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赤い瞳  作者: ぱくどら
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【第二部 番外編】〜シンと雨〜

実はこの部分を本編として載せようかどうか悩んでいました。

あまりにもシンの思考部分が強いので物語にならないのではないかと思いました。

省こうと思っていたんですが…

この話があれば次の話にも入りやすいのではと思ったので載せることにしました。

なのであくまで番外編です。ちなみにヒロが山篭りをしているときのシンの心境です。

詩っぽくしようと思って書いたんですが…

無駄に行に隙間を入れているぐらいにしか思われそうにないですね(^^;

シンの心境なんて興味ねぇと思う方は飛ばしてもらっても結構です。

 数日間ヒロが村から離れた。何も言わずいなくなったのでかなり驚いてしまった。


 どこに行ったのかさえ知らなかったので、ヒロの身が心配で仕方なかった。


 村長たちに聞きに行っても、教えられないの一点張りでどうしようもない。


 だが、ヒロがいないとわかっていても足は自然と丘に向かった。この丘にいると、ヒロがいるような気がするからだ。


 寝転がると、草のにおいと花の香りが鼻をくすぐる。


 空を見渡せば白い雲が絹のようになめらかに流れ、空を着飾っている。



 空は見ようと思わない限り、人の目に触れることはない。


 常に頭の上にあって、時には雲に邪魔され見えないこともある。


 ここにいるんだ、と訴えたいのに空は動くことさえ許されない。


 それなのに、ふと見上げた人たちに溢れんばかりの温かさをくれる。


 そんな空がどことなくヒロに見えるときがあった。


 山の向こうからは暗い雲がじわじわと迫っていた。


 その方向はラント城。じわじわと迫る様子はまるでラント王だった。


 着飾った空はヒロのようで、じわじわと迫ってくる雲は王のようで……。


 そんな風に思いながら、俺は考え込んだ。


    ◇    ◇


 村長たちは、ヒロは幸せになれると言い切っていたが、俺はそうは思わなかった。


 今まで村長たちはヒロを無視するかのような扱いだったのに、急にヒロの幸せを考えるなどおかしな話だった。


 俺は単に王様と何かしらの繋がりがほしいだけではないだろうか、と考えていた。


 この村は自分たちの食料の確保が精一杯で、貢ぐ作物の量も少ない。


 王の機嫌をとらなければ、いつ消されてもおかしくないはずだ。


 消されないために考えた策が、ヒロと王の結婚……。


 ヒロを道具としか見ないやり方は村長がやりそうな手口だ。


 だが、逆にヒロとの縁談が失敗に終わってしまったら……間違いなく消されるに違いない。


 ヒロと王が結婚し村を存続するのか、破談になり村が消されるか。


 生まれ育った村は大事なことは間違いない。


 だが、これ以上ヒロを苦しめたくない。


 ヒロの過去を聞いた俺はなお一層強く思うようになった。


 ヒロだけが結婚という王の束縛を受け続ける中で、俺が村でのうのうと暮らせるだろうか。


 ……暮らせるはずがない。


 だが、一体どうすればいい。


 ……いっその事、ヒロはこのまま帰ってこないほうがいいのではないか。


 この村から逃げて、別の村で生きていく。


 世の中は広い、きっとヒロを受け入れてくれる村もあるはずだ。


 だがそうなると俺の前からヒロはいなくなる。


 いつも、隣で寂しそうな顔を浮かべるヒロ。


 今にも泣きそうで、いつも一人。


 誰かが守ってやらないと、今にも消えてしまいそうな背中。


 俺が守る、そうヒロには言った。


 しかし、他の村に移ることできっと誰かがヒロを守ってくれる。


 そうだ。


 ヒロと会う前の生活に戻るだけじゃないか。


 俺の勝手でヒロがこれ以上不幸になる必要はない。


 俺が再び一人で生きていけばいいのだ。


 俺と離れることによってヒロが幸せになるのなら、それでいいんだ……。



    ◇    ◇


 気がつくと暗い雲が太陽の光を遮り始め、かすかに雨のにおいが漂っている。


 身体を起こし空を見上げると、じわじわと迫っていた雲が空一面を覆いつくそうとしていた。


 そんな雲から一粒の雨が俺の頬に落ちてきた。


 その雨粒はゆっくりと涙のように頬を伝っていく。


 さほど時間がたたない内に、暗い雲に覆われ空が見えなくなってしまった。


 暖かな陽気に似合わない冷たい雨が降り始める。


 冷たい雨は俺の心を見透かしたかのように、ただ静かに濡らしていった。


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