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鴎は孤高の世界へ 乗馬編 

エリーザベトの旅好きは以前からだけれども一つの事を極めるのも特徴的だった。

その一つに乗馬がある。


私は小さい頃からポニーに乗って、馬に乗れるようになるとポッシー館で乗馬を楽しんだの。

館の庭、シュタンゲルグ湖周辺の森、颯爽と駆け出す風に吹かれてキラキラとさす太陽の光がすごく眩しくて楽しかった。

ミュンヘンの本邸よりもポッセンフォーヘン城、ポッシー館が好き!

父はサーカスの曲芸にも挑戦して、私達の羨望の眼差しを受けていた。

幸せだった少女時代の余韻のそう乗馬は生きがい。皇后になったからって止められないわ。


ラクセンブルグ宮殿でも馬を走らせてフランツに侍従がチクったの。

そしたら笑って私は誰にも止められないし、自由に振舞う事を容認したわ。

でも義母に大激怒されたわ。

宮廷のマナーに違反するって!


新婚当時夫と遠乗りもしたわ。

私の乗馬さばきに驚いていたみたい。

そして私の乗馬服姿とアマゾネス乗りに目が♡マークになっていたわね。


ウイーンの王宮スペイン式宮廷馬術学校の主席教官やブタの王宮で更に上達するように訓練したわ。


そのうち普通の乗馬テクニックには飽きて、サーカス集団レンツ一座のエリーゼ・レンツに従事して明空芸にも挑戦したの。

宮廷でなんだかんだ噂されてもいいわ。

なんなの極めるのが私の性分よ。


数年後には私の愛したハンガリーで堪能したわ。

乗馬だけでなくキツネ狩りもね。

ゲデレー城は本当に素晴らしい場所で乗馬に持ってこいなのよ。


でも病気になってしまってしばらくは乗馬から離れてしまう事になるのだけど。


マリー・フェシュテテッチ伯爵夫人の種馬牧場で名馬が射殺されると聞いたの。




では乗馬のお話ね。


厩務員を3人殺し、何人者の骨折者を出したせいで射殺計画が持ち上がった時、私は急いで彼女の牧場に飛んだわ。


そしてその馬に近づいて宥める様に話しかけて落ち着かせたの。

この子はプライドが高いだけよ。

人が気をつけてあげれば素晴らしい子。


そして鞍をかけようとしたら大人しく従ってくれたの。

良い子だったわ。


そしてこれを繰り返した後に牧場に残すことが決まったの。


良い子だもの。




*********************************************



ある1874年旅に出ようと行先をイギリスのワイト島を選んだの。

この島は気候温暖で太陽に恵まれ、木蓮や月桂樹など緑の多い島。

しかもホーエンネンブル伯爵夫人名でマリーヴァレリーを連れてスティーブヒル城に滞在する。

ワイト島と言えばヴィクトリア女王の夏の保養地でオズボーン館があるの。運がいいのか悪いのか女王も滞在中で偽名で滞在しているけどバレないはずはないよ。

すぐに退屈していたヴィクトリア女王の訪問は受けてしまった。

私はこの訪問で失礼のないようにふるまったわ。

夫にしっかり手紙で書いたわ。

私が大人しくお行儀がいいので皆驚いているようでした。出来るだけの事はしましたので十分です。

皆私が静かに暮らしたいというのを知っているので良く理解してくれています。


ヴィクトリア女王は再度私に会う使者をよこしたけれど体調が思わしくないとお断りしたの。


そしたら私は世間がいうほど美人でなく、嫁のアレキサンドラの方が美人です。って。

だって女王はどこか得体がしれないんですもの。


このあと、あまりここにいるとまた女王があ~だこ~だ言ってくるのでロンドン見物にヴァレリーと行ったのよ。

ロンドンを馬で見学して、マダムタッソーのオーストリア皇帝夫妻の蝋人形を見てぞっとして壊したいと思ったわ。

そして精神病院の慰問をしたの。

オットーやベルギー女王でマックスの妻だった狂気の世界。

その一人が自分は聖ゲオルクなのだと言った。私は優しく言ったわ。

「ではじきに解放されますね」と。


8月末に沢山の招待状がスティーブヒル城に届けられたの。

私はその中から慎重に的確に選んだわ。


ラットランド公主催の鹿狩りよ。

ノッテルダム郊外のヴェリヴァール城の領地内で開催されたの。


2日間馬で鹿を追い続けたわ。最高だった。


そして島に戻って海水浴に出たの。


影武者にマリーを使ってね。

私でないマリーフステティチェ伯爵夫人を見て私と大騒ぎしている群衆を横目で見てほっとしている。

一人一人交流するのは大好き。幼い頃からバイエルンでパパに連れだって市民と触れ合ったもの。

でも群衆は怖い………。物珍しい動物でも見るように私を見る。

あの怖い目が………。


それなりにワイト島で楽しんだ後、戻ろうと思い立った。いつものように直行ではなくバーデンバーデン、ポッセンフォーヘンを経由してウイーンに。すぐにゲデレー城へ落ち着いたの。


