3/13 09:34 『兆し』
この物語は、実際の災害を元にした『フィクション』です。
実在する団体や実際に起きた出来事も記載していますが、あくまで個人の創造物であり、一意見として捉えて頂けると幸いです。
全ての皆様が、一刻も早く『日常』を取り戻せる事をお祈りしております。
翌朝、彼は仕事を終えて畑へと向かった。
引越しに備えた幾つかの荷物を運び、ジャガイモを植えるための準備を行う。
彼が協力している近所の地域NPOの拠点へと向かうと、既に活動を始めていたおじさんたちがいた。
「ねぇ、油頂戴よ油!」
突然そう声をかけられた彼は、最初何のことなのか分からなかった。が、その人が持っている容器を見てすぐに見当が付く。
……ガソリンが無いのだろう。
そしてそれと同時に、早くもガソリンの供給量不足が起きている事を悟った。
期待していた耕運機のガソリンも無かった事から、彼は予定していた耕作作業を取り止めて、引越しの準備を行う事にする。
そうして彼の荷物が置いてある、少し前まで住んでいた、山奥の古民家へと向かった。
道中で彼は考える。
――オイルショックを甘く見てはいけない。
原子力以上に、今の文明が石油に依存して成り立っている事は自明の理だ。
それは真っ先に思いつく、車への給油ができなくなるという影響だけではなかった。
もちろん、車社会が崩壊するということは一番重要な問題だ。
車が使えなくなるということは、物流が破壊されるということに等しい。
物流が破壊された場合、都市圏は完全に麻痺する事だろう。今や、都市でどれだけの生産が為されているだろうか?
雑貨などの朽ちないものならばまだ良い。
だが、食料品などの生活必需品は、ほとんど地方からの輸送に頼っている状況なのだ。
さらに、日本人口に対して3%と言われている農業人口の大部分が地方に存在するのである。
食料の供給が無くなったら、都心の秩序など紙切れのようにペラッペラに吹っ飛んでしまう事だろう。
昨日のスーパーの状況を見ても、これはあながち杞憂だとは言えないのではないかと、彼には戦慄が走った。
ちなみにもっと深く考えた場合、長期的にもガソリン切れの影響は大きい。
何故なら、今日彼がやろうとしていたが断念した様子をみれば分かるように、現代の農業すらもほとんどが石油に依存して成り立っているのだ。
3%の割合でも国内の自給を賄えているのは、偏にガソリンによるトラクターなどの大型機械を使った慣行農法、そして農薬や化学肥料などの発達による、『科学と化学』の進歩によるもの以外にない。
つまりは、ガソリンがストップしたら、食糧生産もストップする事に他ならないのだった……。
そう考えると、今回の地震によって懸念される影響は、農業部門においてもかなりのものだろう。
被災地を含むその周辺地域では、オイルショックによって生産量が激減してしまうのだから。
……そしてこの後に起こる『放射能汚染』によって、さらにその影響は拡大することとなる。
今年のリンゴ価格は高くなるだろうな……と、彼の好物の事をぼんやりと考えた。
色々なブログを紹介しましたが、今回の情報はこれまでと一転した内容です。
詳しくは下記をご覧下さい。
http://npo-uniken.posterous.com/46132557