追越には順番があります
大型トラックの運転手をやっております。
特に高速道路を走っていて、乗用車さんの運転によく困っていることがあります。
走行車線を走っていて、遅い車に追いつきそうな時──
ミラーを確認すると、右後ろから延々と、乗用車さんがやって来ているのが見えました。
『乗用車さんを先に行かせて、その後で自分も車線変更しよう』
そう思って待っていると……
なかなか乗用車さんが追い越して行かないのです。
それどころか、近づくにつれて、じわじわとスピードを落としてくれたりします。
早く行ってほしい意思表示としてブレーキをちょんちょんと踏んでも効果がありません。
右ウィンカーを一回だけ出してみても、右斜め後ろからじわじわと、時速0.5km差ぐらいで近づいてきます。
ここで私の嫌いな『オッサン運転』をするドライバーさんなら、ウィンカーを出すとともに急ハンドルを切って、乗用車さんに急ブレーキを踏ませて強引に出るところですが──
私はオッサン運転が大嫌いですので、待ちます。
待つけど、追い越していってくれないのです。
ここでそんな乗用車さんの気持ちを推察してみましょう。
『大型トラックが前に詰まってる。いきなり車線変更してくるかもしれない』
『怖い』
『ゆっくり通り抜けよう』
こんな気持ちなのかもしれません。
はっきり言いましょう。
間違いです。
かえって危ないですよ。
並走状態というのはとても危険な状態です。
一刻も早く解除すべきものです。
サッとスピードを上げて抜いていってください。
ここでまた、こんな声が出そうです。
『もしトラックがいきなり車線変更してきたら危ないじゃないか!』
並走している時に車線変更してくるバカはいません。あなたを殺したいほど憎んでいるのでない限り。
たぶんそう思われる方は、過去に『並走している時に車線変更されたことがあるぞ!』と言いたいのでしょう。
でもそれはたぶん、勘違いです。
車線変更しようとウィンカーを出している大型トラックの右側に突っ込んで行こうとする乗用車さんをよく見ます。たぶん、それです。
事実は『並走しているのに車線変更された!』ではなく、あなたが『車線変更しているトラックの横に突っ込んで行こうとして失敗した!』なのです。
追越車線を延々と走ってきて、追越しに出そうな車の右後ろで止まってしまう乗用車さんには、声を大にして言いたいです。
追越しには一応、順番があります。
左側車線を走っていって、前の遅い車に追いついた車から順番に追い越すのが基本です。
延々と追越し車線を走ってきて我先に追越そうとする車は、順番をすっ飛ばして割り込みをしているのです。
遊園地のアトラクションに並んでいる行列に横から割り込む輩とそう変わりありません。
とはいえ、交通をスムーズにするには速い車を先にやるのが合理的ですので、必ずしもそうとは言えませんし──
ただ巡行している時には順番なんてない、というのが正しいところですので、一概には言えませんが……。
ただ、追越し車線を延々と走っていると怖く思えてしまうことも、
走行車線を走ってきて、追いついてからウィンカーを出し、ゆっくりと車線変更をすれば、
不思議に思われるぐらい、怖くなんてありません。
前の車とウィンカーを出すタイミングがかぶったら前の車に先に車線変更してもらい、その後に自分も車線変更すればいいだけのことです。
前の車があなたに気づいて、『お先にどうぞ』とウィンカーを引っ込めて左に戻るなら、ありがとうと心の中で言いながら先に行かせてもらいましょう。
そして、追越しが終わったら、左側に戻るのです。
これで追い越しをするあなたも、追い越されるのを待つ私も、お互いにスムーズに走行できるのです。
お互いにギクシャクする順番すっ飛ばしはなるべくやめるよう、お願いします。
念のため繰り返し述べさせていただきます。
追い越しは、左側車線を走っていて前に追いついた車から順番にするものです。
右側車線をずっと走っている車はその順番をすっ飛ばしている、つまりはズルをしているのです。
ただし『右側車線をずっと走っているのかどうか』というのは一概には判断できません。
78km/hで追い越した車の80メートル前に50km/hで走っている車が走っていたら、連続で追い越すべきだと私は思います。
その場合、その80メートルを左側に戻らず走り続けるのは『右側車線をずっと走っている』ことにはならないと思います。
この『一概には判断できない』というところが道路交通の難しいところだと思っています。