でも定住する事はないわ

マリーヴァレリーの健康状態が気になるの。

私長女をなくしているでしょ。

この子には健康でいてほしいの。

いろいろ案を選択してフランスのサストを目指す。

例によって寄り道して。


7月バイエルンを経由してベルギーのテルヴューレン城に見舞に行った。

シャルロッテの見舞だ。

夫マクシミリアン大公はナポレオン三世の口車と妻のメキシコ皇帝即位の要望に頭を縦に振り承諾した。

ナポレオン三世は軍隊を派遣したものの現地の反乱軍とも交戦が非常に困難である事実を隠し、妻は皇后になりたいという欲求にマクシミリアン大公に皇帝になるように催促したからだ。

マクシミリアン大公はロンバルニア総督の地位を自由主義に傾けイタリアの反乱を同調していると兄に誘導した者によって兄から解任されてトリエステのミラマーレ城にセミリタイヤしていたの。

まだ若いのにうっぷんたまる暮らしをしていたのよ。

まだ野心があるわよね。義母が反対したにもかかわらず結局メキシコに渡り、最後はナポレオン三世に軍を退却されて反乱軍に逮捕され処刑されたわ。

遺体は引き取ることが出来なけれれど。


シャルロッテは軍の制圧の途中でヨーロッパに渡り、ナポレオン三世やローマ教皇に援軍を要請したけれど皆どうする事も出来なかった。

するとローマで精神状態が悪化してそのまま狂気の住人になってしまったの。

ミラマーレ城に監禁されその後ベルギーへ帰ったわ。


そしてノルマンディーへ向かったの。

フェカンに到着してサスト・ル・モーコンディ館に滞在するのだけれど、私を見たいという欲求が飛んでもなくて。神経をイラつかせたわ。


外出する度に追いかけまわされるのよ。

海水浴するもの一大事で、とうとう私は館から海岸のビーチまで幕を張らせたの。


海水浴次は乗馬よ。

しかも障害物乗馬よ。


私は馬に跨り、スピードを増して目の前の障害超えようと馬を踏み込ませた時だった。


馬は着地の時に前足がからまり、膝を折った状態で着地してしまったの。


私は柏の茂みにそのままほおりなげられてしまったわ。


激しい衝撃が身体に叩きつけられる。


馬はそのうち立ち上がりびっこを引いて歩き始めた。

私は動けない。


「皇后様!早く医者を。庭で事故が!!!」

馬丁が叫ぶ声をマリーが聞いたの。

心臓が飛び出すくらいお驚いたそうよ。


私は口を切って、額に黒いあざができていて意識がなかったのだけど、なんとか意識が戻るけれど視線がただよっていたわ。


「わたしはどうしたのかしら?」


「馬から落ちたのです」


「馬など乗らなかったわ。今何時?」


「今は10時30分でございます」


「朝の…そんな時間に馬なんて乗る事がないのに…どのにいるの?」


「ノルマンディでございます陛下」


「フランスで何をしているのかしら?

 本当に馬から落ちたなら馬鹿ね。皇帝陛下を驚かせないで」


しばらく頭痛と吐き気で静かにしている必要があり、それでも思わしくなけでば手術という事らしい。


でも一日で状況は良くなってアザも薄くなり始めた。

よかったわ。


当然フランツの元にこの悪い知らせはすぐに電報されて彼ったら動揺してすぐにフランスに行くといいだしたの。


何とか侍従が止めてシェーンブルグ宮殿で焼きもきして過ごした翌日私が好転したという連絡が入ったそうよ。

「どんなことになったのか想像するのも恐ろしい。私の天使 君がいなくなってしまったらどうしたらいいのか」


そして彼に手紙を書いたわ。


驚かせてしまって残念ですが、二人ともこういう事故が起こるのはわかっていた事です

身体の具合はずいぶんよくなりました

ヴィダーホーファー(医師)は厳しいですが出来るだけ早めに旅行許可を貰おうと思います



その通り数日後パリに入った。

パリでも事故の事なんかなかったみたいに乗馬をしたわ。

勿論観光とパリにいるアランソン公爵夫人のゾフィーと会ったわ。

そしてパリを堪能した後帰国したのその地はゲデレー城よ。


狩りに興じていた後に悲しみが待っていた。私のシャドーが亡くなったの。

悲しすぎて部屋に籠ってしまったわ。

私のシャドー……。


でもいつもの旅行熱が再発したの行先はイギリスよ。


夫は反対したわ。

でも止められないと察して最後は許してくれたわ。しかも叔父のフェルディナント2世が死去し夫がハプスブルグ家の全財産の保有者となったので、私の年金を三倍にしてくれた。

