火の独白
気付けば、この世界のポツンと存在していた。
そう意識した時には既に、揺れていたけれど、アタシが止まってみると世界も止まってしまった様な気がした。
今までは何も感じていなかったはずなのに、急に寂しくなって、慌てて本当に全てが止まってしまっているのか、動いているものはないのか、探した。
そして、動いているものを見つけては、安心する。
ある時は呼ばれた様な気がして、それに応じる様に、そちらの方へと向かった。
似たような性質を持つもの達に慕われて、それもまた心地よくて、1つの場所に留まった事もある。
精霊が生まれる瞬間に立ち会い、逆に消えてしまう最期を看取りもした。
看取った事で精霊にも死があると知って、その日が来るのが、いつなのかまでは分からないけれど、その時にポツンと1人ぼっちで消えてしまうのは嫌だった。
だから、きっと同じくらいの時間をこの世界で過ごせそうな、リマの側にいる様になった。
精霊と交わった事で、自分は特別なのだと気が付いたからだ。
アタシには大きな力がある。
自分から行きたいとは思わない、そんな場所さえ、その気になりさえすれば、行く事は可能だと分かっている。
どこかへ行こうと思う気持ちさえあれば、疲れさえ感じずに移動出来た。
そもそも、疲れ、というものは、人間と関わる様になってから知った。
定められた様に、人間を好ましいものとしか思えない。
リマとは、特別に好きになる人間も似ていた。
けれど、特別に好きと感じるエイラジャールと、地の彼との関係を見て、アタシは恐怖した。
動くものも動かないものも、全て飲み込んでしまう地の彼と、全ての精霊を引き付け捕らえてしまうエイラジャール。
全てを自分の周りに、留めてしまう2人のような存在には絶対になりたくはない。
そんな存在になってしまうくらいなら、特別に好きとは感じない人間を主人にする。
火と水の力を使いこなせるだけの、人間がいい。
いっそ、精霊の力だけを求めている人間だっていい。
だから……。
「わああ、フェシーにリマっ! 元気にしているか~っ?」
わざと必要な時以外は、エイラジャールに姿を見せない様にしているのだから、久々に会ったのは当たり前なのだ。
アタシの決意も知らずに、嬉しそうに声を掛けて来る、この人。
そんな、エイラジャールが、アタシは嫌い。
この人は、精霊としての定めに逆らってまでアタシが嫌う、唯一の人。




