夜
夜、静けさと暗さが私を魅了する。
いつからだろうか。毎晩、出歩くようになったのは。
夜の暗闇は大好きだ。特にこれといった理由があるわけではないが、ただ闇の中をさまよう自分に酔っていたのかもしれない。
もう幾度となく歩き続けたこの道を、今日も辿る。
「暗い・・・フフフ」
誰もいない、私だけの世界。言うなれば私は夜の王だ。目に見えるもの全てが私のもの。誰にも触れさせるものか。
誰にも、邪魔させるものか・・・ダレニモ
あれは17歳の秋の始め、涼しくなってきた時期だった。
いつものように過ごし、いつものように夜を楽しむ。
そのはずだった。
ただ一つだけ違うもの、見つけてしまった・
「ダメじゃん、邪魔したら」
追いかける、足が付いてこない程に。
どこまで行っても暗闇は続き、私の世界も広がっていく。
それはすべて私のもの、お前の居場所なんかどこにもないよ。
走る、逃げる、走る、逃げる
走る、追いつく・・・・・・振り降ろす
手に入れたのは、新たな静寂と、ほんの少し大きくなった自分の世界。そして、赤く染まった体と、とびきりの開放感。大好きな暗闇が、私にとって新たな魅力となった。
そして今日も、私は暗闇をさまよう。ああ、とても静かで昂ぶってしまう。