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赤い瞳  作者: ぱくどら
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【最終部 赤い瞳】〜ヒロと女王の誘導〜

 馬に跨った女王を先頭に、私、兵士という順で村の中を進んでいく。

「ヒロ、あなたは先読みで未来が見えるそうですが……そのことで少々頼みたいことがあるのです」

 黙々と歩いている中、女王が口を開いた。

「今、ラント王の行方がわからないのです。ここに攻め込んで一緒に来たことは間違いなのですが、姿が見えないのです。王を捕らえることができればこの戦闘は終わるのですが、それができず戦闘が続いています。私の兵士も全力で探しているのですが……」

 女王が馬を止め、振り返り私に顔を向けた。

「あなたの能力で、ラント王の居場所を突き止めてほしいのです。これ以上無駄な争いはしたくない……お願いできますか?」

 女王は真直ぐ私を見つめる。だが、私の能力はあくまで先読みであって未来に起こりえることしか見えない。居場所を突き止めることは不可能だった。

「……パピス女王様……私の先読みは、未来に起こりえることしか見えません。なので……王の居場所を突き止めることはできないのです」

「……やはりそうですか。……一国の女王たる者が、他人にすがっては示しがつきませんね。今の言葉は忘れてください」

 一瞬悲しそうな表情を浮かべたが、前を向き再び前へ歩き始めた。今の言葉からすると、やはりパピス女王は戦闘を好んでいないようだった。


 女王に導かれた場所は、私の家だった。私の家だけレンガ造りの家だったためか、崩壊を逃れたようだった。家の前には何十人とパピス兵と見られる兵士が立っていた。その兵士たちがパピス女王に気づき、一斉に敬礼をした。

「ラント王は見つかったのですか?」

 すると、一番近くにいた兵士が一歩踏み出てきた。

「……残念ながら見つかっておりません!今も捜索中であります!」

「……ご苦労様。あなたたちは続けてこの家の護衛をしていなさい」

「はっ!」

 女王は馬から降りた。手綱を一緒についてきた兵士に手渡すと、私の目の前に立った。私よりも少しだけ背が高い。

「さぁヒロ、この家に村人たちをかくまっています。一緒にきなさい」

 女王は堂々と兵士の間を歩いていく。私も遅れないように女王の後ろを歩いていった。

 玄関のドアの前に来ると、女王は横に避け先に入るように促した。私は玄関のドアの前に立ち、ドアを開けた。

「おお、ヒロじゃないか!無事だったのか!」

 ドアの向こうには村の人たちがいた。玄関のドアの向こうは廊下になっているが、そこにも何人かの人が立っていたり、座ったりしている。その村の人たちが私を見るなり、近寄ってきた。

「……村長はどの部屋にいるのですか?ヒロを連れて行きたいのです」

 私の後ろにいた女王がすっと私の横に立ち並んだ。頬が緩んでいた村の人たちの顔が緊張のせいか一瞬にしてこわばった表情になった。

「そ、村長は一番奥の部屋です」

「ありがとう。……ヒロきなさい」

 そう言うと、女王は急ぎ足で村の人たちの間を通った。遅れをとるまいと私の足が自然と急ぎ足になる。

「し、しかし!その部屋には……!」

 後ろで村の人の声がしたが、女王は振り向かなかった。


 一番奥の部屋は来賓の人たちを迎えるための大部屋だ。王を迎えたときにも使用した部屋だった。大きなテーブルがあり、一番広い部屋だ。その部屋に向かっている最中も廊下には村の人たちがいた。村の人は私を見て驚きの表情浮かべたり、泣いて喜んでいたりした。だが、そんな人たちと話している余裕などなく、女王は足早に大部屋を目指した。

 行くと大部屋の前の廊下には、うなだれ座り込んでいる人たちがいた。

「そこの者、この部屋に村長がいると聞いたのですが、間違いないですか?」

 女王の声に反応し、ゆっくりと頭をあげた。

「……えぇ間違いないです。ここに、村長と……」

「ありがとう。ヒロ、入りなさい」

 女王は村の人の言葉を遮り、大部屋のドアを開けるように促してきた。私はドアの前に行き、ゆっくりとドアノブに手を掛ける。ドアノブを回し、ドアを開けた。

 

 部屋に入って一番初めに目に付くのは大きなテーブルだ。長いテーブルで部屋の奥まで続いている。ドアを開けて目に入ってきたものは、村の人の多さだった。椅子に腰掛けている人はもちろん、床に座り込んでいる人たちもいる。どの人たちもうなだれ暗い顔をしていた。入ってきた私にさえ顔を向けない。

 テーブルをたどり奥まで視線を上げると、テーブルの上に誰かが寝ている。その人を囲むように、叔父と叔母、それにおばさんたちがいた。

 嫌な予感がした。

 私は床に座っている村の人の隙間を縫ってそこへと駆け足で近寄った。

「叔父さん、叔母さん!」

 私の声にその場にいたみんなが一斉にこちらを振り向いた。どの顔も今にも泣きそうな顔をしている。

「ヒロ!……シン君が……シン君が……!」

 普段滅多に取り乱さない叔母がハンカチを握り締め、慌てふためいている。

「ヒロ、無事でよかったよ!でもね……シンくんが……!」

 いつも気丈なおばさんもどこかおびえているようだった。

「おお、ヒロ!……お前がきてくれてよかった!シンが大変なのだ!」

 叔父はそういうと、場所を私に譲ってくれた。その空いたスペースにゆっくりと移動する。心臓の鼓動が高まる。その場所に立ち、ゆっくりとテーブルの上を見た。


 そこには血だらけで倒れているシンがいた。



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