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赤い瞳  作者: ぱくどら
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【第二部 王、訪問】〜シンと兵士〜

 村人が王を出迎える準備をしている中、俺は一人丘へ向かった。王に頭を下げるなど俺にはできない。俺が抜けていても王はどうせ気づかないだろう。

 しばらく歩いて丘に到着した。丘から村を見下ろすと、村人が綺麗に二列並んでいる。すると、村長の家から三人が出てきた。三人とも普段見ないような格好をしている。遠くからなので顔ははっきりと見えないが、一番背が小さいのがおそらくヒロだろう。白いワンピースがひときわ目立っている。

ふと見ると、綺麗に並んでいた村人が次々と頭を下げていっていた。その先には軍隊とも思える王の軍団が村を行進している。数えられないほどの兵士が馬車の後ろを歩いていた。先頭の馬二頭が止まると、一斉に行進をやめた。すると、馬車の中から一人の巨漢がゆっくりと降りてきた。

 あれがラント王。二人の側近を従えながら歩く姿を見ると、直感的にそう感じた。ラント王は一言二言三人と会話すると、家の中へと入っていった。


 父親を殺したラント王が今この村にいる。それなのにどうすることもできない。圧倒的な力を誇示する王、ただ影から様子をうかがうしかない自分。あまりの力の差に愕然としてしまった。

 王が家の中に入ったあとも、兵士たちと村人たちは全く動こうとしない。いつも騒がしいはずの村が、静まり返っている。風で揺れる木々の音や、鳥のさえずりさえもはっきりと聞こえるほどだった。

 そんなとき、村長の家の裏口から一人の兵士が出てきた。だが様子がおかしい。なにかを引きずっている。目を凝らしてみてみると…同じ格好の兵士を運んでいるように見える。しかし引きずられている兵士は全く動かない。裏山のふもとまで行くとその人物を置いた。ひざまずき何かを確認しているような動作をしている。すると、放置したまま家へと戻っていった。しかし、放置された人物は動こうとしない。なにかがおかしい。そう思った俺は近くまで行ってみることにした。


 裏山の木に隠れ、放置された兵士の様子を見てみた。動いた様子はない。恐る恐る近づいてみる。近づく中でも俺に全く気づかない。手の届く範囲まできたとき、兵士が動かない理由に気がついた。男の腹部から真っ赤な血がにじみ出ている。今でも出血しているのか、どんどんと広がりつつあった。

「お、おい!あんた大丈夫か?」

 頬を叩いても反応がない。だが首筋に手を当て、脈を調べてみると動いていた。まだ生きている。しかし、どこか見覚えのある顔だった。

「しっかりしろ!今手当てしてやるからな…」

 その男を担ぎ、急ぎ足で家へと向かった。


 俺の家に着き、ござの上にその兵士を寝かした。俺の家は立派なものではなく、土壁で土間と狭い座敷に囲炉裏がひとつだけあるというシンプルなものだった。だがほとんどの村人の家は俺と同じ構造だった。

 つれてきたものの医学の知識はない。どうすればいいのか全くわからなかった。俺が悩んでいる間も出血し続けている。とにかく、血をふき薬草を塗ることにした。その兵士の着ているものは立派なものだった。色鮮やかな色彩に金ボタン、靴は本皮のブーツ。どこかの貴族を思わせるような格好だった。そんな服を慎重に脱がしていき、血をふき取る。家にあった薬草を壷から取り出し傷口に当て、その上から包帯を巻いていった。

 巻き終えたとき、男が呻き声を上げた。

「……気がついたか?!」

「……くっ……一体ここは……」

 目を開けたその男の顔。俺はそのときようやく思い出した。

「……!あ、あんたは……あの時の……!」


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