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商店

時折頭の中に送られる鬱陶しいメッセージを無視しながら、一行は鷲の先導で目的地へと向かった。鷲はバイクを押して、三人はその後ろを歩く。


「そう言えば、喉が渇いたね」

 沈黙を破るように、ゆかりんが呟いた。

「そうだね、どこかで食料も確保しておいた方が良いよ」

 冬華も頷いた。

「でもさ、店なんてどこも開いていなかったよ。襲撃されたスーパーやショッピングモールはあったけど」

 鷲が言うと、ゆかりんが通りの向こうを指さした。

「あれを見て、コンビニがあるよ」


 通りの反対側にコンビニの看板が見えた。店内は明かりが点いているようだ。四人は道路沿いにあるコンビニに立ち寄った。

 店内に入ると、食料はほとんど残っていなかった。辛うじて棚に残っているパンと菓子、飲み物を手にとりレジに並ぶ。店内は電気こそ通っているが、様々な決済サービスが使えず、レジは長蛇の列になっていた。若い男性店員が電卓を手に必死に会計をこなしている。


「スマホもネットも使えない。一体、何が起こっているんだ。誰か知りませんか?」

 店にいた客の男が周囲の人間に尋ねると、それまで黙って列に並んでいた人が口々に喋り始めた。

「スーパーで略奪が起こっているって話だけど、本当だろうか」

「殺された人もいるって聞いたんですけど」

「このコンビニが開いていて助かったよ。どこの店も閉まってるし。朝から何も食べてなくて」

「スマホがずっと繋がらない。みんなもそうなんですか?」

「いや、もう少し山の方に行けば、スマホが使えるらしいです」

「結局、何が起こっているんだ? あちこちで暴れている奴らは何者なんだ」

「ライフラインが無事ってことは、地震の影響じゃないよな」

「防災無線で家から出るなって言うだけ、何の情報もないんだけど」

「警察は何をやってるんだよ」

 人々が口々に不安を口にする中、四人は黙って会計を済ませた。


 コンビニを出た四人は歩きながら、まずは水分補給をする。目的地まではまだ三十分ほどかかるらしい。

「ある程度人口がいる地域の通信だけを遮断しているのかな。だから場所によっては、ほら、さっき話していた人がいたけれど、人口の少ない山間部ならスマホが使えるとか。ライフラインは、暴徒たちにとっても必要だから何もしていないとか」 

「あらゆる情報ツールが使えなくなっているから、何がどうなのか全く分からないね。暴徒ってどの位いるんだろう。全国各地にいるのかな」

「TVも見れない、ネットも繋がらないんじゃ、さっぱり分からないよなぁ」

 冬華と、ゆかりん、御堂が首を傾げると、

「ここでいろいろ話をしていても仕方ないよ。とにかく、先を急ごう」

ペットボトルの水を飲み干して鷲が言った。


 国道沿いをしばらく歩き、脇道へと入る。辺りに人影はなく、車も通らない。緩い上り坂を進むと、小高い丘の上に出た。街灯がコンクリート製の建物をぼんやりと照らしている。

 鷲は建物から少し離れた所で立ちどまった。ここからだと建物全体が良く見える。建物の向こう側は海があるようだ。耳をすませば、テトラポッドにぶつかる波の音が聞こえた。


「あれが敵陣だよ。もとは老舗の温泉旅館だってさ。部屋からは海も見えて、背後には山もある。自然の豊かさが売りだったらしいけれど、経営難になって廃業したんだって」

 鷲が建物を指さして言った。

「敵陣って、国内で暴れている暴徒があの中にいるの?」

 訝し気に冬華が聞くと彼は頷いた。

「うん、海から上陸した人間もここにいると思う。この旅館は廃業になった後、建物全体を外国人が買ったんだって。投資目的で買う人もいるみたいだけど、こんな建物を何に使うんだろうって、地元の人は訝しがっていたんだって。幸いなことに、この周囲に住んでいる人はいない。多少乱暴な手を使っても、一般人を巻き込む心配はないと思うよ」


 旅館は四階建てで、部屋数は十五あるかどうかというところだ。正面玄関には来客用だと思われる大きな自動ドアが見えるが、ガラス部分は段ボールのようなものできっちりと覆われていて、中の様子は伺い知れない。建物の裏側には四角い窓が並んでいる。どこの窓も塞がれて、中は見えない。一階部分の端には小さなドアがある。非常口だろう。

 もとは白かったであろう壁は風化して剥がれ、黒ずんでいるのが遠目でも分かる。屋上にあるプラスチック製の看板は割れて、骨組みだけが残っていた。


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