File:11 貪る為に
本日二話目の投稿
頑張った、頑張れたよ。
イベント?
早過ぎるのでは無いだろうか。
社は止めていた調査書制作を再開させ、考える。
しかし、考えるのは良いが手短に、簡潔に、正しくしなければならない。
残り時間はこちらの世界で15日と半日しかないのだから。
しなければ、ならない事をまとめる。
優先順位が高いものから並べてゆく。
・図書館
・生産
・武器
・清
・防具
・金策
位であろうか。
よって社は図書館へと向かう事にした。
事前に街の地理は把握していた為に社は迷う事なく、図書館に着いた。
入るとそこは本好きや情報を欲している者には天国の様な場所であった。
社は早々に欲しい情報の書いた本を集め始める。
◆◇◆◇◆
1時間後、やっと社は席に着いた。
社の着いた席の机の上には30冊をも超える本が積まれていた。
内容は多岐に渡り、様々な情報を欲していると言った様子である。
それを傍らで愛おしげに眺める清であった。
1時間程がさらに過ぎ、社が丁度15冊目を読み終えた頃の事。
次の本に手を伸ばそうとした社は手を止め、ウィンドウを開きスキルが増えたかを確認する。
結果増えてはいなかった。
当然であると肯定する。
知識を付けるだけでスキルが得られるのであれば、掲示板で情報が開示されたスキルは皆が持てる様になってしまうのだから。
さて、と息をついて社は次の本を手に取った。
その後も社は順調に本を読み進め、ゲーム内時刻18時。
詰まりは閉館時間を迎えた。
社は計135冊か、と欠伸をする。
それは疲れからくる睡魔であった。
社は司書に帰宅する様に促され、また明日来ますと伝えたて、図書館を後にした。
取っている宿に戻る為の帰路に着く。
清は社の1歩後ろに着いて歩いていた。
社が隣を歩けば良いと言うと、産まれたての赤子の様に頬を染めて、社の肩に頭をコテンと預けたのであった。
ゲーム内で寝て朝を迎える。
清が隣で寝ていたがさして、問題もないであろう。
スーツを着込み、今日も図書館へと向かうが、10時からの開館である為、まずはクエスト集会所に行き、手持ちのアイテムから終わらせる事が出来るクエストを探す。
まだ、始まって間もないからだろうか、南の森に関するクエストは中々に美味しい物が多い。
・蜘蛛の牙を集めて欲しい。
南の森の蜘蛛の牙を最低5個集めて欲しい。
報酬は2500G+追加で取ってきた本数×450G
・クレイブスネークの肉が食べたい。
クレイブスネークの肉が美味しいらしいのだが、どうにも私では狩れそうにない。
どうか、狩った時に少しで良いから肉を分けて欲しい。
報酬は1つで30000G+追加で取れた数×25000G
・クレイブスネークの討伐
報酬は100000G
討伐の証明は怨嗟の大蛇の骨を見せる事とさせて頂きます。
この三つを手に取る。
クレイブスネークとは社が河蛇と呼んでいたものの事であろう。
クエストはどうやら1人1回ではなく、全員まとめて、1回しか受けられない様だ。
カウンターに行こうとする。
すると誰かに手首を捕まれ、阻害される。
社は振り返り、笑顔を貼り付ける。
「どう言ったご要件でしょうか?」
「あの、いや、その、えっと、だなぁ」
「ご要件がないのでしたら私はクエストを受けに行きますので、手を離して頂ければ幸いなのですが」
「────そ、それを待って欲しいんだ」
「どうしてでしょうか?」
「わた、私に売って欲しい。
お前、今蜘蛛の牙を納めるクエスト取ったろ。
だから、そのクエストを止めて私に蜘蛛の牙を売って欲しい───です」
「えぇ、そういう事でしたか。
では貴女は蜘蛛の牙1本に幾らか出せますか?」
「一律600Gで買う」
「そうですか。では、これは受けない事にしましょう。
それではそれ以外のクエストを受けて来ますので、少し待っていて下さい。」
社がそう言うとあどけなさが抜け切っていない、少女の沈んでいた表情が明るくなった。
カウンターに座る受付嬢だと思しき人にクエストの紙を見せる。
「ほ、本当にこれをお受けになられるのですか?」
初期配布の装備品に身を固められた社は怪訝な目で見られてしまった。
長居はしたくないと思い短く肯定する。
そして、実はもう討伐も肉を集める事が終わっている事を告げると、驚愕で一瞬意識が飛びかけている様にも見えた。
肉は規定数含む73個を納めた。
骨は出すには大き過ぎるのでアイテムのウィンドウを見てもらった。
計1930000Gの報酬を手に入れた。
肉のクエストを出した人は破産しているかも知れないなとふと思ったが、社は気に止めないことにした。
さて、と向き直り社は次の商談に足を向ける。
少女を連れて集会所の端の席に着く。
「すいません、待たせてしまって。
遅くなりましたが私のプレイヤー名は社会と言います。
宜しくお願いしますね」
社は持てるだけの柔和な笑顔で名乗った。
「は、いえ、無理を言ったのは私だから。
あっ、私の名前はフルート。
宜しく──────です。」
「それでは、話し合いを始めましょうか。
蜘蛛の牙を一律600で購入して下さると言うお話でしたがお間違いないですか?」
「あ、あぁ。
間違ってない」
「私は蜘蛛の牙の使用方法等は知りませんが、確か売価は400Gが相場だったと記憶しているのですが。
いえ、失礼。」
では、と言って社はトレードのウィンドウを開き鋼糸蜘蛛の牙を幾らか載せる。
「──────ふぇ!?
