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復讐の一手目②

 水鏡に吸い込まれたレベッカが着地したのはライラが投資している宝石店近くの路地裏だった。


「いきなり飛ばすなんてあいつ何考えてるのよ!」


 レベッカが悪態をつくと、『ごめんごめん』と何処からか声が聞こえてきた。


『レベッカの予想通りライラは宝石店に入ったみたいだね』


 脳内に響く声がテイルズのものだと気づいたレベッカは小さな声で「テイルズ!?どこにいるの!?」と言いながら辺りを見回した。


『僕の身体という受信媒体に、僕の魔力を通して音声を発信しているんだよ。レベッカの声は追跡バードを通じてしか入ってこないのが難点だけどね』


 レベッカが上を見上げると、確かに見覚えのある鳥が止まっている。


「まだ何の作戦も立ててないのにどうするのよ!」


『ラブストーリーは突然にって言うし、準備すると無意識にわざとらしさが出ちゃうものだよ』


 テイルズはいたって冷静にそれっぽい事を言うが、実際は何も考えていないだけなのは見え見えである。


(そうよ、こいつが求めているのはただのエンターテイメント。これ以上ややこしいことされないうちに実行しなきゃ)


 レベッカは服装を整えながらライラという人物について思案した。


(テイルズの言うことは適当だけれど、確かにあの手の令嬢はお金目的で近寄ってくる男も多いだろうし、あまりわざとらしく出会うのは良くないわね。あくまで向こうからこちらを追わせるようにしないと)


「テイルズ、報酬の話だけれど、私も宝石店で好きな物を買ってもいいかしら?というか買うわね」


 レベッカは返事は要らないとばかりに(まく)し立てると、背筋を伸ばし、人の良い温和な紳士をイメージして宝石店に足を踏み入れた。


「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」


 店員は男性が一人で入ってきたからか、プレゼントを探していると思っているのだろう。


「あぁ、黒髪の女性に似合うブローチを探しにきたんです」


 レベッカが店内をぐるりと見渡したが、ライラの姿は見られない。おそらく店の奥で店主と話をしているのだろう。


「ではこちらなど如何ですか?」


「うーん、素敵だけれどデザインがもう少し控えめな方が良いかな」


「では、こちらなど如何でしょう。若い女性にとても人気なんですよ」


「確かに綺麗だ。ただ黒髪にってなるともう少しシックな色の方が良い気がするなぁ……」


 レベッカが話を長引かせていると、奥のドアが開く音がしたので横目で出てくる人物を確認した。


 大きな帽子を被って顔を隠しているが、背中まで伸びた長い茶髪と口元の特徴的なホクロ、ライラ本人だ。


 レベッカは店員に視線を戻し、少し声を張った。


「やっぱりこれにします。テイルズ・ジル・ウィラードまで請求書と一緒に届けて下さい」


 にっこりと柔らかい笑みを向けると、男である店員も一瞬見惚れたように目を合わせ、「か、かしこまりました」と我に返ったようにすぐに視線を逸らした。


(わかるよ、顔だけはいいからね)


「じゃあ、お願いします」


 そう言って店を出ようと方向転換をする時にもう一度ライラの方を見ると、ライラもこちらを見ておりバチリと目が合った。


 レベッカは計画通りと内心ほくそ笑んだが、店側の人に目があってしまった(てい)の自然な笑顔で会釈をし店を後にする。



 その時にわざとポケットからハンカチを落とすのももちろん忘れなかった。



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