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鴎は孤高の世界へ  乗馬Ⅱ・銀婚式と息子の結婚編

外国で騎乗狩猟に熱中する私に、息子のルドルフの結婚話が!


1879年2月から3月アイルランドに乗騎乗狩猟を楽しんだの。

ダブリン西部のサマーヒルよ。

高い急斜面、深い谷、両方セットの場所、土手と石組み堀、骨折覚悟の地形。

ある紳士は落馬、ハミルトン大佐はトンボ返し、私を乗せたドミノ号は爆走してしまうし。

マリーは発狂寸前だったわ。


もう少しいたかったけど、4月に銀婚式の祝賀式典だし、ハンガリーで洪水の被害が大きかったから後ろ髪を引かれる思いで帰国したわ。


銀婚式は祝典の嵐だったわ。

多様な民族がウイーン中で楽しんでいたわ。

道の広場あちこちで楽器の演奏、オペレッタ劇、音楽、踊りと歓声、王宮にもプレゼントがいっぱい積み上げられていたの。

そして大宴会よ。

薄緑のサテンのドレスに長い髪はそのままに、ダイヤとルビーの頭飾りを付けて夫と一緒にいたわ。

皆花嫁を連れた父のようだと思ったみたい。

しかたないわ。

フランツは帝国の為にがむしゃらに働いてきたから。

本当に尊敬してるわ。

どうして彼私を好きなのか不思議なの。

こんなに至らないのに、帝国の皇后に私はむいていないわ。


宴会はうんざりだけどしかたないわね。

めいいっぱい微笑んだわ。


そしてパレード見物。

時代衣装を着た行列、産業組合の出し車素晴らしい祭典だった。

夫も満足して皆に感謝の祝辞を述べたの。

素晴らしい行事だったわ。


でも一つこの後、残念な人事があったの。私の友アンドラーシが辞任したの。

ハンガリーの私の右腕が。

なんだか淋しいわ。


そして騎乗旅行よ。

翌年には再度アイルランドを訪問したの。

騎乗狩猟よ。

出発前に夫にベルギーを訪問するように懇願されたわ。何か嫌な予感がするわ。ルドルフの結婚話が水面下で繰り広げられているのは感じてた。夫はバイエルンとザクセン以外で候補を考えているらしい。

当のルドルフは結婚なんてそんな気分じゃないと師匠のラトゥール伯爵に言ってるらしい。


サマーヒルの狐狩りは最高。

ミドルトン大佐やリヒテンシュタイン公子、ラングフォード卿ら散々落馬したわ。

夫は私の浮気より落馬して死なないかだけ心配みたい。


狩りの最中に夫から突然電報がきたわ。


長くアイルランドにいるんだからヴィクトリア女王に挨拶しなさいって。

しかたないからロンドンに行って、首相に会って好印象を勝ち取ったわ。外交上手でしょ。帰ったらおねだりしなきゃ。


アイルランドに戻ったらマリーが悲壮な顔で電報を持ってきたの!


「ルドルフ皇太子ベルギーのステファニー王女と婚約」


聖典の霹靂とはこのことよ。


「神様これが災いとなりませんように」


相手はまだ十五歳、自分が婚約した年。

身体の中で血が激流するのを感じたわ。

嫌な嫌な予感を抱えたままブリュッセルへ向かった。


到着するとすでに駅にはベルギー王室のメンバー、そして花嫁候補を見てから決めるとブリュッセル入りしてたルドルフと久しぶりに再会した。

二人厚く抱擁して感無量だった。

私の息子。


ルドルフは始め結婚なんてといって乗る気でらなかった。夫に説得されて、今回は自分の目で王女を見たいと訪問していた。


後ろのほうにその子がいたわ。


娘らしい純朴さはあるものの。

ひどく幼いし、太り気味だし、鮮麗されていないわ。可愛らしさもない。

田舎娘のようだった。

この後アンリエット王妃からステファニーは初経も迎えていない事を知った。

何故ルドルフは決めたの?

幼さ?あの子くらいの娘は新鮮だった?


