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Earthquake  作者: 安楽樹
第二章 ASAP
16/21

3/19 15:40 『魔術師』

その声に呼ばれて出てきたさっきの男性は、車から降りる時につまずいて転びそうになっていた。


慌ててずり下がったメガネとニット帽を押し上げるが、別につまずいたからといって恥ずかしそうな様子は無い。

それよりも、思考がどこか別の方に飛んでいるのか、車から降りてきても、視線がこちらに向かうのにしばらく時間がかかっていたようだ。

涼は改めて男を見る。

……背はそれほど高くなく、メガネを掛けてダッフルコートという格好だった。

眼鏡は特におしゃれだったりするわけでもなく、よくある黒ブチで少し厚めのフレームだ。

男の外見に非常にマッチしており、完全に実用重視と言った雰囲気が醸し出されている。


「あ、大芝です」


男はようやく意識の焦点が場に合ったかと思うと、ぶっきらぼうに挨拶をした。

……しかし、その視線はすぐに明後日の方を向いてしまう。

斜め右上を見ながら、大芝と名乗った男は忙しなさそうに話し始めた。


「……えーと、俺たちのチームは、情報ネットワークを作る事と、ネット上での情報収集や広報が中心ッスね。呼び名は『魔術師ウィザード』」


とても、ぼんやりとしたその見た目からは、魔術師なんて神秘的な名前は似合わないような気もするが、その名の由来……というか、チーム名の意味するものが何なのか、後々になって涼は思い知らされる。

だが、この時点ではそんなことも思いつかず、ただぼんやりと大芝の話に耳を傾けるだけだった。


「ネット関係に詳しいヒトがいたら、お願いします。救援関係のサイト作りと情報収集、あと情報発信なんで、別に技術者でなくても大丈夫」


涼も、通信ネットワークの設営というのは、非常に大事だと思っていた。

仙台周辺までであれば、普通に携帯が使えたのだが、ここ石巻に入ってからというもの、場所によっては表示が圏外のままの所も多かった。


通信が出来なくては、情報のやり取りが出来ずに孤立してしまう。

この情報化社会になった今、それが遮断されるだけで、相当生活は不便になるに違いない。……なにより、世の中がどうなっているのか分からない、というのが怖い。

もしかしたら、このまま救助が来ないんじゃないか?……という気にすらさせられるのだから。


「コーディングとかめんどくさい部分は、都心の方に丸投げするんで、ここで重要なのは、情報の整理ッスね。……何が必要で、何が要らないのか。あと、何が本当で、何が嘘なのか。電源には限りがあるんで、ポイントを絞ってやってます。場合によっては、アナログでも」


再び大芝の言葉で我に返る。

……またしても気になる単語があった。


『何が本当で、何が嘘なのか』。


混乱に満ちた被災地で、この言葉が涼にとって身に染みて分かるのは、まだもう少し先のことだった……。



被災地に限らず、情報化社会となった今日、情報の真偽は非常に大事になって来ましたね。

メディアや個人のSNSに限らず、妙な情報には十分注意しましょう。

この辺に関しては、いずれもっと詳しく書くかもしれません……。

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