復讐の三手目
レベッカは水鏡の前で立ち尽くすと、身体はわなわなと震え始め、その振動で水鏡の水面が揺れる。
テイルズが心配してレベッカに触れるべきか触れざるべきか、背後でおろおろしていたのも束の間。
俯いたレベッカの口からは地獄から這って出たような低い声が轟いた。
「許さない……絶対に許さない……アイリーンも、ベルベルトもみんなまとめて地獄行きよ……生まれて来たことを後悔させてやるわ」
レベッカは顔を下に向けたまま、よろよろと歩き始め、寝室へと向かった。今となっては寝室はほぼレベッカの部屋みたいなものだ。
床に積み上がった本をかわしながらレベッカはベットに倒れ込むとブツブツと独り言を呟き始めた。
「いつからだったのかしら……私が王宮に来てから?それともそれよりも前から?いや、今はそんな事よりもどうやって接触するか考えるべきよ。ベルベルトの自室に入れるくらいよ。私との婚約破棄の直接的な原因はアイリーンの可能性が高いわ」
レベッカは冷静に今後の事を考えようとしたが、無意識のうちに涙が目の周りいっぱいに溜まり、一度瞬きをすればシーツにはシミが浮かび上がる。
(酷いわ……今の私の事なんて二人にはどうでもいいんだもの……私がどれほど絶望しているかなんて考えもしないのね)
一度悲観的な考えが過ると涙は止まる事を知らなかった。拭っても拭っても涙は溢れてきて、嗚咽を漏らさないように口元を押さえた。
そんなレベッカの背後でテイルズがベットに腰掛けたのか、ベットは静かに軋む。そして遠慮げに肩に手が添えられたので、レベッカが驚いて振り返ろうとしたが、すぐにその大きな手はレベッカの頭をゆっくりと優しく撫でた。
テイルズは何も喋らないが、それが精一杯の気遣いであることがレベッカにも伝わり、レベッカはまた静かに涙を溢した。
レベッカの涙が枯れた頃に、テイルズはようやく声を発した。
「レベッカ、どうする?レベッカが辛いならもうやめようよ」
それを聞いてレベッカは目元を強く擦り、勢いよく起き上がった。
「ありがとうテイルズ、でも辞めないわ。逆に考えがまとまった気がする。あいつら纏めてギャフンと言わせてやる作戦を思いついたんだけど聞いてくれる?」
赤く腫れた目をテイルズに向け、レベッカは口角を上げる。その様子を見たテイルズも思わず「ははっ」と笑ってしまった。
「仰せのままに、レディレベッカ」
インフルエンザにかかり、昨日は投稿できずすみません。
熱が下がるまで投稿をお休みさせていただきます。
よろしくお願いします。