土
目の前には土があった。
眠りから覚めると、朝と共にそこには土があった。
僕は密閉されていた。体が動かせない。ここはどこだろう。完全に密閉されている。真っ暗で何も見えない。僕の息が当たって温かいし、本当に身動きひとつできない。
僕は叫ぶ。叫ぶが、何も聞こえてこない。何も返ってこない。ここは相当地下か、周りを壁で囲まれているかのようだ。
すると、足元から音が鳴った。携帯の電話の音だ。必死に僕の指をその携帯に当てて通話する。
声の主は言った。
「私が誰か当てられたら、出してあげよう」
僕は皆目見当もつかなかった。なぜなら、その声にはまったく心当たりがなかったからだ。
僕はぐっすり眠ってしまった。とても深く眠ってしまった。
電話の主は言った。
「早くしないと死んでしまうぞ」
僕は言った。
「いま考えている」
そして僕はまた眠った。酸素が薄いからだろうか、すぐに眠くなる。
次に起きたとき、声が聞こえてきた。
「なぜ答えない? なぜもがかない? 死んでしまうのに?」
僕は言った。
「あなたが電話を切ったら考えるよ」
電話の主は混乱した。なぜ慌てず、混乱せず、じっとしていられるのかわからない。これからの将来、未来が怖くないのか。正気を疑った。
僕は、後のことはあまり考えずにいた。
そんなとき、ついに酸素が尽きてきて、息苦しくなった。
僕はそろそろ考えないといけないと思って考えてみた。
――うーん、誰だろう。僕に恨みを持っていて、なおかつ僕を拉致することができる人。
いろいろな可能性を考えた結果、僕はひとりの人間にたどり着いた。
「わかった! 答えは母だ! 母がやったんだ!」
そう言うと、電話は切れた。答えは出たのだろうか。
そうして待っていると、光が見えてきた。誰かが助けてくれたのか。
ゆっくりと、体を密閉していたものが開かれていって、そこに誰かがいた。
それが誰だったのか、わかろうとする前に、僕は眠ってしまった。
目を覚ますと、そこは病院だった。
僕は眠っていたらしい。
ふとそばを見ると、母が僕を見ていた。
「不正解だ。お前を閉じ込めたのはお前自身だよ」
と母は言った。
するとその直後、また視界がおかしく狂って、眠ってしまった。
目を覚ますと、また土の中だった。
そして、また携帯が鳴った。
携帯の主はこう言った。
「私が誰か当てることができたら、出してあげよう」
僕は、皆目見当もつかなかった。




