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剣聖になりたくて!  作者: 空気を読む
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プロローグ

張り詰めた空気は、一閃の如く突き破られた。鋭い一撃が相手の胴を捉え、そのまま一本。危なげないストレート勝ちで、優勝を決定づけた。


審判の「勝負あり!」の声が、静寂の会場に響き渡る。その瞬間、空間を支配していた剣士たちの張り詰めた魂の緊張は弾け飛び、凄まじい大歓声と無数のフラッシュライトが、静かに面を外した二階堂天晴にかいどう あまはるを包み込んだ。


彼は、歓喜に沸く周りの熱狂とは違い、ただ静かに勝利を噛みしめていた。


剣道全国大会、男子個人戦決勝。翠風高校二年生にして、剣道部のキャプテンである天晴が、ついに頂点に立った。その実力は、彼が純粋に愛し、情熱を注いできた「剣」が、この現代という世界で到達し得た、一つの極地だった。


次の日ー

剣道部の朝練を終え、教室に入った天晴を、いつもの指定席で待っていたいつメンが、すぐに彼を囲んだ。


「おっ、今日のヒーローのお出ましだ!」


「あまちゃん! 優勝おめでとー!! まじストレート勝ちとか、あんた神かよ!」と、明るい声で祝福したのは、友達の新田。


「まじ優勝とか凄くね!?」と、興奮気味に腕を組んで頷くのは、友達の佐藤だ。


二人は剣道部員ではないが、天晴にとっては、心から信頼できる大切な友人たちだ。


「うるせぇ、大げさだ」


天晴は照れたように笑いながら、竹刀袋を壁に立てかける。全国一位という偉業を成し遂げた直後だというのに、彼の態度はいつもと変わらない。


「でも、すげーよな。昨日の試合、動画で見たけどさ、あの技、ヤバすぎ。まるで漫画だぜ」と佐藤が感嘆を漏らす。


「わかったわかった笑ありがと」


新田が明るい声で提案した。


「じゃあさ、今日の放課後、みんなおれんちでゲームしねー?」


佐藤もすぐに乗る。「めっちゃあり!あまっちもくるっしょ?」


二階堂は少し迷ったふりをしながら、すぐに笑った。「しょうがないなー、行くよ笑」


新田は歓喜した。「ういっし、じゃあ決まりな!また放課後!」


(場面が切り替わる。新田の家)


「はいまた俺の勝ちーー!」新田がコントローラーを天に突き上げる。


「ほんとゲームだけは才能あるんだから」天晴は少し悔しそうに笑った。


「だけってなんだよ!」新田が抗議する。


「まあまあ、それにしても二階堂って剣キャラしか使わないよなー。やっぱ剣道部だから?笑」佐藤が茶化すように問う。


「そうだなー、まあ剣士ってかっこいいじゃん」


「自己自賛かよ」


「そんなつもりないし、そもそもう俺は剣士じゃない」天晴は軽く否定した。


「ほらほら次の試合はじまるよん、次は負けないよー」


夕焼けが窓を染める時間になり、三人は解散した。


「じゃあなーー新田」


「また明日、新田」


佐藤と天晴は駅へと向かう途中で新田と別れ、佐藤とも途中の交差点で別れた。


「俺こっちだから」


お互い手を振り、天晴は一人、自宅へと向かういつもの道へと足を進めた。


いつものように、神社の横にある脇道へ入る。草木が生い茂るこの脇道で、歩いていた天晴は、不意に足元のツタに引っかかってしまった。


「いてて……」


小さく呻きながら起き上がると、脇道から外れた視線の先に、苔むした古い石段の奥に、何か異様なものを発見した。


好奇心に駆られ近づくと、そこにはまるで伝説のように、古びた石に深く突き刺さった剣があった。


「なんだこれ? 剣……か?」


天晴の目は、たちまち少年のように輝いた。思わず、その持ち手に手をかけ、抜いてみようと試みる。少し力を込めても、剣はびくともしなかった。そこで、全国一位の剣士として鍛え上げた本気の力を全て込めた。


ゴッ、という重い音と共に、剣は石から抜けた。


その瞬間、肌を刺すような冷たい空気が頬を撫で、俺は薄気味悪さに身震いした。抜いた剣は、鈍い銀色に輝き、どことなく禍々しいオーラを放っているように見えた。


その神秘的な光景に見惚れていると、背後の茂みから「ガサゴソ」という音が聞こえ、彼はハッと我に返った。


「いけないいけない、そろそろ帰ろう」


剣を元の場所に刺し戻すと、いつもの下校道へと急いだ。


あたりが町の街灯で薄く明るくなってきた頃。路地裏から、何やら緊迫した声が聞こえてきた。


天晴恐る恐る覗き込む。案の定、一人の女子高生が、いかにもヤンキー然とした男に腕を掴まれていた。


(助けなきゃ)


思考よりも早く、体が動いた。彼は背中の竹刀袋から愛用の竹刀を抜き出すと、一瞬の躊躇もなく、男の背中に渾身の一撃を見舞った。


激昂した男は、獣のように唸りながら振り返る。しかし、天晴は冷静さを失わない。男がナイフを取り出し、切り付けようと間合いを詰めてくるが、天晴はそれを竹刀で華麗に防ぎ、すかさず反撃の一撃で体勢を崩し、その隙に女子高生を安全な場所へと逃がした。


「なんだ、このガキ……!」


男は後ずさり、やがて口元にニヤリと歪んだ笑みを浮かべた。その手は、ジャケットの内側へと伸び、黒い銃を取り出す。


「これは避けれるかなぁ!? お前が悪いんだからな!!」


天晴は一瞬、焦りの色を見せたものの、鍛え抜かれた反射で反応した。竹刀を構え、迫り来る銃弾を防ごうと試みる。


バン!


1発の銃声が鳴り響いた


天晴は咄嗟に竹刀で防御の構えを取った。


しかし、いくら剛堅とはいえ、竹の刀身が銃弾の威力に耐えられるはずもなかった。甲高い音と共に、竹刀はあっけなく貫通し、その役目を終える。


次の瞬間、彼の胸に熱い衝撃が走った。それは鋭く、全てを切り裂くような痛みとなって、天晴の心臓を容赦なく貫く。


男はそのまま闇の中へと逃げ去り、俺は力なくその場に膝をついた。傷口を手で押さえるが、彼の温かい、命そのものであるはずの血は、止めどなく指の間から溢れ出す。


(これで……終わりか、あの女子高生は助かったのかな...)


意識が薄れていく中で、俺は静かに、その理不尽な現実を噛みしめた。俺の愛した「剣」は、現代の暴力、「銃」という極地を前にして、あまりにも無力だった。

現役高校二年生がなんとなく小説を書いていきます。投稿頻度は遅いかもしれませんが僕なりに頑張ります。どうぞよろしくお願いします

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