9999の扉
時和大学の主人公である時和奏と空和葵の二人は、双送式が完了して、天上の扉の向こうに辿り着くと、謎の扉、9999(フォーナイン)に遭遇した。
「「9999……?」」
主人公の二人は同時に呟いた。
9999というのは、純白の色をした巨大な扉であり、極めて巨大な建築物である。まるで全人類を包容するようなそんな寛大さに満ち溢れている。だが未だ強固に閉じられている状態である。
そして二人はそんな謎の扉の前で困惑しながらも、周囲の状況を確認した。
現在位置は、どうやら天上の通路とでも形容すべきような、そんな場所だった。神々しい雰囲気で彩られており、天の星星が上部辺りから垣間見える。
広々とした通路の左右には、数え切れない程の扉が等間隔で設えられている。先程の9999の扉は、通路の先、つまりその最も奥の中央に位置している。
二人は9999の扉から踵を返して、歩み始める。
すると、天上の通路の左右に設けられる扉には、数字が記載されていることが視認できた。 21世紀、20世紀、19世紀、という感じで、大まかに世紀ごとに扉は分けられているらしい。その規則性を辿っていけば、最終的に人類の誕生まで遡ることが出来るのだろう。
「私達は21世紀の主人公だっていうことだよね……」
葵が、謎の規則性を確かめるようにそう言ってきたので、奏が答える。
「ああ……」
時和大学の主人公である二人が先程くぐってきた扉には、21世紀という年代が刻まれていたのだ。つまり二人はその時代に属しているということである。
もちろんそのパターンにどのような意味があるのか、全く検討すらもつかないので特に有意義な事は言えないのだが。
そして再び、二人は時代を遡り始める。
天上の通路は終わりがないように、いつまでもどこまでも続いていきそうだった。が、天上の通路の最も奥、つまり9999の扉から最も離れた場所には、また一つの大きな扉が屹立していた。
「0000……?」
0000(フォーゼロ)と表記がある黒黒とした扉だった。0000と反対の位置にある9999とは、色も対照的であり、戦慄させる何かがそこには孕んでいた。
だが扉が開いているのは、この0000しかなかった。つまり二人はこの扉をくぐるしかないのだ。
「入ってみるか……」
「ええ……」
そして二人は、0000の扉を開いた。二人は漆黒の闇に包まれていき、歪曲した時空間へと吸い込まれていった。