好きなものの前では素直に
▼荷物も上着も預けて、浅見は城崎に言われた通り、オーバーサイズのパーカーにゆとりのあるフレアパンツという家着ピッタリな姿になり、ソファーに腰を下ろしたまま。
そうして城崎がDVDを入れてる短い間に、並べてくれたお菓子を食べやすいようにパーティー開けにして広げたりと、リビングテーブルはいっぱいだ。
そして、浅見は借りた旧作たちの一つを手に取り、パッケージ裏を熱心に読み込んでいる。
「よし」
隣に浅見の隣に城崎がトスン、と座る。振動に少し揺れるソファーと共に、とくんっと小さく胸が鳴る。
「(…隣にいる、すぐ真隣…)」
いつもの食事の時みたいな向かい合わせとは違う。この前の偶然のような…カウンター席の距離とはまた違う。
腕を動かせば直ぐ触れられる、少し動けは埋まる間、真隣に感じる温かい体温が、柔く感じる距離。
少しばかり上がってくる緊張で、トクトクと緩やかに、心臓が鼓動を繰り返し、身体が火照る。それを落ち着かせるようにウーロン茶を静かに口に含んだ
「準備万端だな」
「っ!?、え、あ、はい…!」
囁かれるように、真隣で笑い声が掛けられる。その低くも優しさを帯びた声調に思わず肩が揺れて、返事が上擦る。
けれどそれすらも想定内なのか、城崎はソファーの背に肘を付いて頬杖をし、そんな浅見の様子を愛しそうに見つめていた。
▼浅見は夢中になっていた。シーンが進むたびに目を輝かせ、懐かしい音楽が流れると小さく体を揺らす。ときどき口元がほころび、気付けば手のひらで膝をトントン叩いていた。
画面に映るのは少し古い映像。アクションシーンも今と比べると簡素なのに、浅見は頬を上気させて夢中になっている。
「うわぁ…このBGM、まだ同じだ」
「そんな前からあったのか」
「はい!小さいころから何回も聞いたんですけど、ちゃんと見たのは今日が初めてなんです」
声を抑えているつもりなのに、楽しさが隠しきれない。
手のひらで膝をトントン叩く癖まで出てしまい、彼女自身も気づいていない。
城崎は腕を組んでディスプレイに視線を向けたまま、目だけで彼女を盗み見る。アクションシーンの迫力ではなく、横で笑う浅見の反応に胸の奥がざわめく。
城崎は唇の端を少しだけ持ち上げ、ディスプレイに戻るふりをして視線を逸らした。
▼「このシーンが伝説って言われてたやつですよ!当時、映画館は拍手が起こったって…!」
目を輝かせながら身を乗り出す彼女。その姿を横で見て、城崎は缶コーヒーを片手に小さく鼻を鳴らした。
「そんな詳しく知ってんなら、もう見なくていいんじゃねぇか?」
「ち、違います! やっぱり本編見るのが一番ですから!」
そう言ってソファに正座する浅見。その真剣な顔に、城崎は思わず口元を緩めた。
ディスプレイに映る迫力あるシーン。浅見はポップコーンをつまみながら時折「おおー」と小さな声を漏らす。
アクションの見せ場では思わず両手で口を押さえ、感動シーンではじんわりと目頭を押さえていた。
やがてエンドロール。部屋に流れる音楽に身を預けながら、浅見は大きく息を吐いた。
「……すごい。やっぱり旧作も最高ですね!」
「そうか」
「だって、今のシリーズに繋がる伏線もあったし……あ、あの冒頭の車! 新作でちょっと出てきましたよね?」
「おう。……よく見てんな」
嬉しそうに両手を動かして語る浅見。その隣で城崎は腕を組み、視線を彼女から外せずにいた。
「(……何でだろ。俺、映画の内容より浅見さんの反応ばっか覚えてやがる)」
▼カーテンを半分閉じたリビング。ソファの上には、レンタルしてきた旧作シリーズのDVDパッケージがいくつも並んでいた。
TVディスプレイには旧作の映画が映し出される。
照明を落としたリビングは、映画館とは違う小さな明かりだけ。
二人の距離はソファのクッションひとつ分。近いけど、まだ安心できる距離。
映画が始まって間もなく、浅見は思わず前のめりになった。
「……懐かしい」と小さく声を漏らし、目が一気に輝く。先程までの淡い緊張感はどこへやら。そのまま流れてくる映像を、浅見は身を乗り出して画面に集中している。
けれど城崎の視線は、ディスプレイよりもその横顔へと何度も吸い寄せられた。
ディスプレイに釘付けで、照らされる浅見の横顔。
「(映画館で見た時も思ったけど…)」
派手に笑ったり驚いたりするわけじゃない。けれど瞳の輝きが、子供のように無垢に映る。
それが、不意に胸の奥をざわつかせた。
「(……ほんとガキみてぇだな。でも、可愛い)」
▼浅見は夢中になっていた。シーンが進むたびに目を輝かせ、懐かしい音楽が流れると小さく体を揺らす。ときどき口元がほころび、気付けば手のひらで膝をトントン叩いていた。
画面に映るのは少し古い映像。アクションシーンも今と比べると簡素なのに、浅見は頬を上気させて夢中になっている。
「うわぁ…このBGM、まだ同じだ」
「そんな前からあったのか」
「はい!小さいころから何回も聞いたんですけど、ちゃんと見たのは今日が初めてなんです」
声を抑えているつもりなのに、楽しさが隠しきれない。
手のひらで膝をトントン叩く癖まで出てしまい、彼女自身も気づいていない。
城崎は腕を組んでディスプレイに視線を向けたまま、目だけで彼女を盗み見る。アクションシーンの迫力ではなく、横で笑う浅見の反応に胸の奥がざわめく。
城崎は唇の端を少しだけ持ち上げ、ディスプレイに戻るふりをして視線を逸らした。




