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復讐の三手目⑤

「真実が見える……ですか?」


 アイリーンは疑いと好奇心が入り混じった目をレベッカに向ける。


「はい、あなたが見たいと願う物を見せるレンズです。メガネとしても付けることができますし、小さくして目に入れる事もできます」


 そう言ってレベッカは鞄の中から片眼鏡(モノクル)が入った箱を取り出しアイリーンに差し出した。


 アイリーンは使い方がよく分からないなりに、片眼鏡(モノクル)越しに目の前にいる仮面をつけた魔法使いを覗き込んだ。


 すると、眼鏡越しに見えるレベッカの仮面の下がはっきりと見えたのだ。


 白い肌に映える青い瞳、通った鼻筋と形の良い薄い唇。


 マントの下に透けるのは細身ではあるものの、がっしりとした肩と胸筋で―――――――


「きゃっ!」


 アイリーンは流石に恥ずかしくなったのか、小さな叫び声を上げ、顔を真っ赤にして片眼鏡(モノクル)から手を離した。


「おっと、気をつけて下さい。割れてしまったら使えませんので」


 レベッカが片眼鏡を取ろうとアイリーンの前に手を伸ばすとアイリーンはすぐさまレベッカの仮面に手をかけた。


 簡単に付けられていた仮面を奪い取ると、アイリーンがレンズ越しに見た顔が目の前に現れた。


 レベッカは反射的にすぐさま手で顔を覆うがアイリーンは強気にもその手を掴んで顔をまじまじと覗き込む。


「へぇ……魔法使いさんってすごいイケメンだったのね」


 レベッカはここまでアイリーンが強行手段をとってくるとは考えておらず一瞬怯んだが、顔を見せる事自体は今日の予定に含まれていたため特に大きな問題はない。


(大丈夫、やる事は変わらないわ)


 レベッカは大きな手でアイリーンの手首を掴み返すとゆっくりと顔を近づけた。


「見てしまわれましたね。さて、どうしましょうか。私の顔を見たら呪いを受けると殿下から聞いていませんでしたか?」


 妖美な笑みを浮かべて詰め寄ると、アイリーンはそんな話は聞いていないとばかりに怯えた顔で瞬きを繰り返す。


「大丈夫です。呪いから逃れる方法はあります。一つ目は呪いに関して知ろうとしない事。二つ目は私の顔を見たと周囲に知られない事。分かりましたか?」


 もちろん、呪いなんてのはターゲット以外に顔を知られないための真っ赤な嘘だが、今までテイルズが社交界に顔を出さなかった事を考えると真実味がある嘘と言えるだろう。


 レベッカはアイリーンの表情をじっと見つめ、思考が乱れるサインを読み取ると、ニッコリと優しく微笑んで頭にそっと手を乗せた。


「この中に手紙を入れて頂いたら私に届きますので、何かあればこちらに連絡を下さい」


 そう言って、簡易的に改造した追跡バード(卵バージョン)をアイリーンの手に握らせる。


「では、本日はこれで失礼します」


 アイリーンから連絡をさせるためにここは早めに切り上げるのが吉と、レベッカはアイリーンの返答を待つ事なく袖に隠しておいた追跡バードの(くちばし)に指を入れた。

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