はぃ、余り社会様にその様には言いたくはありませんが。
私の事ももう少しだけ構って頂ければ非情に嬉しいです」
少しは清の悩みを和らげる事が出来ましたかね、などと漠然と頭を回す社であった。
「では、折角の料理です。
少し冷めてしまったかも知れませんが頂きます。
話は食事中にでもしましょ」
社は話題を食事に向けてゆく。
このままでは食事を前にして満腹度が底を着いてしまう、と言う間抜けな自体に陥ってしまう。
◆◇◆◇◆
清が振舞ってくれた手料理は全て美味しかった。
洗い物をすると言ってみたが、やらしては貰えなかった。
またこの世界の1日が終わろうとしていた。
後、ゲーム内時間で13日と半日でイベントが開始されるのだ。
社は床につく。
そして、明日からしなければ、ならない事を頭に並べていく。
けれど、その前に1度現実に帰らなければならないのだ。
夕食の為に。
ごそごそと清も布団に入って来る。
社の背に細くしなやかな指を沿わせ、額を当てる。
そして、啜り泣くように。
「また、現実に帰られるのですね。
仕方の無い事だと、分かっています。
社会様の肉体はそちらにあるのですから、いずれは居なくなるのだと。
ですが、ですが、私の心は浅ましくも社会様を独占したいと、叫ぶのです。
それが、以下に迷惑のかかる独占欲だと頭では理解出来ているにも関わらず」
社は静かに聞き続けた。
何も言わず。
「ですが、連日図書館に行き司書の人と話す社会様を見て、情けない事に抑え切れなくなってしまったのです。
ですが、先程私が死のうとした時に止めて下さったり、冷めてしまった料理を美味しいと言って食べて下さったりと私は嬉しかったのです。
しかし、口を開けて下さいと言われた時、私。
その少し期待してしまったのですからね。
ですので、あの様な言動は少し控えて頂ければと思います。
でなければ、私はいつか悶え死んでしまいます」
社は体制を変え、清に向き合う。
頭に手を置き撫でた。
「清、話して下さりありがとう御座います。
そして、諸々の事はすみませんでした。
では、私はログアウトしなければ、ならない時刻ですので。
しかし、清。貴女は一つ大切な事を忘れていませんか?」
そう言って社は清の細く滑やかな左手を取り、自身の右手の甲を合わせ。
「主従関係である事を」
そう言って社はログアウトして行った。
清も社がいない間は顕現出来ないので消えるのだが、社がいなくなるのを見届けながらこう思った。
まだ、右手の中指にはめていたのですね。
絶対に左手の薬指にはめさせてやると、固く決意した清であった。
次回、社死す。と言ったなぁ。
あれは嘘だ。
次回はいつになります事やら、早めに書ければ良いなぁ。
ここまで御付き合い下さりありがとう御座います。




