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復讐の二手目〜潰し合い〜③

 サナがスクーナー通りの宝石店を訪れたのはBARで会ってから一週間後のことだった。


 レベッカとテイルズは宝石店に追跡バードを常に張り込ませサナ・スペルマンが訪れるのを待ち、サナが馬車から降りて来たところでテイルズは新たな発明品を放った。


 その名も〝追跡スパイダー〟だ。


 小型化が難しいと考えられていたが、彼女たちの戦いを見てまるで女郎蜘蛛のようだと思ったところから発想を得たらしい。


 八つの単眼カメラを付けた個体とマイクを付けた個体に分けることで小型化による画質と音質の低下を防ぎ、空を飛ぶ機能を無くす代わりに壁に張り付くスタイルで魔力が少なくても動かせる優れ物。


 室内での様子を余す事なく見たいというテイルズの欲望から生まれた欲求の権化である。



 親指サイズの二匹の追跡スパイダーはサナのドレスにしがみつき、サナと共に無事に入店完了。


 保護色となるように壁と同化し一匹は部屋の隅に、もう一匹は部屋の真ん中にスタンバイすれば後は様子を伺うだけだ。



 サナは真っ直ぐに店員の前まで歩み進めると店内をキョロキョロと見渡した。


『いらっしゃいませ、何かお探しですか?』


 店員がお決まりの台詞を発すれば、サナはいつものあまったるい声で問いかけた。


『ねぇ、店主はどなたですの?』


『只今他のお客様のご対応で奥の部屋におります』


 他の客とはもちろんライラの事だ。ここ数日店の前に現れる謎の蜘蛛のせいで営業が上がったりで、ライラが現状を把握するために訪れていたのだ。


『そうですの……』


 サナは少し悩んでいたが、陳列された宝石に目を向けると、商品が気になったのか、ショッピングを楽しみ始めた。



「普通にアクセサリー買おうとしてるけどいいのこれ?」


 進展のない展開に飽きたテイルズはレベッカに問いかけた。


「しっ!ほら、奥のドアが開くわよ!」


 レベッカが指を指すと、ライラと店主が部屋から出てくるところだった。


 店主を見たサナがテイルズに言われたとおりにハンカチを返そうと、ハンカチを手に持って二人のやり取りが終わるのを待っていると、視線に気づいたライラが店主に『あちらの方が……』と言ったところで、サナが手に持っているハンカチの正体に気付いたようだ。


「気づいた気づいた。あれ?あのハンカチはウィラード伯爵のものではなくて?何故この方が?あれ?この方ってあのサナ・スペルマンじゃないかしら?とでも思ってるところかしら」


 と、レベッカは声色を変えてアテレコを始める。


 店主がライラに言われてサナの元へ行き『何かご不便でもございましたか?』と問いかけると、サナはハンカチを店主に渡しながら答えた。


『あの、こちらのハンカチをとある男性からお借りしたんですが、この店の店主に渡しておいて欲しいと言われましたの』


 それを聞いたライラの目が少しずつ険しくなる。


 ライラにとってサナ・スペルマンはベルベルトと付き合うもの同士、脅威であり、小蝿のような女だと思っていた。

 

 とにかく何の大義もなく男を誑かす気に食わない女と認識していたが、ベルベルトへは特に愛情もなかったので、王太子妃にさえなれれば愛人が何人いようが構わないと思っていたので大目に見ていた。


 しかし、そんな自分が恋をしたと認識した途端、その相手との思い出のハンカチを手に、自分の領域である店に訪れて来たのだから宣戦布告だと勘違いするには十分だった。


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