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恋人をNTRれて絶望していたら、清楚可憐な幼馴染がやたらと俺を構ってくる。  作者: 九条蓮
第二部

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第49話 かるびの衝撃発言

 誰かさんに見せつけたかったという意図もあったのかもしれない──そう悪戯っぽく笑って付け加えるかるびに、俺は思わず息を呑んだ。


「誰かって……」

「莉音ちゃんだろ、どう考えても」


 かるびの代わりに、信一が答えた。


「詩依ちゃんが桃真を選んだ時、莉音ちゃん凄い顔してたぜ? 茫然自失って感じで。男子連中よりもダメージ受けてたんじゃないかな」


 莉音のその表情は、ちらっと俺の視界にも入っていた。

 詩依は、莉音に対してのけん制の意味合いもあって俺を選んだということだろうか。

 自分が、好奇の的にされるのがわかっていながら? どうして?

 そこまで考えて、莉音と話した直後のことを思い出す。

 詩依は、俺を探しに来ていた。

 俺に何かあったのかと訊いてきて、それから……少し休んでいこうと提案してくれたのだ。

 もしかして、詩依はあの時既に、俺と莉音の間に何かあったことを察していたのだろうか。それとも、見られていたとか?

 それはわからないけど……でも、だったら詩依のあの行動にも色々説明が付く気がした。


「そのことについて何だけど……」


 思い出しても気分が悪くなるだけなので伏せていたのだが、俺は莉音との間にあったやり取りもふたりに話しておくことにした。

 一応、ふたりは〝カモフラージュ〟のためにイツメンを結成してくれたというのもある。話しておくのが筋だろう。もちろん、膝枕云々については絶対に話さないが。

 話を聞き終えると、ふたりとも苦い笑みを漏らした。


「まさか、そんな出来事があったとは……めんどくせーなぁ、あの子」

「やっぱ三浦くんに未練あるのかしらねー? 浮気しといて、あたしにゃよくわからない世界観だ」


 ふたりには全面的に同意だ。めんどくさいし、本当に莉音の考えがわからない。もう俺のことなんてどうでもいいのに。

 仮に保住の野郎に振られたからといって、もう元カレに拘る必要もないと思うのだ。浮気相手に振られたからと言って、元カレと寄りを戻そうとするのはさすがにイカれている。


「それ、詩依ちゃんも知ってんの?」

「知ってるかはわからないけど、その直後に声掛けられたからな……ワンチャン知ってるかも」

「なるほどねー。んじゃ、あの借り物競争の行動にも意味が出てくるわけだ」


 俺は頷いた。

 そう。かるびの話を聞いて、俺もその結論にたどり着いた。

 詩依は、莉音をかなり敵視している。それはあの時、初めて莉音と相対した時にもそれを感じた。

 いや、それよりも前。俺が振られた日にも、それっぽいことを言っていた気がする。

 かるびが訊いた。


「三浦くんはどうなの?」

「どうって、何が」

「仮に、柏木さんから『あたしのこと自由にしていいからもう一回やり直して!』って言われたら、どうする?」

「いや、フツーにないだろ」


 即答だった。

 そのあたりの感覚は振られた時から変わっていない。何をどうされても、どう償いたいと言われても、俺の心は変わらないだろう。

 心が狭いと言われるかもしれないが、それが裏切りの代償だと思うのだ。

 人の信用を裏切るのは簡単だ。でも、一度失った信用を取り戻すのは、並大抵ではない。

 失敗による信用の失墜と、裏切りによる信用の喪失は、似ているようで全く異なる。失敗によって失ったものはまた成功で取り戻せるが、裏切りで失ったものは、簡単には戻らない。元のものに近い形になったとしても、それはきっと、つぎはぎで作られた、元の形に近い別のものなのだ。


「それが聞けて安心したわ」


 かるびは食べ終えたパフェの器にスプーンを添えると、ナプキンペーパーで口元を拭った。


「もうすぐ夏休みなんだしさ、あんたもしっかりしなさいよ? しーちゃんからすれば、もうかなり頑張ってるんだから。そろそろオトコ見せなさい」

「んだんだ」


 かるびの言葉に、信一がわざとらしく頷く。

 結局、今日ふたりが俺を呼び出したのは、こうした檄を飛ばすためだったのだろう。

 本当に、お節介と言うか、面倒見がいいと言うか。

 でも、それは本当に俺や詩依のことを想ってくれているからであるとも言える。


「……そのつもりではいるよ」


 ふたりの信用に応えるべく、俺はそう答えた。

 詩依との〝幼馴染〟が再開されて、もう一か月半以上が経っている。

 最初は五年ぶりの〝幼馴染〟にどうすればいいのかわからないところもあったけれど、今ではその関係にも慣れつつあった。

 そして、このままの関係でいいとも思っているわけではない。きっと、それは詩依も同じだ。

 それなら……うん。前に、進むべきなのだろう。

 俺たちを一番近くで見ているふたりがそう背中を押してくれるのだから、勇気付けられた。


「まー、今の三浦くんにならもう言ってもいいかな?」


 かるびは帰り支度を整えつつ、こちらをちらりと見る。

「何を?」と首を傾げると、彼女は目を細めてこう付け加えた。


「しーちゃん、今年のバレンタインで()()()()()()()()()をひとつだけ作ってきてたよ」

「えっ……!?」


 思わず、俺の顔が跳ね上がった。

 待て。どういう意味だ、それは。他の誰かに渡したかったってことか?

 いや、違う。それなら、このタイミングでは言わないはずだ。

 そして──かるびの口から、更に驚くべきものが漏れた。


「結局、しーちゃんがまごついてる間にどっかの女がしゃしゃり出てきたせいで、渡せなかったみたいだけどね?」

「ちょ、ちょっと待て。それって──」

「じゃあ、情報料ってことで、あたしのパフェ代は三浦くんの奢りってことで! じゃあね」


 かるびはさっきみたいに悪戯っぽく笑って。そのまま颯爽と帰っていく。

 唖然とする俺を横目に、信一は肩を竦めた。


「ここまでお膳立てされてんだ。さすがに、お前もオトコ見せるよな?」

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