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収穫祭 「私の心臓を掴むあなたの手が冷たくも温かい」  作者: 秦江湖


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友人の失踪・千尋

家に戻ると、何気なくつけたテレビから信じられないニュースが目に飛び込んできた。


福山先生が失踪。さらに、これまで行方不明だった高橋智花、田島紅音、小田茉莉の名も挙げられ、警察は連続失踪事件として捜査本部を設置したという。



胸の奥底から不快なものがせり上がってきたとき、スマホが鳴った。


果歩からだ――。


「はい。どうしたの?」


「千尋、ニュース見た?福山先生の」


「ええ。行方不明のやつでしょう?」


「それに智花たちのことも」


「連続失踪事件だってね」


「それでね、千尋」


電話向こうの果歩はどこか怯えているようだった。


「果歩。どうしたの?なにかあった?」


「最近は愛と連絡とった?」


「ううん。とってないけど……どうかしたの?」


「私、一週間くらい旅行に行ってたんだけど……それは千尋に話したよね。それで帰ってきて千尋に連絡した後に愛に連絡してみたら通じないの。そういえば旅行に行く前もつながらなかった。電源が入っていないって。いつからだろう?たんにタイミングが悪いのかなって思ってたけど、福山先生のニュース見たら、もしかしてって思っちゃって」


果歩は取り乱して今にも泣きそうな気配だ。


「果歩。落ち着いて」


そういえば私もスクールに通うようになって、あまり連絡は取っていなかった。いつから?いつからだろう?最後に愛と連絡を取ったのはいつだったか思い出してみるも、はっきりとは覚えていない。


電話を切ったらLINEの通話記録を見ればわかるだろう。今はとにかく果歩を落ち着かせないと。


「果歩。深呼吸して。いい?自分を落ち着かせるの」


「う、うん」


電話の向こうから二回、三回と果歩の呼吸音が聞こえてくる。私も一緒に深呼吸した。


「どう?落ち着いた?」


「うん」


「これから愛の家に行ってみるから」


「私も行く」


「わかった。じゃあ今から愛の家の最寄り駅に一時間後でどう?」



愛は実家を出て一人暮らしをしていた。


部屋があるマンションはここからも、果歩のいるところからもそう遠くはない。


しかも今外から帰ってきたばかりで、身支度をする必要もない。


電話を切るとバッグを掴んで外に出た。この分だと夕飯の支度は難しそうなので、明さんには電車に乗ってからLINEで事情を説明した。


私の「庭」に、新たな「雑草」が生え始めた。それとも、これは「剪定」の合図だろうか。




マンションへ行ってみたものの、愛の部屋は無人だった。


インターホンをいくら押しても応答がないので、まだ会社から帰ってきていないのかと考え、しばらく待ってみた。


その間、何度も電話してみたがつながることはなかった。


「どうしよう?」


果歩がいよいよ不安に顔を曇らせて聞いてくる。私は一寸考えてから「愛の実家に連絡してみよう」と答えた。この場では二人ともわからないが、帰れば卒業アルバムを見て連絡を取ることができる。



もし愛が行方不明になってしまったのなら、会社の方はどうしたのだろう?果歩のように一週間以上連絡がつかなければ、実家の方に連絡くらいは行くのではないだろうか?


そして家族の方でも愛と連絡が取れなければ捜索願を出すだろう。


出していれば警察が言っていた連続失踪事件の失踪者の中に愛の名前が入っているはずだ。


だが、ニュースでは愛の名前は読み上げられなかった。


もしかしたら愛は行方不明などではないのかもしれない。


私は自分の考えを果歩に話して、良くない方向にばかり考えるのは止めるように言った。



果歩も私の話に合点がいったのか、帰り道は行きよりも落ち着きを取り戻しているように見えた。


愛の実家には私から連絡してみるということで果歩と別れた。


私の「庭」は、ますます賑やかになっていく。そして、私は、そのすべてを管理する「庭師」として、静かに微笑んだ。




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