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Earthquake  作者: 安楽樹
第一章 日常の崩壊
2/21

3/11 14:58 『一次情報』

この物語は、実際の災害を元にした『フィクション』です。

実在する団体や実際に起きた出来事も記載していますが、あくまで個人の創造物であり、一意見として捉えて頂けると幸いです。


全ての皆様が、一刻も早く『日常』を取り戻せる事をお祈りしております。


地震を日常のものとして捉えたといっても、彼にできる事は大して何も無かった。

……ちょうど今月後半に控えている引越しに向けて、できる限り荷物は減らしている真っ最中だったからだ。


元々、彼の家財道具はそんなに多くない。

TVも無かったし、一人暮らし用の小さめの冷蔵庫なんてほとんど空っぽだ。もちろん、非常食の準備なんてどこにも無い。

これは後になって気づいた事だが、地震対策のまず第一歩である『机の下に隠れる』ための机すら彼の部屋には無かったのだった。


唯一存在していた小さめの机は、その下に無理矢理隠れようとしたら、今度は無理をした体が悲鳴を挙げてしまうに違いないほどの、狭い隙間しか無いような代物だった。

……まあそれ以前に、彼の頭の中にはそんな対策の欠片すらも浮かんではいなかったので、例えそんな机があったとしても意味は無かったのかもしれないが。


というのも、彼の住んでいる郊外地……というよりむしろ、首都に存在しているということが申し訳ないぐらいの田舎地方においては、少し歩けばすぐに建物なんて周囲に建っていないような場所や駐車場がいくらでもある。

下手に屋内にいるよりも、さっさと外に出て十秒やそこら移動するだけで、よほど安全な場所があるからと無意識的に考えていたからかもしれなかった。


ともかく、そんなような事をざっと考えた後、大して持ち出す必要がある荷物なども無いということが分かり、一旦落ち着く。

落ち着くと今度は、この地震が与える影響について調べる必要があると考え始めた。


前述した通り、彼の持っているメディアは、屋内においては唯一つ、ノート型のPCで閲覧できるインターネットのみだ。これを起動する。

少しだけ時間がかかった後、見覚えのあるロゴが浮かび、聞きなれた起動音が響いた。

いつものように見慣れたデスクトップが表示されると、彼はInternet Explorerのブラウザを開く。

ちなみに彼は、PCやネットは日常のように使うが、それほどマニアというわけではない。速度や使い勝手を優先した、Windows付属以外のブラウザを使ってはいなかった。


そして、とある事情によって、しばらく入手する情報を制限していた彼は、メジャーなネットメディアの一つであるYahooJapanのサイトを開き、ニュースを確認する。


そこには、今起こった事実がニュースらしく簡潔にまとめられ、記述されていた。

そして、尚も続く余震の情報が、専用ページに続々と更新されている。その地震の頻度の多さを見て、彼は今回の異常事態をどことなく感知したのだった。

しかし、起こっている事を把握したおかげで、さっきまでの漠然とした不安感は大幅に減ったような気がする。

「わからない」ということが、これほどストレスを与えるという事を、彼は知らなかった。


遠く離れたこの場所でさえそうなんだから、実際の被災地ではどれほどの事だろうか。

ライフラインも断絶され、外からの情報がほとんど入ってこないだろう現地の混乱は、想像する事もできないままだった。


そうして彼は大まかな情報は得る事ができたものの、まだもう少し細かい部分についての情報を求めた。

特に、これから社会がどのような動きになっていくのかを知る事が、その先の未来を考える上で重要だ。

いつまでも車の中でラジオを聴いているわけにもいかないので、彼は久々にネット上で二百文字の情報が行き交う、とあるサイトを開いてみる事にした。


一応、手回し式のラジオは車に積んであった。

【非電化工房】にて購入した、携帯電話が充電できるタイプのライト付きの物だったので、いざというときにはこちらを使えばいいだろう。「備えあれば憂いなし」という諺を身を持って実感したのは久しぶりだ。


ブラウザのタブを一つ増やし、お気に入りにストックしてあったURLを選択する。

またしても見覚えのあるTOPページが表示された。

こちらも随分と前から発信する事も閲覧する事も控えていたのだが、改めて表示した画面には予想通り、ほぼリアルタイムの世間の動向が流れ続けている。


大まかには、各地の安否情報や被災状況、そして元気付けるためのメッセージや危険を知らせるための呼びかけなどが目に付いた。

その中でも一番多かったのが、環境関係のクラスタに所属していた彼のつながりにおいて、『原発』の危険性をここぞとばかりに訴える書き込みだった。


……彼はしばらくその情報の渦に身を委ねていたが、ただでさえ人ごみが苦手な体質であるため、程なくして、その「感情を交えた情報の津波」に眩暈がしそうになり、一時的にその窓を閉じる。


気分を落ち着かせるために、再び読みかけだった小説に目を落とし、夕食は余っていた食材で適当に食事を済ませる事にした。

……何だか、食べたような気がしない。少し胸焼けしているような感覚だった。


そうして夜は更け、時折訪れる余震に神経を割かれながらも彼は何とか眠りについて、その日は過ぎていった。




こちらのブログにおける情報を参考にしております。


http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65613403.html

http://xdl.jp/diary/?date=20110313

http://ameblo.jp/mikio-date/


『非電化工房』/http://www.hidenka.net/jtop.htm


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