ルドルフには合わないわ。


絶対に結婚を遅らせる。

強く決意した。


今は言わずにいましょう。

帰ってから。

私はその後王妃と共にシャルロットを訪ねた。

今はブシュー城にいる。住んでいた城が不審火で燃えたのだそう。

彼女「綺麗!綺麗っ」って言ってもう正気でいるのも少なくなっているらしい。

マックスと名のぬいぐるみを抱いて寝るのですって。若いまだ大公妃だった頃いがみ合った仲だけど……。狂えるのはまだ幸せだという事を私はまだ知らなかった。


ウイーンに帰り夫と一悶着あったわ。

ルドルフの結婚に反対だったから、婚約破棄してほしいと。

私の一方的な喧嘩だけど…。


なんとか夫からすぐには結婚させないという言葉を引き出したの。


ベルギーを帰ってから夫はボヘミアへ私はフェルダフィンクに滞在した。

8月は夫の五十歳の誕生記念日です。夏をバートイシュルで過ごしこの年は秋まで家族で過ごしたわ。

ルドルフの気欝な様子に気をもんだけれど…。


ベルギー王室はハプスブルグ家に災いをもたらすわ。



本当は次の翌年も行きたかったけれどイギリスとアイルランドの政治的な原因で断念したわ。

81年イギリスのチェーシャー州で騎乗狩猟したけど、思うほどの快感は得られなかった。


飽きてパリに渡って妹達に会ってパリを満喫したわ。今回は外交を頑張ったわよ。

ジュール・グレヴィ大統領に会ったのよ。

婚約のお祝いをいただいたけれど。

さすがフランス人よ。


「あなた様を見ていると、婚約者だと間違えてしまいそうです」って。

上手ね。


いい事の次は悪い事が起こるものなのね。


次の日にルドルフの結婚式が五月十日に決定したと電報が来たの。


私はウイーンに帰り、その日に向けて周りは粛々と行事の準備をしている。私は不安と平常心を保つ。ルドルフはなんだか気欝そうで、結婚に不安があるのは歴然としているように見えた。


その日がこなければいいと願った。

私はステファニーを無視する事にした。

ラクセンブルグ宮殿の改修も指示しなければ、快適な空間になるように模様替えをする気づかいもしなかった。

あんなに姑に苦しめられていたのに。

無視もある意味彼女の失望になるだろが。

そうでしか抵抗する意思を知らなかった。

シャルロッテがマクシミリアンの命を奪うきっかけであったようにステファニーもそうなるだろう。

ベルギー王室は災いをもたらすという私の確信は揺らぐことはないわ。



ステファニーは意気揚々と王宮に入ってアウグスティーナ教会で結婚式を、王宮で披露宴を、新居はラクセンブルグ宮殿に入った。


ラクセンブルグ宮殿のお粗末な設えに意気消沈だったようと聞いた。

「義理の両親はそれほど迎え入れてくれていなさそう」に見えたでしょう。


新居のラクセンブルグ宮殿は古めかしい調度品と衛生施設は貧祖で何代も前の雰囲気があって新婚夫婦のそれには似つかわしくなかった。


しかも初夜は最悪だったようだった。

私もそうだけど何の知識もなく、ルドルフが乱暴に振舞ったのだろう。


初日から最悪なスタートだったようだ。



**********************************************


私の乗馬熱はハミルトン大佐が結婚したし。

というのは婚約者が私と会うのを嫌がったみたいなの。

私も坐骨神経痛がひどくなったので、83年からはもう乗馬そのものも熱が冷めた様になってしまったわ。

したくなくなったのではないわよ。出来なくなったの。


乗馬は止めて他の事に情熱をかけるわ!!

アムステルダムの医師にマッサージを受ける治療を始める。

生涯この医師の治療は私の精神面も安定されてくれる事になる。


そしてフェイシングと競歩よ!!



ルドルフ皇太子の婚期がやってくる。但しその相手となるとかなり限られていたようだった。

他国の王族(近親者以外つまりバイエルン・ザクセン以外)、カトリック教徒(ドイツのほとんどの諸侯はプロテスタントだった。当時改宗は異教徒より罪深いと言われた)とフランツヨーゼフ1世は考えていて年齢的にその条件に合うのはベルギーのステファニー王女くらいだったと言われる。


そのルドルフ皇太子は直接ステファニーに会うと言い出し、ベルギー王室を訪問する。

ここで何故か?ステファニーを好み同時にエリーザベトの忠告を無視して婚約してしまう。


当時のステファニーはまだまだ幼く16歳で生育も未発達で初潮さえ迎えていなかった。

エリーザベトは思い留まる様に説得するもルドルフは意地になり、反発して譲ろうとはしなかった。

ルドルフの周りには成熟した大人の女が多くいたため、かえって素朴なこの少女に清楚さや清純さを感じたのかもしれない。


エリーザベトの予感通り、この結婚は失敗だった。ルドルフ皇太子の様に繊細な性格の相手には柔軟で包容力のある女性が適任であったと思われる。

結局一人娘を授かるものの、夫婦関係は早くに破綻していた。


ルドルフ皇太子の自殺後、ステファニーは娘とも対立しその養育権をフランツヨーゼフ1世に奪われ、まらまーれ城に隠棲、身分違いのハンガリー貴族の男爵と貴賤婚をして実家とも絶縁し幸せな結婚生活を送り天寿を全うしました。



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