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杞憂

みんなが寝静まった頃、ともちゃんとゆかりんは起き上がりソファに座っていた。


「なんだか眠れなくて、疲れているはずなんだけどね」

「私も。いろんなことがありすぎて、まだ興奮してると言うか……」

 ともちゃんの言葉にゆかりんが頷く。

「あ、そうだ。ともちゃんって、どうして神冷先輩たちと一緒にいたの?」

「え?」

「ほら、おじいちゃんに会ったでしょ? 冬華を連れ去った時にいたよね。神冷先輩に洗脳されていると思ったんだけど、そうでもないみたいだし、何か弱みでも握られているのかなって。私で力になれるなら話して」


「ええと……」

 ともちゃんは黙りこんだ。ゆかりんは、ともちゃんと賢哉の前世を知らない。話してしまおうかとも思ったが、色々と考えて止めた。


「弱みってほどじゃないけど、北川先生にちょっとね。日本史のテストでお世話になってさ。まさかこんなことに巻き込まれると思わなかったから、焦ったよ。冬華の力も知らなかったし、色々と驚いた」

 わざとらしい口調になったかもしれない、と思った。だがそれは杞憂で、ゆかりんは相好を崩した。

「なんだ、テストのことだったんだ。良かったぁ。あのね、たっくんと椎葉くん、冬華にはそれぞれ前世があるじゃない? あったところで、何の役にも立たないかもしれない。けれど、私にだけないって寂しいなと思っていたんだ。さっき、椎葉くんに何か言ってたから、ともちゃんにも前世の記憶があるのかなぁって思っていて。じゃあ、ともちゃんには前世の記憶はないんだよね」


 ほっとした様子のゆかりんを見て、ともちゃんは話さなくて良かったと思った。前世なんてないと思う方が一般的だ。それなのに、こんな人たちに囲まれて、ゆかりんは彼女なりに引け目を感じていたのだろう。

 ともちゃんは、この先もずっと黙っておこうと決めた。賢哉にも絶対に知られたくないのだ。


「前世の記憶なんて、ないない。北川先生から聞いて知ってはいたけれど、私と賢哉にはそんなものはないよ。さっき椎葉くんに言っていたのは、ほら、賢哉ってお人好しでしょ。椎葉くんが前世の話をすれば、すぐ真に受けるというか、いろいろと面倒なことになりそうだから、聞かせない方がいいかなって思って止めたんだ」

「そっかぁ、安心した。前世があるたっくん、椎葉くんと冬華、それがない私、ともちゃんと賢哉。ちょうど三人ずつだから、これからも上手くいけそうだね。確かに賢哉なら、俺にも前世があるはずだとか思いこみそう。『俺の前世は勇敢な武士だ!』とか言いだして、急に張り切ったら困るかも」

 前世について語りだす賢哉を想像したのか、ゆかりんは愉快そうに笑った。


「でしょ? だからゆかりんも黙っておいてよ。でも、ゆかりんは偉いよ。危険な目に遭うと知っていて、ずっと御堂さんのそばにいるじゃない? 御堂さんだって、ゆかりんがいるから余計に頑張れるんだと思う」

「そうかなぁ。そうだと良いな。それにしても、冬華と神冷先輩が付き合っていたなんて、かなり笑えるよね」

 ゆかりんが嬉しそうに言う。

「あ、それ私も思ってた。今思えば、椎葉くんは不憫だったよ」

 ともちゃんは声に出して笑いそうになるのを堪えている。

「神冷先輩って、冬華の力を利用したいだけだったのかな? けっこうイイ感じだったんだけど」

 うーんとゆかりんが考え込むと、

「どうだろう。冬華は自分の女だ、みたいなオーラはあったよね。連れ去った時は、まだ未練がありそうだったよ。喧嘩もしていたけれど、何かと気にしていたなぁ。でもまぁ、今は椎葉くんがいるから何もできないって」

 ともちゃんがにやりと笑う。


「おい、お前達うるさいぞ」

 低い声が響いたと思えば、興俄が起き上がりこちらを睨んでいた。

「修学旅行じゃないんだ。早く寝ろ」

 不機嫌な声で凄まれた2人は顔を見合わせ、慌てて毛布を被った。


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