あっこれらの捻出は皇帝家の所有財産からよ。

税金からではないから。


1878年1月イギリスに到着すると今度はヴィクトリア女王の接見をしようとするも今度は女王に拒否されて憤慨しちゃったわ。

まあいいわ。

こちらでは乗馬をとことん楽しむから。


スペンサー卿がベイ・ハミルトンに私のエスコート役をたのんだの。

始めは不満たらたらだったらしいけど。


そして今度は夫の要望通り、ヴィクトリア女王と謁見したわ。

もういいわね。乗馬よ狩りよ。


鹿狩りの当日でハミルトンは私の乗馬技術を賞賛していったわ。

レベルがこれほどとは思ってなかったみたい。落馬事故のあとだったし。


楽しすぎて夫にこう書いたわ。


「こちらに来てくださるように、皆さん何故こちらにいらっしゃってくださいとおっしゃらないのかといわれます」


夫はそれどころではなかったみたい。

バルカン半島が不安定でイギリスの援護を切望して私を謁見させたみたい。


そうそうこの時にエドワード皇太子に悪戯を仕掛けたの。

その時の詩がこれよ。

二人仲良く客間に掛けていた

彼は甘い言葉を連発し夢中のよう

愛しているとまで言った

ひたと寄りそってきて私の手を取った

ささやいて言うにはおねえさまさあいかが

私はケラケラ笑いおどかした

誰かが階段をあがってくるわよ

お互いも耳を澄ませたが何でもなく

楽しい戯れを再開した

サーエドワードは大胆になり

きわどい振る舞いにも及んできた

面白いのでわたしはされるがまま

笑って言ったおにいさまさあいかが

その時彼が狼狽えだし小声で耳打ちした

誰かが階段をあがってくるわよ


ついでにロンドンの馬の飼育場を見学に行ったわ。

沢山ほしい馬がいたけど酷く高くて手がでなかったのと夫に手紙を書いたわ。

でもね二週間もしないうちロンドンの裕福な夫人が私に馬を贈ると言ってきかないの。

ひと悶着あったけど受け取ったわ。


狩りを堪能した後帰国したわ。


夫は事故も会ったから帰った時は上機嫌だったの。


しばらく皇后の責務をはたしていたわ。

そしてフェルダフィンクへ逗留したの。実家ポッシー館のすぐそばね。

ミュンヘンに行った後に私はコルフ島への望郷にとりつかれたの。


夫が遠出用の蒸気船ミラマーレ号を購入してくれたの!


コルフ島、そしてアテネにいったわ。



9月にゲデレーに家族が揃ったの。


1878年1月からルドルフと二人だけのイギリス旅行をしたの。

息子と初めての旅行なんて感無量だわ。

でもあまりに一緒にいる時間がなくてしかも息子は子供の頃からくらべるとずっと大人びて私にも無関心にも見えた。

だから旅行中会う機会には私は念入りに身支度して彼に印象付けたわ。

淋しいわ。

ロンドンにルドルフを置いてノーサンプトンシャーに滞在して騎乗狩猟よ。今回も悪路の為に落馬する卿は多かったけれど、私は賞賛の的だった。


「エリザベス皇后はどこをとっても皇后」


ルドルフはスケジュール通り女王に謁見したり、政府の重鎮に面談したり、紡績工場イギリスの産業革命をその目で実感していた。


特に女王は彼を気にいったらしく女官の間にはちらほら噂が飛び交った。


「女王は皇太子に恋をしておられますがご心配なく、結婚しようなどとは思っておられません」


そんな中私とハミルトン卿のくだらない恋の噂がルドルフの耳に入ったの。

繊細なルドルフは動揺したわ。

あまり私と接点がなかったから、これからの関係悪化に拍車がかからないかとやきもきしたわ。

そんなはずないのに……。

ルドルフはそのままドイツへ。

私は一旦ウイーンに帰ったの。3月義父のフランツ・カール大公がなくなった。

夏になって私はバートイシュルに保養しにいく。

そして9月9日両親の金婚式に参加したわ。


父はほとんど館にいなかったから、皆から今日ばかりは夫人の傍にいないといけないと揶揄されたわ。

会場は二人の結婚披露宴がおこなわれたケデルンゼーに、10月にはゲデレーで狩猟大会を内外の客を招待したわ。













エリーザベトは元々乗馬は好きだった。少女時代からシュタンゲルグ湖周辺の森を駆け巡っていた。

その乗馬熱は1874年のイギリス旅行を皮切りにエスカレートしていく。

その乗馬スタイルは「アマゾネス乗り」と言われいわゆる横座りにかなり前かがみスタイルになる。

しかもただ乗馬や狩猟するだけでなくサーカスの曲芸乗りにも見事に乗りこなす。

但し乗馬でつきものの落馬も知られるだけで2度あり、フランツヨーゼフ1世も乗馬禁止の要望を出すほどだった。


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