カザブの野望編 第22話
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「その魔法石が本物だということはわかりました。それで私に協力してほしいことって何ですか?」
そう聞いたマーガレットは、続くアラシドの言葉に驚き固まった。
「あんたには現王アルカハールを廃するために協力してもらいたい」
「・・・はい?」
マーガレットは予想のはるか斜め上をいくアラシドの言葉に、目を点にして瞬きを繰り返した。
「現王を廃する?」
「そうだ。アルカハールには王の座を降りてもらう」
「それに協力しろと?」
「そういうことだ」
(はいい〜〜〜〜???)
文字通り開いた口のふさがらないマーガレットを見て、アラシドはニヤリと不敵に笑った。
「どうする?」
(いや、”どうする?”って。スケール大きすぎなんですけど!これってつまりクーデターだよね?なんで私が他国の歴史を変えるような一大事に協力しなきゃいけないわけ!?)
「・・・冗談、ですよね?」
マーガレットの期待を込めた問いにアラシドはいい笑顔で答えた。
「もちろん、本気だ」
それを聞いたマーガレットはがっくりと肩を落とす。
「冗談で他国に侵入して魔法石を盗んだり、人を攫ったりしない」
その言葉を聞いてマーガレットはふと思い出す。
「そういえば、以前リチリアからわたしを攫おうとしたのって・・・」
その言葉にアラシドは首を横に振る。
「あれは俺じゃない。アルカハールだ。だがあの一件で奴が喉から手が出るほどあんたの魔法石を欲しがってるってことがわかった。それが俺に今回の作戦を思いつかせた」
マーガレットはそれを聞いて口をつぐんだ。
(つまりアラシドとアルカハールは対立関係にある、ということね)
状況を整理しよう、とマーガレットはこめかみを揉みながら考えた。
今目の前にこの旅の目的である魔法石がある。
その魔法石を取り返すか、破壊すれば彼女の目的は達成される。
彼に協力すれば魔法石は返してもらえる。
だが他国のクーデターに協力するというのはあまりにもリスクが大きく無謀な気がした。
仮に魔法石を取り返したとしても、無事にリチリアまで帰れるかどうかわからない。
ましてアラシドがもし失敗でもしたら、カザブの国家反逆に加担したとしてリチリアが攻められかねない。
では魔法石をアラシドから無理やり奪うという方法はどうだろうか?と考えてマーガレットは脳内で首を横に振る。
アラシドから魔法石を奪取するのは彼女にはほぼ不可能だろう。
見るからにアラシドは鍛えられていて、マーガレットが敵う相手とは思えないからだ。
では寝込みにこっそり魔法石を盗む?
「・・・」
マーガレットはちらりとアラシドを見た。
赤みがかった金の髪に、金の垂れ目がちな瞳、褐色の肌、鍛えられた体。
神が創り出したかのような美貌。
(無理!絶対無理!)
マーガレットは若干赤くなりながらブンブンと首を横に振りたい衝動を耐えた。
明らかにそっちも百戦錬磨な雰囲気のアラシドと、経験皆無なマーガレットでは勝負は見えている。
マーガレットが魔法石を奪うどころか、逆に色々奪われかねない。
なぜか赤くなってうろたえるマーガレットを見たアラシドは面白そうな顔をした。
「もしかして寝込みに魔法石を盗もうと思ってるのか?それはそれで俺は歓迎するが」
口角を上げるアラシドから半端ない色気があふれだす。
マーガレットは硬直した。
その反応自体が彼の問いを肯定していることに彼女は気付かない。
「なんなら今晩にでも試すか?」
そう言って身を乗り出すアラシドをマーガレットが手で制した。
「いえ!大丈夫です!寝込みは襲いません!ご安心を!」
慌てて言い募るマーガレットにアラシドは耐えられないと言った風に吹き出すと声をあげて笑った。
「あんた・・・本当に面白いな」
そう言って先ほどよりも色気が増した目でマーガレットを見る。
「本気で口説きたくなってきた」
「け、けっこうです!婚約者もいますし!」
挙動不審なマーガレットをアラシドはなおも面白そうに見る。
「婚約なら破棄すればいい」
「はあ?無理ですから!それに破棄したくありませんし!」
「まあまだ時間はある。気が変わらない保証はないからな」
アラシドは妖艶に笑ってそう言った。
マーガレットはそれを見てハァとため息をつく。
(無理やり奪うのも、寝込みに盗むのも無理。となると、残るは一択のみ・・・)
「さあどうする?俺に協力してくれるなら魔法石を返そう。協力してくれないならあんたがこの魔法石を手にいれる機会は一生失われる」
その言葉にマーガレットはぐっと言葉に詰まる。
彼女はしばらく沈黙した後、瞳に決意を込めてアラシドを見た。
「わかりました。協力しましょう。ただし、条件があります」
マーガレットの言葉にアラシドが軽く眉をあげる。
「なんだ?」
「リチリア国がクーデターに加担したと国内外に思わせないようにすること。リチリアから来たメンバーが全員、なんの咎も受けず、怪我もせず、無事に国へ帰ること。万が一クーデターに失敗して魔法石を私に返すことができない状況になった場合、必ず破壊して使用不能な状況にすること。これらを守っていただくのが条件です。それが守れないのであればこの取引は受け入れられません」
それを聞いたアラシドは勝ち誇ったようにニヤリを笑った。
「わかった。必ず守ると約束しよう」
マーガレットは彼のその笑顔をいやそうに見やる。
マーガレットとアラシドは事の詳細を明日詰めるということにして、その日はもう休む事にした。が、マーガレットが部屋へ案内してもらうと、彼女に与えらえた部屋はなんとアラシドの部屋の続きの間だった。
マーガレットがそのことに抗議すると、「ここが一番安全なんだ」とアラシド。
彼女が疑わしげにジトッとアラシドを見ていると、彼が襲わないと約束したので、疲れていた彼女はこれ以上ごねてもしょうがないと判断して早々に部屋に引っ込んだ。
そしてベッドに潜り込んだマーガレットはあっという間に眠りの闇へと落ちていった。