これ、蜘蛛の牙じゃない。
鋼糸蜘蛛の牙ってもっと上位の奴じゃないですか?」
はぁ、ひ。
え、まさか、また怠惰な事をしでかしたのか。
「すまない、ここで30分、いや、15分待っていてくれ」
そう言って社は集会所を走って出ていった。
◆◇◆◇◆
10分後社は空いているインベントリ全てに蜘蛛の牙を入れて帰ってきた。
その数計297個。
その後フルートには600Gで10個購入して貰い。
「そのなんだか、取りに行かせてしまう事になってごめん────なさい」
「いえ、気にしないで下さい。
私の不注意が祟った様なものですから。
それに口調は特に気にしなくても良いですよ、話しにくいでしょう?」
そう、社は深く反省していた。
自身の怠慢さに、自身の無能さに。
それゆえの裏表ない本音であった。
けれどそれは、社と言う人物をよく知らない人からすれば、不思議で、不気味で仕方なかったのであろう。
だから、フルートは裏返し的な意味で責められているのでは無いかと、詮索してしまうが、悪い人でない事は確かである。
それは、少しなりとも社に関わったフルートにも分かった。
しかし、それでも普段感じえない感覚に戸惑ってしまうのだ。
それを確める為とまでは言わないものの、そう言った意味を含む申し出をした。
「そうか、敬語は堅苦しいから苦手でな、すまんな。
そうだ、迷惑を掛けてしまたから今後とも物を売る時は、私の所で売ってくれりゃあ色付けるよ。
それと、フレンド交換しない?
ここでこうして会ったのも何かの縁だろうしさ」
社が思っていたよりもフルートの口調はずっと男勝りであった。
「フレンド登録ですか、構いませんよ」
「ありがと」
「いえ、そう言えばどのような店を開いているのですか?」
「あぁ、言わなかったな。
私は鍛冶屋なんだよ」
「そうだったのですか。
では、売るものがありましたら、窺わさせてもらいます」
その後、軽く言葉を幾らか交わし、フルートはその場を後にした。
クエスト、蜘蛛の牙を集めて欲しいを受注した。
きっと予想だにしていなかったであろう数を納品した。
納品数287個、計129400Gの報酬を受け取った。
社はふと疑問に思ってしまった。
どうして納品上限をもうけないのだろうか。
まぁ、考えてもままならない、か。
そう思い、社は今日も図書館へと向かった。
◆◇◆◇◆
「どうも司書さん。
先日言ったように本日もやって来ました」
「どうも、社会様。
本日もごゆっくりして行ってください。」
「えぇ、御言葉に甘えさせていただきます」
「この街の人たちは余り図書館を利用してくれませんから、きっとここの本も社会様に読まれる事で大変喜んでいると思います。
そうです、また来ていただける様にと言う意味も込めて。
司書さんでは他人行儀過ぎますから名前を教えておきますね。
私はシナリオ・オルタナティブといいます。
なんなりと及び下さい」
「ふふ、そうですね。
では、親しみを込めてリオさんと呼ばせていただく事にします」
社はそう言って本棚の方へと歩を向ける。
現在時刻が10時過ぎ、8時間程は本が読める訳だが、と本棚の間を抜ける様に歩きながら考える社であった。
本を限界まで抱え運ぶ動作を5回程繰り返し、社は椅子に腰を落ち着ける。
淡々と黙々と物静かな場所で、字の文字の文章の並べられた羅列を目で追い脳内に叩き込んでゆく。
脳内に収めた情報を整理し、連結し自前の知識と統合してゆく。
ともあれイベント前に世界観などの情報収集は恙無く行われていく。
◆◇◆◇◆
社は今日もやはり閉館時間まで本を読んでいたのであった。
図書館から社が出て行こうとするとリオが声を掛けてきた。
「社会様」
「リオさん、どうかしましたか?」
「いえ、特に何があると言う訳でもないのですが。
これを貰っていただけませんか」
そう言ってリオは1冊の本を社に手渡す。
「これは?」
「はい、それは私が過去に認めた、本制作についての歴史、時代別の制作方法についての本です。
ですので宜しければ貰っていただけないでしょうか?
多少なりとも社会様のお役にたてればと思いまして」
「どうしてそのような事を?」
「単純に嬉しかったので御座います。
長らく皆様に利用される事のなかった図書館に、社会様の様な本を好いて下さる方が来て下さったのですから、と思いまして」
「そうですか、ではありがたく頂戴いたします。
それではまた調べる事が出来ましたら、御邪魔します」
社はそう言ってリオから本を受け取り、その場を去った。
社はそのまま借宿までの帰路に着いた。
その道中ウィンドウを開き確認していた時の事だ。
社はある一つの事に気が付いた。
新たに称号とスキルが増えている事に。
・称号
[司書さんからの親愛]
・スキル
[紙製作][本製作]
次回、社死す。
おたのしみに。
ここまで御付き合い下さりありがとう御座います。




