復讐の二手目〜潰し合い〜②
ライラ・エヴァンスと会ってから数日後、レベッカはサナ・スペルマンと運命的な出会いを果たすべく、サナがよくお忍びで訪れると言われるBARで張り込んでいた。
もちろん、テイルズの姿でだ。
BARの入り口にはボーイが立っており、明らかにお金が無さそうな出立ちの人はそこで止められてしまうが、VIP会員であれば顔を隠していようが、誰と来ようが自由に入場することができる。
レベッカがテイルズとして通うのはこれで三回目。
目立つルックスからか、二回目からは既に顔を覚えられており、関わる必要のない客から無駄がらみされた経緯もあったため、今回は顔を隠しての入店となった。
イケメンが居るらしい、とテイルズ目当ての客も出てきたからか、三回目にしてVIP会員に昇格である。
そして、テイルズ目当ての客の中にサナ・スペルマンが含まれているのは言うまでもない。
ただ、サナ・スペルマンはやはり他の客とは違った。
何がかというと言葉で表しにくいが、レベッカが本能的にこいつはよくいるチヤホヤされてきただけの令嬢達とは違うと感じ取ったのだ。
まず、初見にして仮面を被ったテイルズに対して真っ向から向かってきた。
イケメンレーダーでも付いているのか?というくらい入店からテイルズの元へ来るまでに無駄がない。
店内全体が見渡せる位置に座っていたテイルズの前を横切る際に「あっ」と手に持っていたグラスを溢したのだ。
レベッカは仕掛ける前に仕掛けられるとは思っておらず、心の中で小さく舌打ちが出る。
想定していなかった出会い方だが、これはこれでチャンスだと、レベッカはサナに声をかけた。
「大丈夫ですか?」
金髪に白い肌、真っ赤な口紅がよく映える。
困ったように眉を下げ、上目遣いで向けられる緑の瞳。
ドレスから伸びる手は濡れた胸元を気にしているようだ。
「あっ……」
吐息と共に溢れた声、テイルズの近くにいた男性たちは思わず振り返った。
「ドレスが濡れてしまいましたね、ハンカチでよければ」
そう言ってテイルズがハンカチを差し出すとサナは遠慮がちにそれを受け取った。
「ありがとうございます……」
「女性店員を呼びますね」
モテない男はここで女性の肩に触れて自ら連れて行こうとするが、レベッカはもちろんそんなことはしない。
もしかしたらサナはそれを狙っていたのかもしれないが、レベッカは思い通りになるのは癪だという反抗心が出てしまった。
女性店員が来たところでそのままさよならかと思ったが、サナは「あの!」と食い下がってきた。
「ハンカチ……お返し致しますのでお名前を教えて頂けませんか?」
(なるほど、そういう手をつかうわけね)
サナに渡したハンカチは偶然にもライラから返してもらった物と同じだった。この偶然は使えると思いレベッカは作戦を思いついた。
「ハンカチはそのまま差し上げます」
「そんな、悪いです!ではせめて別のお礼を」
「そうですね……では、スクーナー通りの宝石店主に渡してもらえませんか?以前もそこでハンカチを落としてしまって面識があるんです」
そう言って、「また、会えるといいですね」と付け加えると、サナはこれ以上の追撃は分が悪いと思ったのか、大人しく「ありがとうございます」と言って去っていった。
(次に会う時を楽しみにしてるわ)
レベッカはサナを見送ると、種は蒔き終わったと静かに店を後にした。




