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File:01 社長からの呼び出し

処女作ですので、暖かい目で見て頂ければ幸いです。

 

 やしろかいは人生初と言っても過言では無い危機に瀕していた。

 それは、社が勤めている会社の社長の一言に寄ってもたらされた。


「社君、ご苦労様。いつもありがとね。そうだ、暫く暇を取っていいよ」


 社は戦慄した。

 私は何かやらしてしまったのか、と。

 そして、社は己の之迄の人生の一端を脳内で反芻させる。



 ◆◇◆◇◆


 2020年4月2日13時21分51秒。

 長男、社 会は生誕した。

 その年は東京オリンピックが開催される年であった。

 会場の選定で数多くの問題が発生したが、それらを下し、何とか東京オリンピックは開催された。

 社にはあまり関係の無い話ではあるのだが、日本代表は幾らかの金メダルを獲得したそうだ。


 2020年冬季。

 東京オリンピックが終わっている頃。

 生後七ヶ月にも成る頃には、社は体を支える物が無くとも歩ける様になっていたと聞く。

 生後九ヶ月を過ぎた頃には、簡単な単語を覚え、意思疎通が図れる様になっていたそうだ。


 2021年4月2日。

 社は1歳の誕生日をむかえた。

 別段語ることも無い。


 2023年春季頃。

 社は園児となった。

 其の頃には既に自我が芽生え、自己で考え行動する手の掛からない子供へとなっていた。

 扱う言葉の数も増え、年相応とは少しばかり言い辛い者へとなっていた。


 2025年8月5日2時43分42秒。

 長女、やしろゆいが生誕した。

 社 会の妹にあたる存在の誕生である。

 社は当時五才ばかりながらこう感じた。

 自身はこの妹を守る為に生まれたのだ、と。


 2026年春季頃。

 社は小学生となった。

 そこは、猿の惑星であった。

 いや、猿から脱する為の機関と言えるのかもしれない。

 この頃から小学生、中学生にも留年制度が出来た。

 社にとっては何の事は無かった。

 之迄のと変わらず勉学に励めば良かったのだから、しかしそうとも言っていられない者も少なくはあるが、小学生にもいる様だ。


 2033年春季頃。

 社は中学生となった。

 この頃になり学業に個人差が出始めた。

 小学生の頃から変わらず猿を続けている者は良い成績を残せずに、学年をダブらせる者が出てきた。

 それに加え、そう言う猿に限って問題を起こし、成績優秀者に目くじらを立てると言うのだから、お門違いも良いところだ。

 迷惑極まりない。

 この手の問題児に絡まれる事が増えた事により社は武術を修める事も生活の一部に取り入れた。


 2034年秋季頃。

 社は仕事から帰って自室に子守っきりの父を夕食の為に呼びに行く。

 階段を必要以上鳴らすこと無く、尚且つ迅速に上がってゆく。

 しかし、2階に社が上がりきる前に刺激臭が鼻を衝く。

 珍しく自身の心音が早くなるのを感じながら父の書斎へ歩を進める。

 嫌な憶測が脳裏に過ぎる。

 それを振り切ろうと、歩幅が少し大きくなる。

 書斎の扉を開く、刺激臭は一層強くなる。

 社はいつの間にか俯いていた顔を上げる。

 父の虚ろな光の無い目と視線が会った気がした。

 社はこの時初めて理解不能というものに出会った。

 父は宙吊りになっていた。

 されていたのではなく、なっていたのだ。

 社は無我夢中で何とか父を宙吊りの状態から床に下ろした。

 けれど、手遅れであった。

 何故?

 と、頭を巡らせるが社には分かるはずもなかった。

 ふと、思考を中断させ顔を上げた。

 すると、机の上に遺書がある事に気がついた。

 遺書の内容を簡略化すれば、上司に横領の罪を着せられたそうだ。

 それから幾か過ぎた頃、母がしたから社を呼んだ。

 社は急ぎ母の元へと向った。

 母に父の死を告げ、遺書を手渡した。


 2035年冬季頃。

 ───受験。

 特別視する必要も無い、と社は考えていた。

 普段通りに行えば何も問題ない。

 それだけの事であった。逆に社には周りがどうしてここまで焦る必要性があるのか、と不思議でならなかった。

 特にそう思わざる得ないのが、母のヒステリック具合いであった。

 父の死後、母の精神はとても不安定な状況なのだ。


 2036年春季頃。

 結果、合格。

 社は日本有数の名門校へと特待生として難無く入学していた。

 入学生代表の挨拶は辞退したい、と言うのが社の本音ではあったが、それはそれで自己の印象を損ねてしまう可能性があったので、結局の所は壇上に立ち、恙無つつがなく挨拶を終えて入学生用のパイプ椅子に腰を落ち着けた。


