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Earthquake  作者: 安楽樹
第二章 ASAP
17/21

3/19 15:43 『司祭』


あっという間に車の中に戻ってしまった大芝に続いて一同の前に出て来たのは、エプロンをした女性だった。

涼より少し上……30代半ばぐらいだろうか?黒髪にニット帽を被り、白いダウンジャケットを羽織ながら、暖かそうな手袋やブーツも身に付けている。

だが、やはり何より印象に残ったのは、白地に花柄がプリントされたそのエプロンだった。


「……唐沢美晴と言います。『司祭プリースト』チームのリーダーを一応やってます」


穏やかな声でそう言うと、ぺこりと皆に向かってお辞儀をする。

……涼や他の面々も釣られて、軽く頭を下げた。


「このチームは、食事や拠点作り、補給を担当しています」


なるほど、……それでエプロンか。

そこにいたみんなが納得したようだった。

……そういえば微かに、食べ物の匂いもする。

気になった涼を始め、他の人々の心を読んだかのように、美晴と名乗った女性は話を続けた。


「私たちは、仕事の担当を色々分けているので、私たちがここの人たち全員の食事を賄っています。……食料の調達も行っていますが、これは『商人』チームと連携してやってます」


そう言うと美晴は、にこりと笑う。

涼を始めとした、そこにいた男たちのほとんどが、ドキッとしただろう。……それほどの、美しい笑顔だった。

まるで、ここが凄惨な事件が起きた場所であることを一時忘れさせてしまうほどの微笑み。

司祭……とはよく言ったものだ。涼は思わず納得する。


そんな男たちの心境などには全く気付いていないかのように、美晴はチームの説明を続けている。


「他にも私たちは、燃料の確保と分配も行っています。……ガソリンや、ガスなんかですね。必要な方は、後ほど申請して頂きますので」


なるほど……補給部隊、と言うわけか。改めて涼は納得した。

軍隊でも重要なのは、補給線の確立だ。兵站部隊は、派手ではなく地味な役割の組織だが、その実最も大事な役目を持っているのである。

篭城などの長期戦において、その重要性は歴史が証明している。


……特に、燃料の確保は一番懸念されている出来事の一つだった。

これは後で聞いた話だが、他の人々は高速道路の毎回のSAサービスエリアで、常に燃料を満タンにしてきたらしい。それは、こちらでは給油することなどできないと思っていたためで、実際その通りだった。

福島に入る辺りからは、もう全く給油ができず、次にいつ入ってくるかも目処が立たない状態だったと言う。


「後は、拠点作りも担当してます。今、大きめのテントなどを調達している所なので、それが手に入れば受け入れられる人数ももっと増えるんじゃないかと思ってます。……あ、それから集まってきたボランティアさんがいたら、まずうちのチームに回して下さい」


美晴はそう言うと、荒城に合図をしてそそくさと戻っていく。

きっと、時間から見ても食事の支度をする頃なのだろう。それに、今の説明を聞いていたら、結構やることは多くて忙しそうでもある。

ボランティアの窓口を担当していると言うことからも、事務局的な役割もあるようだ。

あの穏やかな笑顔を見る限り、とてもそうは思えなかったが、実は結構やり手なのかもしれない……。


周囲を見てみると、おそらく同じようなことを考えている男たちが多そうだった。


今回の出来事は、『補給』が本当に重要だと思いました。

軍事行動でも、兵站部隊が大事だというのがよく分かるぐらい……。

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