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売店員と国の結界  作者: きいまき
小話
24/31

火の独白

 気付けば、この世界のポツンと存在していた。

 そう意識した時には既に、揺れていたけれど、アタシが止まってみると世界も止まってしまった様な気がした。


 今までは何も感じていなかったはずなのに、急に寂しくなって、慌てて本当に全てが止まってしまっているのか、動いているものはないのか、探した。

 そして、動いているものを見つけては、安心する。



 ある時は呼ばれた様な気がして、それに応じる様に、そちらの方へと向かった。


 似たような性質を持つもの達に慕われて、それもまた心地よくて、1つの場所に留まった事もある。

 精霊が生まれる瞬間に立ち会い、逆に消えてしまう最期を看取りもした。


 看取った事で精霊にも死があると知って、その日が来るのが、いつなのかまでは分からないけれど、その時にポツンと1人ぼっちで消えてしまうのは嫌だった。

 だから、きっと同じくらいの時間をこの世界で過ごせそうな、リマの側にいる様になった。


 精霊と交わった事で、自分は特別なのだと気が付いたからだ。


 アタシには大きな力がある。

 自分から行きたいとは思わない、そんな場所さえ、その気になりさえすれば、行く事は可能だと分かっている。


 どこかへ行こうと思う気持ちさえあれば、疲れさえ感じずに移動出来た。

 そもそも、疲れ、というものは、人間と関わる様になってから知った。




 定められた様に、人間を好ましいものとしか思えない。

 リマとは、特別に好きになる人間も似ていた。


 けれど、特別に好きと感じるエイラジャールと、地の彼との関係を見て、アタシは恐怖した。


 動くものも動かないものも、全て飲み込んでしまう地の彼と、全ての精霊を引き付け捕らえてしまうエイラジャール。

 全てを自分の周りに、留めてしまう2人のような存在には絶対になりたくはない。


 そんな存在になってしまうくらいなら、特別に好きとは感じない人間を主人にする。


 火と水の力を使いこなせるだけの、人間がいい。

 いっそ、精霊の力だけを求めている人間だっていい。


 だから……。


「わああ、フェシーにリマっ! 元気にしているか~っ?」

 わざと必要な時以外は、エイラジャールに姿を見せない様にしているのだから、久々に会ったのは当たり前なのだ。


 アタシの決意も知らずに、嬉しそうに声を掛けて来る、この人。

 そんな、エイラジャールが、アタシは嫌い。


 この人は、精霊としての定めに逆らってまでアタシが嫌う、唯一の人。





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