 2037年7月6日。

 母が忽然と居なくなった。

 父の件で相当参ってしまっていたのだろう。

 と、社は少しばかり思考のリソースを割いたが、そんな事はどうでも良いと、脳内から一蹴する。

 何て言ったって結が総合格闘技の大会で優勝したのだから、と。

 社としては危ないから本当の所、格闘技というものには余り携わって欲しくないと言うのが本当の所なのだが、しかし、可愛い結が自身で護身出来るという安心感。

 その双方に板挟みにされ、頭を掻かざる得ないジレンマに悩ませられる社。


 2038年冬季頃。

 またもや受験である。

 周囲の空気が否応無く受験ムードへと切り替わりピリピリしている。

 そう感じる事しかなかった社なのであった。

 それと、もう一つ特筆すべき事があった。

 父の妹───詰まりは叔母にあたる人。

 やしろ葉紅はくが臨時の保護者として社達と共に住まう事となった。


 2039年春季頃。

 結果、合格。



 ─────────割愛。





 ◆◇◆◇◆



「そ、それは、失礼ながらお聞きするのですが、社長それは暗にクビだと私は言われているのでしょうか?」

 社は自身の発言がどれ程失礼に当たるかを理解しながらもそう言った。

「ん、いや、社君のお蔭でかなり業績が上がっているからね。間違ってもクビなんかにはしないよ。それこそ間違って現在の全部署の全部長を解雇すると言う事があっても、社君をクビる事はないね」

 その言葉に社は大袈裟な事だ。と、思うが自身がそうと言って貰える程には評価されているのだ、と確認出来た。

 それに社は社長の口から直接、クビにするという訳ではない、という言質が取れたと少しばかり安心した程であった。

「では、どう言った御言葉でしたのでしょうか?

 有給も溜まらぬ様に適度に消化していたと、私は記憶しているのですが」

「あぁ、そういう事か。

 いや、何、新しい部署を立ち上げようと思ってね」

「───新たな部署ですか。

 それはどう言ったものなのでしょうか?」

 社は切り替える、切り替わる。

 これは仕事だ、利益のある話だ、昇進の話だ、満に芯を形成していかなければならない。

「選んだ言葉が少しばかり悪かった様だね。

 端的に言うよ。社君はVRという物を知っているかな?」

「はい、それは勿論。利用した事はありませんが、知識としては一様には」

「そうか、では早い話、うちもそちらの方に手を伸ばそうかと思ってね。それで社君に明日の午前9時から正式に始まる、それの調査をしてもらいたいんだよ」

「と、言いますと私は暇を頂いている間そのゲームを調べ尽くせば宜しいのですね」

「あぁ、理解が早くて助かる。

 それで、だ。極力前情報は無しでやって欲しい」

「それはどう言った理由でしょう?」

「何、単純な事だ。

 社君に限ってそのような事は無いとは思うが、βテスター諸君の意見に呑まれ偏見等を持たれては、正しい調査が出来ないのでは無いかと言う事だ」

「分かりました、事前に情報を集める事はしない事にします。

 しかし、始まってから内部での情報交換する分には問題はありませんね」

「それは勿論だ。

 では、今日はもう帰って良いぞ。正午に届く様に機器を送っているからな、帰って自身の操作するキャラクターを作っているといい」

「え、正午ですか。では、急ぎ帰らせて頂きます」

「そうか、では頼んだぞ。社君」




「はい、社命とあれば」

御読みくださりありがとう御座います。

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― 新着の感想 ―
[一言] ふとブックマークの中から見つかったので、読み直しています。 2020年にオリンピックが開催されてて、フフっとなりました。 作者様の現状がどうかはわかりませんが、続きを期待しております。
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